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失敗からスタートした美容室経営/南 直人 「考える人」が成功する美容室経営者

お客さまが来ない、スタッフが辞める、打つ手はことごとく大ハズレ、経営は当然のごとく赤字続き……、たくさんの失敗を経験してきた「元ダメ経営者」だから、そして、どん底から立ち直ることができたからこそ伝えられる、「経営の勉強」の重要性とそのポイント。中編は、「考えること」と「忘れないこと」について、南 直人氏が語る。

「考える脳みそ」

美容の経営プラン編集部・古田領一(以下:古田) 南さん自身、経営の失敗も成功も経験しましたが、経営がうまくいく人と、失敗する人、その最大の違いは何だと思いますか?

南 直人(以下:南) そうですね……、まず、失敗する人についてですが、昔と今とでは少し違ってきていると思います。

古田 というのは?

 昔は、何も調べない人が失敗していました。「出店すれば何とかなるでしょう」みたいな。……まさに昔の僕ですね。この点、今は、インターネットでも書籍でも、いろんな情報があふれていて、手軽に調べることができるから、全員が何かしらで調べています。今失敗する人は、調べた情報をうのみにする人や、出ている情報は全体の断片なのにもかかわらず、それを全部と思って見てしまう人だと思います。

古田 調べるところまではいいけれど、調べて得た情報の中身を、きちんと検討していない、ということですね。

 実際に、独立時の値決めにおいて、「価格を上げればいいお客さまが来る」と安直に考えている方を見かけたことがあります。確かに高単価の美容室は、傾向として美意識が高く美容室へのロイヤルティーも高いお客さまが集まりますが、そもそも、そういうお客さまは、高価格だからその美容室を選んでいるのではなく、技術・接客・サービスの質が、その価格に見合うぐらいに高いから選んでいるのですから。変に情報をつまんでしまっている人を見ると、不安になります。

古田 一方、成功する人は、どういう特徴があると考えますか?

 これは、昔も今も「考える人」です。昔なら、情報が少ないから、自分で考える必要がありました。一方、今は、得た情報の背景を精査し、その本質について深く考えることが大事です。

古田 「考える」は常に大事なキーワードなんですね。

 ええ。先に説明した「経営者マインド」も、その仕事の例として「人を雇用する」「経営戦略を立てる」「リピートの仕組みをつくる」「費用対効果も考えながら集客して顧客化する」を挙げましたが、これらは全て、経営者が一生懸命考え抜いて、できるものです。つまり、経営者の仕事とは、一言で言えば「考えること」なんです。だから、考える経営者は成功するんです。

古田 なるほど! 『たった7日間で赤字経営から脱出する 美容室経営ドリル』でも、「はじめに」や「おわりに」で、繰り返し「経営者の脳みそ」とか「考え続ける脳みそ」と書かれていますね。

 まさに、『美容室経営ドリル』をつくろうと思ったきっかけが、「経営者として考えてほしい」からなんです。なので、本の中ではたくさんの問題を出していますが、その中には、模範解答を提示していないものも多くあります。なぜなら、正解を出すことが大事なのではなく、「考える脳みそをつくること」が正解だからなんです。

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今のこの状況を覚えていてほしい

古田 今、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経営が悪化している美容室も多いと聞きます。

 美容室は日銭が入ってくるし、モノではなくサービスを売ることが主力業務なので、仕入れのための現金も、一般の小売店ほど持つ必要がない。通常なら自転車操業でも何とかなってしまう業種なんです。ところが、いざ緊急事態が訪れると、内部留保が少ないから、スタッフに給与を支払うこともできなくなってしまうんです。ただ、こうした非常事態があるかもしれないと想定し、一定期間はスタッフを守れるように、ある程度の現金を持っておくことも、本来は経営者の大事な役割なんです。

古田 生活や経済への影響は、「想定外」とも言うべきものですが、そこに対しても備えることが必要、ということですね。

 実は9年前にも、僕たちは東日本大震災で「想定外」を味わっているんです。Leafでいえば、あのときは、もともとそんなに来ていなかったお客さまがもっと来なくなりました。その上、さいたま市では計画停電も実施される。なのに手元にはお金がない。不安しかない、そういう経験をしていて、だから、借金を返した後は、どんなことが起きても経営を維持できるよう、利益の多くを内部留保に回し続けていたんです。もちろんLeafでも、新型コロナウイルスの影響は受けましたが、スタッフには「Leafはつぶれることがない」と安心してもらうことができました。
こういうことができたのは、一言でいうと、そのときの経験を「忘れなかった」から。経営者は、「のど元過ぎれば~」ではダメなんです。

古田 「考える」ことと「忘れない」ことが大事、と。

 はい。独立したばかりで、今回の新型コロナウイルス騒動が初めての試練という経営者の方も多いと思うのですが、そういう方にはぜひ、今の経験を忘れないでほしい。それで、今後このようなことが起こっても、動じないような経営基盤をつくってほしいと思っています。

(後編に続く)聞き手:美容の経営プラン編集部 古田領一

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南 直人
みなみ・なおと/1979年東京都生まれ。ハリウッド美容専門学校卒業。2008年、埼玉県さいたま市に美容室Leafを創業。赤字続きの5年間を経験する中で、経営の勉強が必要と実感し、経営論・マーケティング論・販売論などを貪欲に吸収。経営を立て直して、地域有数の繁盛サロンに転換させる。現在、その経験をもとに、美容業の傍ら、美容室経営コンサルタントとしても活躍中。5月25日、美容室経営者として必要な経営の勉強を、ドリル(演習)&対話形式で学べる著書『たった7日間で赤字経営から脱出する 美容室経営ドリル』を上梓し、注目を集めている。

■南 直人氏の著書
『たった7日間で赤字経営から脱出する 美容室経営ドリル』
※女性モード社webサイトでは、第2章まで【立ち読みする】でご覧いただけます

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