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アオアシから学ぶIT人材育成

皆さんこんにちは。IBCデジマケ女子部のくりにっくです。
さて、本日は、2030年には79万人も不足すると言われている「IT人材」について考えてみたいと思います。


アオアシって?

突然ですが、本記事のタイトルにもある「アオアシ」という漫画をご存知でしょうか?
昨年はEテレでアニメ化もされた、ビッグコミックスピリッツで連載中の小林有吾さんのサッカー漫画です。

愛媛のサッカー少年の青井葦人(あおいあしと)が、「東京シティ・エスペリオンFC」のユース監督である福田達也(ふくだたつや)にその俯瞰的能力を見出され上京し、Jユースで成長していく姿を描いた「いまもっともアツいサッカー漫画」と評判の高い漫画です。
「アオアシ」が他のサッカー漫画と異なるところは、舞台が高校サッカーやプロではなくJユースであること、そして主人公がFWやMF、GKでもなくSB(サイドバック)であるというところです。(ここのあたりはもう少し語りたいのですが、本記事の意図とズレてきてしまうので、また今度w)
そして、この漫画の何よりも優れているところ(と私が思っているところ)は、「育成」についての理解が深く、とても良く描かれているんです!「育成ってこうあるべきなんだ」と考えさせられるところも多く、(私は人事ではないのですが)自社に置き換え、若い社員の育成についても学ぶところが多くあります。
そこで、今回はこの「アオアシ」が日本のIT人材不足を解消するカギになるかもしれない!ということで、IBCデジマケ女子部的視点で紐解いていきたいと思います!

IT人材の不足

下の【図1】は、2030年問題を語るときによく用いられる経済産業省の調査結果です。少子高齢化、ITニーズの増加等の要因でどうしてもIT人材が不足するのは避けられない事態かと思いますが、なぜIT人材だけこうも問題視されるのでしょうか?

【図1】出典:経済産業省「ITベンチャー等によるイノベーション促進のための人材育成・確保モデル事業」

それは、IT人材の技術的知見やスキルの「需要」と「供給」のギャップが大きいからとも言われています。

海外IT人材と日本のIT人材の差

世界的にもIT人材は不足すると言われていますが、特に日本はその傾向が顕著で、日本のIT人材のスキルを海外と比較した場合、「高度な知識・技能を有している人材」は海外と比べて日本は少ないことが、【図2】の調査結果からも明らかです。

【図2】出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査」

確かに、日本はITスキルレベルが3まで(基礎・応用的知識/技能レベル)の人材が64%なのに対して、米国やインドはレベル4(高度な知識/技能レベル)以上の人材が60~70%いるのです。これを、サッカーに例えて言えば、海外のチームは1チーム内にロドリゴやジュニオール、モドリッチまでいたりと、スター選手がゴロゴロいますが、日本のチームでは世界的に有名なスター選手は一握り、あとは通常レベルの選手しかいないということです。
スター選手が少ないので、どうするかというと、海外からの助っ人選手を入れたり、他チームからスター選手を引き抜いたりして戦力を補い強いチームを作るということが、Jリーグ等でも見られる常套手段です。我々事業会社も、即戦力の社員を中途採用し、社員のスキルレベルを補てんしている会社が殆どだと思います。

福田監督曰く

こういった常套手段に異を唱え、ユースからJリーグのチームを作ろうとしているのが、「アオアシ」の福田監督です。
『次世代を育てられないチームに未来はない。(中略)手薄なポジションがあったら、外国人獲ったり他チームから引き抜いたり、いろいろとやりくりするのが、プロサッカークラブの宿命だ。でも(中略)チーム環境になじめなかったら、戦術にフィットしなかったら?「獲る」ってのはしょせんミズモノさ。だが、子供の時分から手元に置いてみてきた人間は違う。そいつの能力、人格は俺たちが誰よりもよく知ってる。長所も短所も。お前らにとっても、そのクラブのサッカーのイロを長い時間かけて体得できる。「育てる」ってのはそういうことだ。』(アオアシ1巻の福田監督の名言より)

アオアシ1巻より draw byくりにっく
(著作権の関係で、漫画の絵は使えませんので、素人絵で恐縮ですが、私の手書きでイメージをお届けします。)

なるほど、心に染み入りますね。確かに中途で一時的に補うのではなく、新卒を育てていって、会社も社員の特性を知り、社員も会社の特性を知ることで、よりよい組織ができそうです。

では、中途で簡単に補うのではなく、育成していくにあたって、このITスキルレベルの差をどのようにして埋めるべきでしょうか?海外と比べ日本人は勉強意欲が足りないのかというとそういう訳でもなく、【図3】のとおり、「業務に必要であれば業務外でも勉強する」と答えた日本人の割合は米国よりも多いのです。ただ、【図3】右図の自己研鑽の内容について、日本に比べて他国は、研修・セミナー等の専門性が高いもので自己研鑽を行うなど、より実のある勉強を行っていることがわかります。

【図3】出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査」(2016年6月)

この結果を見て、消極的な日本人の特性が良く出ているなーという印象を持ちました。目標が明らかでその目標達成のための環境を与えられれば、勤勉な日本人は真面目に取り組み結果も出せるのですが、その環境がないと大半の日本人は動かないのです。

良い環境が選手を育てる

スポーツにおいても、アオアシの舞台である東京エスペリオンのJユースの環境は素晴らしく、栄養面が管理された食堂、トレーニング設備の充実した施設、天然芝のグラウンド、すぐ横ではトップチームの選手が練習している様を見ることができ、小さくなったり汚れたユニホームは無償で新しいものに交換してもらえ、近くの高校と提携し、ユースの練習や試合日程に配慮した通学が可能となっています。これらの環境に加え、質の高い練習を行っていくからこそ、選手は成長していくのです。

日本のサッカーのレベルが上がってきたのは、こういったユースでの育成も支えとなっているのだと思います。
ただこういった環境は、メジャースポーツのサッカーならではであり、他のスポーツでは考えられない好待遇です。
実際、私の娘も某競技をクラブの育成クラスで幼少から十数年続けていますが、クラブの育成クラスは、Jリーグでいえばユースですが、サッカーの練習環境とは雲泥の差です。まず、練習はスクール生(一般クラス)がいない早朝と夜(クラブの資金源はスクールの授業料なので育成クラスよりもスクールが優先)、併設の学校なんてものは存在しないので、朝練が終わったら長い通学時間をかけて学校へ行き、授業を受けて、放課後はそのままクラブへ直行して練習、夜遅くに練習が終わり、そこから自宅に帰ってご飯、宿題、睡眠時間の確保がギリギリ、、といった毎日が日常です。全国大会レベル/日本代表レベルの選手でも、学生であれば同じ練習環境です。
この過酷な練習環境に耐えられる一握りの子だけしか残っていかないのが、非メジャースポーツの現状です。
まさに先ほどの【図2】の「各国のITスキルレベル」でいうところの米国等はサッカーや野球といった人気メジャースポーツで、日本は他の非メジャースポーツを表しているのではないかと思うのです。
サッカーや野球といったメジャーなスポーツは日本でも環境が整っているので、スキルレベルも高く、世界で戦っていけるレベルの選手が多くいるけれど、非メジャースポーツでは、全体のスキルレベルが低く、世界で戦えるレベルの選手はほんの一握りしかいない、ということです。

IT人材の育成を考える

では、スポーツからITの世界に置き換え、レベルの高いIT人材を増やすにはどうしたら良いか、となると、学校の教育段階での育成は難しく、やはり会社での育成にかかるところが大きいのではないかと思うのです。しかし、「会社は育成機関ではない」という考えも少なくないと思います。特に私のような古の世代は、「社会に出たら利益を出してなんぼ。お客様であった学生とは立場が逆で、社会人は、報酬という対価に応じた結果を出さなくてはいけない。自己研鑽は自ら取り組むからこその自己研鑽で、会社に与えてもらうものではない!」と教え込まれた世代ですので、少し前までは、新卒採用面接時の学生の「御社の教育プログラムや育成プランはどんなものがありますか?どうやって私を成長させてくれますか?」といった質問に「会社は学校じゃない!甘ったれるな!」と抵抗があるぐらいでした(笑)。

しかし、目まぐるしく変化するIT業界において、最先端の情報のキャッチアップをしていくだけでも大変なのに、さらにその先を見据えた知識・技能の習得となると、そこまで個人に委ねてしまうのは少し乱暴のようにも思います。会社が成長していくためには、人材は欠かせなく、人材の成長と会社の成長は比例するものですので、海外に比べ遅れをとっている日本のIT人材の育成については、とくに会社のバックアップ・環境作りが必要不可欠なのではないでしょうか。統計でも、日本は海外に比べ一人当たりの教育研修費が半分程度しかないことが結果として出ており、これもIT人材不足に悩む現在の日本に繋がっていると思われます。

出典:根本 孝「米国企業の教育革命」(1998年)、産業能率大学(1999年)、米国ASTD(2011)、産労総合研究所「教育研修費用の実態調査」 (2011)

ただ、お金を出して環境を整えるだけで良いかというと、そういう訳ではなく、会社側にも現状の把握と分析、今後の展望を基に育成プランを真剣に考えていかなくてはいけません。

現状の分析

ちなみに、「アオアシ」の主人公である青井葦人は、もともとFWの選手でしたが、福田監督は葦人の中にSBとしての才能を見出し、「FWでは全くダメだが、SBとしてならば世界に通用する」という信念のもとに、葦人をSBとして育てていきます。

こういった個々に応じた対応も育成には欠かせない要素の一つです。ただ、育成だけやっている訳ではない事業会社で、各々の特性を把握して、丁寧に育成していくのは難しいですが、現状ある情報・データを活かしてうまく対応できることもあります。
採用時にSPIを実施している会社も多いと思いますが、SPIは個々の特性をうまく数値化しており、この結果は「三つ子の魂百まで」ではないですが、20歳ころまでに培われた特性は新卒で受けても定年退職時に受けても、よっぽどのことが無い限り変わらないと言われています。このSPIのデータを使って過去~現在までの社員の特性を把握し、その特性にあった配置転換を行ったり、才を発揮している社員と似た特性の学生を採用したりと、かなり多方面で活用できると思います。IBCも過去データの統計から分析を行った採用プランをたてたりしています。ちなみに下図は私のSPIです(笑)。協調性と気配りがないのが特徴です(笑)。

SPIの結果

業務の中で育成する

また、「アオアシ」で高円宮杯の首位を決める大切な試合中に、U18の日本代表にも入っている2年生の選手をFWとして使えば絶対に点をとれる場面で、敢えてユースに入ったばかりの1年生を使うという、「勝つため」ではなく「育成のため」の戦術をとったときに、福田監督が『勝つだけじゃない。育成だ。』という場面があります。ぐっときました!!会社ではなかなかできない決断ですね。もしかしたら失敗するかもしれないが、成功したらそれが最強の礎となる場合、敢えて育成に繋がる方法を選択することがまさに「育成」ということなんですね。
会社の業務遂行上でも、敢えて育成のための選択ができるような環境作りもしていきたいなーと強く思った場面でした。

アオアシ25巻より draw byくりにっく

いやー、「アオアシ」、、深いですね。
最高の育成バイブルです!

それでも困ったときはIBC

それでもどうしてもIT人材が足りないことは多々あると思います。
そんなとき、足りない知識・技能は委託して補うという選択肢もあります。運用をまるっと引き受けるIBCのMSPサービス「SAMS」や突発的なIT障害に対しての原因究明や技術的支援を実施する「IT障害119アドバイザリーサービス」も是非ご検討ください!

最後に、この記事を読んで「アオアシ」に興味を持っていただいた方は、アニメから入るのがお勧めです。各種配信サービスで視聴可能ですので、この週末にイッキ見してみてください!感想お待ちしております!