見出し画像

発音について

外国語の発音が上手に越したことはない。

だけれども、発音が通じないのではと恐れるあまり喋れなくなるのは一番良くない。

たまに、外国語なんてブロークンで言い、発音が悪くても、単語を並べるだけでも、相手に通じれば良いんだ、と言うことを耳にすることがあるが、自分はそうは思わない。

日本語を話す外国人と会話したことのある人なら経験があるかもしれないが、クセのある発音はネイティブ側が「これはこう言いたいのかな?」と一つひとつ考えながら自分の頭の中で音を調整している。

つまり、ネイティブにストレスを与えることになるのだ。発音があまりに悪いのは聞き手に対する礼儀を失しているとも言えるかもしれない。

ただ、「ブロークンでも良いじゃない」というスタンスにも良いところはたくさんある。特に大事だと僕が思うのは、良い意味での「開き直り」だ。

時としてネイティブと見まがうほどの美しい発音で話す非母語話者を見かけるが、そんな人はごくわずか。ネイティブとして生まれなかった人々の大多数は、多かれ少なかれ、母語の影響を受けた訛りを一生携えて生きる。

それで良いのだ。

ネイティブに与えるストレスをできる限り少なくするには、発音がきれいなのに越したことはないが、そのせいで「完璧な発音でないと話せないんだ」と自分にプレッシャーをかけすぎてしまうのはもっと良くない

外国語を外国語として話す人を、多くの人は受け入れてくれるし、尊重してくれる。何もネイティブになりすます必要などない。

僕が本当の意味で開き直れたのは、フランス語を学んだときだった。大学のとき、僕はドイツ語を選んだ。

フランス人はとにかく美しいフランス語の発音にこだわるので、外国人の話す野暮な訛りには耐えられない。

そんな先入観を勝手に鵜呑みにして、訛りのたくさんのフランス語を話して、フランス人に理解されず、自尊心を傷つけられてしまう自分が怖かったからだ。

実際、フランス人の中には、「え?今の何?」みたいな反応をする人もいる。

でも、本当に仲の良い大事な人たちや、ビジネスパートナーのような得意先の人たち、つまり、あなたと話をしたい人たちは、ちゃんと耳を傾けて聞いてくれる

「日本語訛りがある」と言われるかもしれないが、「日本語訛り」という言葉があるくらい、ある意味でフランス社会で知られて、受け入れられているということだ。発音を向上させる努力は続けても良いが、別に訛りがあることを恥ずかしがる必要はない……そう感じてから、僕の会話能力は飛躍的に向上したと思う。

さて、発音の向上のさせ方だが、僕は「なりきること」だと思う。

フランス人になりきって(外国語を話すとテンションが上がることがあるので、そのノリの良いテンションで乗り切ろう)、「っぽく」話してみる

自分は日本人だ、という意識がONになっている状況では、不思議と口元が日本語の形になってしまうのだが、「なりきりモード」になれば、何だか話し方やしぐさも、それっぽくなってくるのだ。

その「なりきり」の研究のために、色々とポッドキャストやYouTube動画などを鑑賞して、結果的に聴解力も上がったりする。

ネイティブっぽさを目指しつつ、ネイティブでない自分もちゃんと受け入れる。前に進みながらもちゃんと背後には倒れても良いようにクッションを置いておく。この心の余裕が、外国語学習では大きな支えになる。


もし宜しければサポートいただけるととても嬉しいです!