【ドイツ語】「erstmal」と「erstmals」
ドイツにある色々なスーパーの中では、僕は「レヴェ(REWE)」をよく利用しています。
ただ、昔住んでいたところでは同じ系列の「ペニー(Penny)」が徒歩圏内にあったので、そちらを日常的に使っていました。
この「ペニー」のキャッチフレーズが「Erstmal zu Penny」。
和訳すると「とりまペニーへ」。
(「とりま」ってもう古い言葉なのでしょうか…)
買い物の際は、とりあえずまずはペニーに寄ってください、という感じ。
この「erstmal」は「erst einmal」(とりあえず)の省略語。
口語では「einmal」(一度)は「mal」と略されることが多いです。
従って、「erstmal」は本来は「erst mal」と分かち書きすべきもので、「erstmal」の形では辞書には掲載されていません。
一方、辞書には「erstmals」という、とてもよく似た、しかし似て非なる単語が載っています。
「erstmals」は「初めて」という意味です。
類義表現は「Zum ersten Mal」です。
これは「アナ雪」の「生まれて初めて」のドイツ語の題名でもあります。
この「-s」は複数形の語尾ではなく、副詞につく語尾です。
英語の「always」や「nowadays」等の「s」と同じです。
この手のものはドイツ語には「vielenorts(多くの場所に)」「keinesfalls(決して)」「mehrmals(何度も)」など、たくさんあります。
厳密に言えば、名詞の2格の形を副詞として使っているものです。
なので、この「s」は2格の語尾というわけですね。
「erstmals」は「ersten Mals」が縮まったものと考えることができます。
今では「erstmals」は一語として認識されているので、「erst mals」と分かち書きすることはできません。
以上まとめると、「Erstmals zu Penny」とすると、
「初めてペニーに」
という意味に変わってしまう、ということです。
初対面のお客さんばかりで、リピーターのつかないお店なのかな…。
さて、「erstmal」と「erstmals」、非常に似ていますが、
この前半の「erst」の意味がそれぞれ異なります。
「erst」は形容詞・副詞両方で使われます。
形容詞の場合は「1番目の」という意味ですが、
副詞の場合は「ようやく」「ともかく」という意味でも使われます。
順番が前後しますが、
「erstmals」(「s」のある方)は「ersten Mals」が縮まった語ですから、「erst」は元々は「1番目の」という意味の形容詞です。
一方、
「erstmal」(「s」のない方)は「erst einmal」という副詞表現が縮まった語なので、「erst」は副詞となります。
「erst einmal」全体で「ともかく一度は」➡「とりあえず」となるのです。
と説明したものの、紛らわしいことは間違いないので、
とりあえず、「とりあえず」の方は「erst mal」と分かち書きするのをおススメします。
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