【英語】現在完了形ってなんだろう
現在完了形を理解する第一歩。
それは、「現在完了形」という名前を取りあえず忘れることです。
こんな用語、混乱を招くだけで大迷惑です。僕は好きですが。
英文法の授業で現在完了形を学ぶとき、
「継続」「経験」「完了」
の3つの使い方を主に学ぶのではないかと思います(僕の記憶では)。
このうち、「完了形」の名前を冠する「完了」の用法は、「過去形」との区別が少し難しいので、取りあえず最後に置いておきます。
「完了」の用法は「過去完了形」や「未来完了形」の方がハッキリするのですが、「現在完了形」だと、「過去形」との差が判然としないからです。
それでは、早速見ていきましょう。
過去形と現在形が表せないコト
こういうことを学ぶ際に、役立つ「そもそも」の質問。
「現在完了形」は、なんで存在するの?
ずばり、「現在形」と「過去形」では表現できない部分を補うためです。
そして、この「表現できない部分」とは、
「過去から現在までの途中経過」
なのです。
まさしく「過去」と「現在」の橋渡しの役を担うのが
「現在完了形」というわけです。
具体例を見ていきましょう。
「私は英語を勉強して5年になります」
という日本語を英訳したいとします。
説明しやすいように、時点も具体的に決めてしまいましょう。
2023年10月現在の話と考えてください。
さて、この文を「5年」という点に着目して、過去形にしたとします。
I learned English for five years.
これではなぜダメなのでしょうか?
主な理由は2つ。
1つは、このように過去形を使ってしまうと、
発言者が英語の勉強を今はしていないことがほぼ確実だからです。
今もしているなら、なぜわざわざ「I learned」と過去で言うのでしょう?
2つ目は、「for five years」。
ここから分かることは、「過去『に』5年間、英語を勉強した」ということだけで、いつの5年間のことか、これだけでは分からないのです。
この5年間は、必ずしも2018年から2023年までの5年である保証はないのです。例えば、2000年から2005年かもしれません。
「過去に5年間」と「過去5年間」は、意味が必ずしも一致しませんよね。
では、次に、「なります」に注目して、現在形で言ったとしましょう。
I learn English for five years.
これも不自然。
何がダメなのでしょうか?
現在進行形じゃないから?
というわけではありません。
現在進行形は、「進行」という名前とは裏腹に、
スナップショットを撮るように、ある一瞬を切り取るために使う表現です。
そのため「for five years」という、ある程度長い時間とは相性が悪いです。
「現在形」は主に「今、習慣でしていること」を表します。
そのため、この現在形は、
「私は英語を5年間学ぶことにしています」
という風に訳せるわけです。
「私は毎晩1時間ヨガをします」とか「私は毎朝10km ジョギングします」というような、そんなノリの「5年間」になってしまいます。
しかも、今は5年間のうちの3年目、という可能性もあります。
……いかがでしょうか?
「過去形」と「現在形」は、どちらも時間を「点」として捉えた描写しかできないわけです。
ここに、英語の過去形と現在形の限界があるわけです。
2018年から英語の勉強を始めて、2023年現在でも続けているという、時間を「線」として捉えた表現ができないわけです。
さて、困りました。
そこで登場するのが「現在完了形」なのです。
(1)I have learned English for five years.
(2)I have been learning English for five years.
厳密には「現在完了形」(1)と「現在完了進行形」(2)の2つがありますが、どちらも上の日本語文の訳として使えます。
違いがあるとすれば、(2)の方が、「今もまだ学習途中だし、これからも続けるよ」というニュアンスがあるということです。
「今のところはね」という暗黙の了解
上記の例は英文法で言う「『継続』用法」ですが、
「『経験』用法」も同じことです。
「私はドイツに2回行ったことがあります」を例にしましょう。
今回は、日本語から考えてみましょう。
「ドイツに2回行ったことがあります」と僕たちが話すとき、恐らく意識は殆どしていないと思うのですが、
「今のところはね」
という前置きがされているのです。
この「今のところはね」が、英語では完了形でないと表せないのです。
どういうこと?
「私はビビンバを食べたことがあります」
こういう「ことがあります」表現をする時、誰も、
「それが人生最後のビビンバになろうとは、私は思いもしなかったのだ」
なんてことは考えませんよね。誰も無闇に死亡フラグを立てたりしません。
つまり、意志や機会があるかどうかを問わず、
「まだこれからもドイツに行く可能性もあるし、ビビンバを食べる可能性もある」
ということを念頭に置いて話しているわけです。
「『経験』用法」とは言いますが、伸びしろは未来へ広がっているのです。
では、英語では、過去形と現在形で、これが表現できるでしょうか?
I went to Germany twice.
これだと、発言者本人が既にこの世を去っているか(人生で2回行った)、
「When I stayed as an exchange student in France」と言った過去の場面設定がなされている必要があります。
I go to Germany twice.
これだと、以前の例と同様に「私はドイツに2回行くことにしています」という意味になります。毎年でしょうか? それとも毎週?
結局、「過去から現在までの途中経過」を表現することができず、
だからこそ現在完了形が必要になってくるわけです。
I have been to Germany twice.
現在完了形は、よく「過去にあった出来事が現在にも影響を与えている」と説明されますが、ちょっと分かりにくいですよね。
どうしてそんな言い方をしているかと言うと、
過去形と現在形は、時間を多かれ少なかれ「点」で捉えているため、
「過去から今まで続いていること」を表現するのに適していないのです。
「オプション」的な立ち位置の「完了用法」
さて、、、
既にかなり長くなってきましたが、最後に「『完了』用法」について話します。
ちなみに、日本語にも「完了」があるのをご存じでしょうか?
私は昼食を食べた。(過去)
私は昼食を食べた。(完了)
「過去」と「完了」は、肯定文では全く見分けがつきません。
ですが、否定文にすると、「完了」の化けの皮が剥がれます。
私は昼食を食べなかった。(過去)
私は昼食を食べていない。(完了)
この「~ていない」を逆手に取ると、完了の肯定文は、
私は昼食を食べている。
と言うこともできますね。「ああ、もう昼は済ませていますんで」と。
上の文から分かるように、日本語の「~ている」は「進行形」と「完了形」の両方にも使えてしまう、ある意味ややこしい表現です。
私は、今、昼食を食べている(➡英語では進行形)
私は、既に、昼食を食べている(➡英語では完了形)
どうして日本語の話をしたかといいますと、
僕たちが母語話者としてあまり気にしていないだけで、
実は日本語にも、
「現在とつながりのある過去」
「現在とは切り離された過去」
の区別がある、ということを指摘したかったためです。
そして、賢明な読者の皆さまならお察しのとおり、
「現在とつながりのある過去」を表現するのが、
英語の「現在完了形」となるわけです。
I have lost my key. ➡ 私は鍵を失くしている。
I lost my key. ➡ 私は鍵を失くした。
日本語文だけを見ると、違いがイマイチ分からないかもしれませんが、
英語の「I lost my key」は、完全に失くしてしまった(=もう二度と見つからない)可能性が高いことを表しています。
逆に、現在完了形のほうの
I have lost my key.
は、「今のところ、私は鍵を失くしている」
という意味なわけで、「後で見つかるかも」という含みがあるのです。
……おや?
「今のところ」?
この話、先ほどもしませんでしたでしょうか?
その通り。「『経験』用法」で話したのと同じです。
「現時点での途中経過」を表現する。
これが現在完了形に任された役割で、
これは「継続」「経験」「完了」それぞれの用法に一貫しているのです。
ただ、この「完了」については、
正直、ネイティブと僕たちノンネイティブの間で
「使いどき」についての感覚が違うように思います。
先ほどの「鍵」の例だって、
「あー失くした。もう一生見つからない…最悪」
と思っていたら、上着の内ポケットに入っていてあっさり見つかった、ということもあるでしょう。
そのため、発言時にいちいち「これは途中経過だから現在完了形」とは、ネイティブはあまり考えていない気がします。
私はあまりネイティブの知り合いがいませんが、ネイティブが書いた文を見ていると、「完了用法」の現在完了形は、ネイティブは「ここぞ」という時に使い、多用はしていないように感じます。
「完了用法」には「今まさに起きたよ!」という「出来たてホヤホヤ感」があるのですが、あまりに使いすぎると冷めてしまうのかもしれませんね。
「完了用法」は「起きたばかり!」という意味が強いため、「過去から今までの『途中経過』」を表現できるほどの時間の経過もありません。
そのため、同じことを過去形でも表現できなくはないので、現在完了形は「オプション」という立ち位置に退くのでしょう。
「過去」と言えど、1年前も、1秒前も、過去ですからね。
そのため、現在完了形の「完了用法」と過去形の使い分けの差は、ノンネイティブには結構分かりにくいところがあります。
だからこそ、現在完了形が大いに力を発揮する「継続」と「経験」用法に目を向けると、この形の意義が良く分かると思います。
またとても長くなってしまいました……。
ここまでお読みいただきありがとうございました!!