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ドイツの鉄道は遅れなくなるのか?

今日はテレビを付けたら、ドイツの鉄道に関するドキュメンタリー「Besser Bahnfahren!」(「より良い鉄道移動を!」)と、同じく鉄道改革について取り上げた月曜の討論番組「Hart aber fair」がやっていました。

そこで、今回はドイツの鉄道について、特に結論も出さずに、ダラダラと僕の印象を書こうと思います。お付き合い頂けますと幸いです。

(討論番組「Hart aber fair」の今日のタイトルは「遅れすぎ、悪すぎ、高すぎ・・・なぜ鉄道はこうもダメなのか」です)

(ドイツの最大の民営鉄道会社は「ドイツ鉄道(DB=Deutsche Bahn)」ですが、他にも地方に小さな鉄道会社や、都市部の地下鉄・近郊列車を運営する交通団体もあるため、ドイツ全般の鉄道を言う時には「ドイツ『』鉄道」と書くようにします)

ドイツに住まれている、あるいは訪れたことがある方であればご存じのことではと思いますが、ドイツの鉄道は本当に遅れます。

長距離列車であっても、近郊列車であっても、車両故障から信号機不良、工事や保線(日本とは違ってドイツでは日中に(も)保線工事をします)、更には鉄道員の人員不足などを理由に、日常的に列車が遅れます。

ドイツの場合は鉄道の整備が充分でなく、鉄道の民営化(ドイツ鉄道(DB)の誕生)以降、行政からの投資が充分になされなかったことが主要因です。

実に遅延率は30%以上を超え、3本に1本の電車が遅れています。近隣国のスイスやオーストリアの方が鉄道への投資額は多く、南欧のスペインやポルトガルの高速列車の方が時間に正確で(←僕の経験です)、環境先進国のドイツは、鉄道ではむしろ多くの欧州諸国の後塵を拝している状況です。

DBでは遅延は「6分以上」と定義されています。60分以上の遅れが発生すると運賃の払い戻しが可能になり、2022年にはなんと9,300万ユーロ(1ユーロ150円として約140億円)が払い戻されたそうです(同上番組)。

しかし、環境先進国であり自動車大国でもあるドイツにおいて、地球温暖化対策のために再び鉄道(電車)に注目が集まり、2030年までにドイツ全体の鉄道の再整備を完了し、より時間に正確で、快適な鉄道移動ができるようにすることを目指すことになっています。

2027年までに、取りあえずは4千万ユーロ(60億円)以上を鉄道整備に投じることが連邦レベルで決まっています。しかし、実際にはその2倍以上の約9千万ユーロが必要とも言われています。

「交通の転換(Verkehrswende)」の1つですが、果たして成功はするのか。

ドキュメンタリーを見てまず驚いたのが、200キロの距離を通勤で移動する人がドイツにはいるということです。

確かにドイツはアウトバーンが整備されており、速度上限がないので、時速200キロで走れれば1時間でつけるわけですから、通勤圏内には入りますね。

ドイツにも日本のように、(デュッセルドルフ等の街がある)ルール地方のように人口密集地帯はあるのですが、地方の小さな町や村に住んでそこから車で通う人の数は多いです。

日本ほど人口の一極集中が進んでおらず、一方で日本より発展した車社会を持つドイツでは、一度手にした自由な移動を棄てて、本数が少ないうえに混雑して遅延もする鉄道に乗り換えるというのは、いくら環境意識が高いと言ってもなかなか難しいのではないか、、、と感じます。

今年5月から、ドイツでは特急・急行列車を除く全ての公共交通機関に月49€(7,300円ほど)で乗れる「ドイツチケット」が発行されており、8300万の人口を擁するドイツで既に1千万人ほどが利用しています。日本の「青春18きっぷ」のような感じですが、期間限定では(今のところ)ありません。

とは言え、200キロの通勤を自家用車で快適に行ってきた通勤者たちが、この切符を買って在来線での通勤に替えるとはあまり言い難いです。実際、ドイツチケットの利用者の8%はこれまで鉄道利用をしてこなかった人たちですが、ドイツチケットによる車から鉄道への移動手段の変化の効果は0.5%とのこと。

私は私鉄王国・関西の出身なので、鉄道は幼い頃から身近な存在でしたが、ドイツの場合は、都市部ならともかく、いや、都市内であっても車移動をする人が多いくらいなので、鉄道はそこまで身近ではないかもしれません。

いくら安めに鉄道利用ができると言っても、地方部では本数も少なく、当たり前のように遅延が発生して接続列車にも乗り遅れるようでは、そう簡単に人は鉄道に流れないでしょう。

また、日本の鉄道産業を支えていると言っても過言ではない「鉄道オタク」がドイツにいるようには思えません。鉄道模型オタクはいますが。

やはりドイツと言ったらベンツやBMWといったイメージ。移動手段も鉄道というより車という印象が強いです。

実際、ただでさえ人手不足の今、鉄道員のなり手が不足していることがドイツの鉄道の深刻な状況です。

また、2030年までのDBの目標に「2030年までに貨物輸送における鉄道のシェアを17%から25%へと引き上げる」ことが掲げられています。

ドイツは日本の新幹線と同じ線路幅で在来線が敷かれているので、日本の新幹線にあたる「ICE」も在来線と同じ線路を走ります。

そして、貨物列車も同じ線路を走るので、通過車両の多い路線は摩耗が早く、大きな遅延にも繋がります。

ここで僕が驚いたのは、整備作業の方法でした。

ドイツの長距離列車の25%が通る大動脈のフランクフルト⇔マンハイム区間(約70キロ)を、5か月の間、完全に封鎖して、整備作業を行うということでした。

日本であれば、何とかして列車を通しながら線路の敷き替え工事をすると思うのですが、随分と思い切ったことをするなと思いました。

また、ドイツでは高速走行用の路線を作ろうとした場合、環境保護や景観を理由に反対運動が起き(日本より多い印象があります)、トンネル工事や駅舎の新設工事などが完了予定年を大幅に過ぎることは日常茶飯事なので、

果たして2030年までに全ての整備が終わるのか甚だ疑問です。
いや、2045年のカーボンニュートラル達成にも間に合わない気がします。

因みに、DBは、2030年までのドイツ鉄道再整備事業を行っても、日本の定時運行率「99%」には達することはできないと、日本とドイツの鉄道の仕組みの違い(新幹線と貨物列車が線路を共有する)ことを理由に既に発言しています。

既に都市部にまでモータリゼーションが進んだ社会を、どうやって再び鉄道にシフトさせるのか。

気候変動という切り口から、ドイツは新たに鉄道整備に注力しようとしています。一人の鉄道利用者として、今後の発展が気になっています。

僕自身、鉄道には興味があるので、ドイツの鉄道事情について、これからもっと調べていきたいと思います。

🍀ここまでお読みくださいましてありがとうございました!!🍀




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