見出し画像

徹底したコロナ対策で「安心感」を来店動機に/顧客マインドをつかんで美容室に呼び戻す

目に見えない不安への対策を「目に見える形」で提示されることは、お客さまにとって今や最も重要な来店動機の一つ/TRIPLE-ef(神奈川県横浜市)

編集担当/美容の経営プラン編集部 遠藤綾子

「行っても大丈夫」の根拠をつくる

 スタッフのマスク着用、お客さま同士のキープディスタンス、店内のアルコール消毒、換気…、新型コロナウイルス感染予防策は、今やサロン営業の前提だ。TRIPLE-efでは、新型コロナの感染拡大が懸念され始めた2月上旬から早々に感染予防のガイドラインを策定し、緊急事態宣言発出後も時短営業を継続。4月は外出自粛などの影響で売上前年比が37%ダウンと落ち込んだものの、5月以降は徐々に客数も増え、売上も前年比104%(5月)と増加傾向。神奈川県で緊急事態宣言が解除された5月25日以降は、60代以上の高齢層を除き、来店サイクルもほぼ例年通りに回復している。加えて、東京都内や横浜市中心部の美容室に通っていた近隣住民の来店が増加し、新規来店率は平常時の104%に上昇。徹底した衛生管理と感染予防策により、顧客のみならず新規客の来店にもつながった。
 「『不安』への対策を可視化して提示することで安心に転化し、来店への動機付けにしていました。店頭からマスクが消えたときは手づくりのマスクを配布し、口コミによる宣伝効果も期待。『安心を集客に』です」(中島 翔代表)

2009_切抜き

TRIPLE-efのコロナ対策

見えない敵に対する不安に寄り添う
 消毒や衛生管理のガイドラインは、厚生労働省のウェブサイトや病院などの感染予防措置を参考に作成。その上で専門家にアドバイスを仰ぎ、下記のような独自のプランを練り上げた。こうした取り組みは、ウェブサイトやブログ、集客サイトで詳しく発信するとともに、DMやメール、予約アプリのメッセージ機能でも広く告知。こうした対策&発信により、「安心して来られた」「事前に取り組みを知れてよかった」といった顧客からのフィードバックの他、集客サイトには「コロナ対策を徹底しており、安心して施術を受けることができた」という新規客の口コミも多数寄せられている。施術時の配布用に用意した手づくりのマスクも、「お客に対する誠実さや温かさが感じられる。また行きたい」と大好評だ。
 また、TRIPLE-efでは店内のコロナ対策を発信するだけでなく、顧客向けには電話で安否確認を行なったり、DMやメールで感染予防のポイントや地域の感染者情報をお知らせしたりと、かなりの頻度で接触。日常生活での不安を和らげるため、お客さまにとって有益な情報を提供し、嫌味にならないアプローチを継続することで、失客防止につなげる。

(1)設備や器具の対策
□窓の常時開放
□換気扇の常時作動
□加湿器の常時使用
□空気清浄機の増設
□お客さまのご案内前にテーブル、席、タブレット端末、その他共有物の清掃とアルコール消毒
□器具、フロアの消毒などの法令を遵守し、回数を増やして実行
□トイレ、エアコンフィルターなど共用場所・機器清掃、消毒頻度向上
□ヘアピンなどお客さまが共有する道具を多めに購入し、常に消毒済みの道具を準備
□1回使用するごとにシャンプー台の排水溝やボウルに泡ブリーチを行う
□パソコンやクレジットカード端末の都度消毒

画像3

ドアや窓は常時オープン

画像3

ティッシュペーパーを使って、空気が流れているかをチェック。窓を2ヵ所以上開け、空気の入り口と出口をつくるのがポイント

画像4

チェックリストで清掃・消毒箇所を毎回確認

(2)スタッフの取り組み
□毎日の検温
□マスクの着用
□ひじまでの手洗い励行
□担当するお客さまが変わるたびに手洗いの実行
□うがい時間の設定
□食事管理と飲料水の支給
□プライベートでの不要不急の外出自粛
□時短勤務の奨励と実行
□使い捨て手袋の支給
□朝礼時にも適切な距離を取る
□電車での通勤時間が長いスタッフに関しては、オフピーク通勤の推奨
□毛髪用ごみ箱は少ししかたまっていなくても定期的に変える
□シザーケースの使用禁止

画像5

スタッフは毎日出勤前に検温。全員の体温を掲示しておく

画像6

シザーケースは使わず、洗いやすいケースに道具をまとめて収納。必ず消毒して使う

(3)お客さまへの対応
□席を間引き、席間のソーシャルディスタンス(2m)を確保
□ピークタイムを外しての予約を推奨
□来店時に消毒スプレーを使用してもらう
□来店時の簡易体調アンケート記入
□店内用マスクの配布(施術時に着用)
□共用図書の利用時は手指消毒かポリエチレン手袋の着用をお願いする
□ロッカー内のアルコール消毒
□ペットボトル飲料を提供

画像7

鏡4面に対して椅子は3席。間隔は2メートル以上空ける

画像8

お客さまの来店時に体調や海外渡航歴などを尋ねるアンケートを実施。問題がない場合は連絡先とともに署名してもらい、20日間保管した後、シュレッダー処理

画像9

お客さまに提供する飲み物はペットボトルに変更

画像10

感染防止の観点から、雑誌などは電子化。紙を好むお客さまには、使い捨ての手袋を着用してもらう

対策を徹底しても、伝えなければ伝わらない

画像12

画像11

特別なときだからこそ、日頃の行ないが肝心
 できる限りの対策を施しても、新型コロナに対するお客さまの不安は完全に拭えるものではない。実際、TRIPLE-efにも特に高齢者層や小さな子どものいるファミリー層の中にはいまだに来店を避ける顧客もいる。そこで、こうした方々に少しでも安心感を提供するため、中島代表は近々、1席だけのプライベートサロンをオープン予定。
 「前々から、ママ美容師たちが子どもを見ながら働ける空間をつくろうと構想していたのですが、これを機に、創設に着手しました。極力、他者との接触を減らしたいというお客さまに、よりパーソナルな空間での施術が可能となります」
 他にも、顧客用のECサイトを構築するなど、コロナ禍においてもサービスの価値向上を通じ、顧客とのさらなる関係性強化を目指す。また、これまでも地域と協力しながらサロンの防災活動に積極的に取り組んできたTRIPLE-efには、具体的なコロナ対策発表前から、「このサロンが何も対策していないわけはないと思って来た」「防災に取り組んでいるお店だから安心」と来店した顧客も多数。「日頃の取り組みがじわじわ効いてきたのかな、と思います」(中島代表)

画像13

メールやDM、ブログなどでは、サロンでの対策だけでなく、お客さまに役立つ新型コロナの情報も発信

画像14

外出自粛中のお客さまからの「商品が欲しいので、送ってもらえないか」との電話問い合わせがきっかけとなり、店販品の通販サイトを開設。来店時にQRコードからアクセスしてもらう顧客専用のクローズドな仕様。LINEの公式アカウントを連携させて、スタッフに相談しながら購入できるようにした

画像15

60歳以上のお客さまや小さな子どものいるファミリー層の来店サイクルが延びていることから、現在展開している2店舗の近隣に、1席だけのプライベートサロンを準備中。「行きたいけれど子どもが心配」「人がたくさんいると怖い」「自分がキャリアで誰かにうつしてしまったら…」といった顧客の不安を取り除く

画像16

TRIPLE-ef 中島 翔 代表

<サロンDATA>
TRIPLE-ef(トリプルエフ)
代表者:中島 翔
所在地:神奈川県横浜市磯子区森
創業年:2018年
店舗数:2店舗
従業者数:13人
カット料金:4,400円
URL:http://www.triple-ef.com/triple-ef/

プラン_2020_9月号_表紙350px

※本記事は、『美容の経営プラン』2020年9月号で掲載しています