【試訳】独島イン・ザ・ハーグ【15】

もし、日韓が竹島(韓国名:独島(トクト))の領有権をオランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で争ったら? という、韓国の現役判事ハ・ジファン作のフィクション小説を、韓国語の勉強がてらに訳していきます。

第6章

コンプロミー(付託合意)

꼼쁘라미


「国連安全保障理事会は、日本と韓国に対して、互いにこれ以上の軍事的処置や武力の使用を控えるよう厳粛に求めるとともに、竹島あるいは独島の領有権問題をICJに付託することにより、この事態を平和的に解決することを勧告します」

オフィスで安保理の決定の様子を生中継で見守っていたペ次席は、割れた風船のようにソファーにどさっと座り込んだ。

「結局こうなってしまったかあ。今まで我が政府が、独島問題で訴訟することはないと数え切れないほど豪語してきたっていうのに・・・」

アン課長は眉間にしわを寄せて呟いた。

「強硬対応にこだわっていたときから分かっていた結末じゃないの」

ドハは、安保理の決定を予想していなかったわけでもないが、いざこのような決定が出るのを見ると、背筋が凍る思いをした。

韓国を訴訟という袋小路に追い込んだ後、合法を装って独島を奪い取ろうとする日本を見て、交通事故と偽って父の命を奪い去った犯人を連想したせいかもしれない。

安保理の決定が発表された日、日本の木村雅夫(まさお)外相は、ただちに記者会見を開き、安保理の決定を歓迎すると述べた。

事実上、韓国も早急に安保理の決定を受諾せよという無言の圧力だった。

世論では、ICJへ行くしかないという主張と、今からでも日本と戦争をすべきという主張が拮抗していた。

これまで日本政府が独島問題をICJで解決しようと公式に要求したのは全部で3回だった。

1回目は、韓国政府が独島に警察を常駐させた直後の1954年9月25日。

独島に韓国警察が常駐する状況が続けば、国際法的にも政治的にも韓国が次第に有利になるだろうという危機感を抱いた日本は、その時点で独島領有権問題の決着をつけようとICJ行きを提案した のだ。

これに対して韓国政府は、「もしある国が鹿児島を自分の領土だと言ってICJに提訴すれば、日本はこれに応じるとでも言うのか?  独島は数百年前から韓国の領土である。独島が韓国に帰属していることは歴史が証明しており、占有以後最近まで我々の漁民がこの島を継続的に利用している」として、提案を即座に拒絶した。

日本が2回目にICJ行きを提案したのは、日韓会談中の1962年だった。

これに我が国の政府の代表役を務めていたキム・ジョンピルは、独島問題を、ICJの代わりに法的拘束力のない第三国の調停に任せることを提案したが、日本はこれを拒否した。

当時韓国は、ICJに日本人の裁判官がいて韓国に不利な面があり、ICJに提訴すれば判決前に韓国が独島に設置した施設と警備隊を撤収しなければならなくなる可能性もあったため、北朝鮮が利害関係国として裁判に参加する可能性もあるという分析をしていた。

1965年6月から、日韓両国は紛争解決に関する交換公文交渉を開始したが、この適用対象となる紛争の範囲を巡って綱引きが続いた。

韓国は「紛争」の前に「生じる」という単語を追加し、将来の紛争だけを対象に限定することで独島問題を除外しようとした一方で、 日本は交換公文に「独島」を明示し、紛争解決手段として法的拘束力がある「仲裁」を入れることにこだわった。

日韓協定の調印式まで残りあと25分しかないという時点で、両国は、韓国が要求した「生じる」を挿入しない代わりに、日本が要求した「独島」と「仲裁」と入れず、法的拘束力がない「調停」だけを紛争解決手段として残すことで合意した。

この時から、韓国はこの紛争解決に関する交換公文は独島問題を対象としていないという立場を、日本は独島問題まで含むという立場をそれぞれ取るようになったのだ。

3度目に日本がICJ行きを提案したのは、2012年8月、李明博大統領が独島を訪問した直後だった。

これに憤った日本は日本の外交官を韓国外交部に送り、独島問題をICJで解決しようと提案したが、韓国はこれを無視した。

すると日本政府は、独島問題をICJに単独提訴すると宣言したが、結局提訴はしなかった。

日本が単独提訴をしたところで、韓国がこれに応じなければ訴訟が成立しないからだ。

すると今回は日本が独島に武力で攻め入り、その次に安保理がICJ行きを勧告するようにしたのだ。安保理の勧告決定に法的拘束力は無かったが、韓国は国連加盟国であり、事務総長を輩出した国としてこれを無視することは容易ではなかった。

何よりも、独島沖合に入ってきている日本の軍艦を追い出せる、これと言った手段がなかったのだ。政府は結局ICJ行きを受諾する声明を発表した。

「国連安全保障理事会が、大韓民国の領土である独島へ不法に侵攻した日本に対し即時撤収を求める決定を下さなかった点について、我々は非常に遺憾に思います。

しかし、我が国は国連加盟国として国連安保理の決定を尊重し、早期に国際司法裁判所で独島領有権に関する裁判を受けようと考えております。国際司法裁判所が国際法に立脚し、正義ある決定を下すことを期待します。」

【16】へつづく

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