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【試訳】独島イン・ザ・ハーグ【27】

暫定措置裁判の1週間前に先遣隊がハーグへ向けて出発し、代表団が泊まるホテルの会議室に電気や通信、コンピューター、保安設備を設置し、ICJ法廷で音響機器、コンピューター、プロジェクター、スクリーン等の設備が作動するか事前点検を行った。

訴訟チームは裁判3日前に出国した。

出国当日、仁川空港は裁判に反対するデモ隊と取材陣でごった返していた。

アムステルダムのスキポール空港に降り立つと、イ・スンチョル駐蘭大使一行が実務チーム員たちを出迎えに現れ、ハーグまで車に乗せてくれた。

オランダの首都はアムステルダムだが、官庁の大部分はハーグにあった。

ハーグに初めて来たドハにとって最も印象的だったのは、空だった。

幼い頃アニメで見たパステルカラーの色合いの澄んだ青色が空を覆っていた。

四方が平地で高い建物も特になく、 鮮やかな青色の空は、低い住宅の屋根の上まで腰を下ろしていた。

イ大使は澄んだ良い天気はもう直ぐ終わると話した。

10月から翌 年の春までは太陽の光をあまり見ることのできない曇り空が続き、ビタミンDを取らなければ鬱にかかりやすくなるんです、とイ大使は語った。

暫定措置裁判の日、韓国代表団はホテルの会議室で最後の会議を終えると、森の中を十数分ほど歩き、ICJのある平和宮へと向かった。

左に巨大な時計塔が立ち、右に尖塔が2つ立つ、魅力的な新ルネサンス様式の平和宮は、森の中に描かれた絵であるかのように、非現実的で美しかった。

正義の女神像の下へ出る門を通り、大法廷に入るとと、天井からシャンデリアが穏やかな黄色の光を発し、窓ガラスのモザイクは清々しい緑と青色に輝いていた。

長椅子が整然と置かれた裁判官の机には濃緑色の布がかかっており、その上には多彩な色の花々が挿された花瓶が置かれていた。

裁判官の机に向かって左に韓国代表団の席が、右に日本代表団の席があった。

山座局長を筆頭とする日本代表団はすでに席についていた。

韓国代表団の席の前列にはイ駐蘭大使、ソン・ チーム長、アン課長が、その後ろにはぺ次席をはじめ、ドハ、ウンソン、ソジュン等が座った。

傍聴席の後ろでは数多くの記者たちのカメラがフラッシュをたいていた。

「一同起立!」

法廷警備の号令に人々が一斉に立ち上がり、騒がしかった法廷に沈黙のカーペットが敷かれ、その上に胸に白いレースをつけ黒い法廷服を着た裁判官たちが順番に入室し、それぞれの席に着いた。

一番最後に入ってきた人物はパク教授だった。

裁判官たちが着席すると、真ん中に座った黒人の裁判長がマイクのスイッチを入れた。

「ご列席の裁判官の皆様、訴訟関係者、傍聴席の皆様。只今より、日本と韓国の間の暫定措置裁判を始めます。

本件は特別協定によ って日本と韓国両国の合意の下提訴されたものであり、両国を原告側、被告側ではなく、日本側、韓国側と呼ぶことを告知します」

続いて裁判長は裁判官を一人ずつ紹介した後、最後にパク教授を紹介した。

「一番左側に座っていらっしゃる方は、臨時裁判官に選任された韓国のパク・キヨン教授です。パク教授、机の前に出てきてくださ い」

でっぷりと太ったパク教授が席を離れ、裁判長に向かいあうようにして立った。

「韓国は国際司法裁判所規程第31条第2項に従い、パク・キヨン教授を臨時裁判官として推薦しました。

パク・キヨン教授は大韓民国の著名な大学の名誉教授であり、かつては韓国の国際法学会会長として活動した方です。

韓国がこれほど優れた方を裁判官に推薦したことを、本裁判所は非常に喜び、パク教授をICJ臨時裁判官に任命します。

国際司法裁判所規程第20条は、すべての裁判官は、任務を遂行する前に公開の法廷で公平かつ誠実に裁判することを厳粛に宣誓しなければならないと規定しています。パク教授、宣誓をお願いしま す」

パク教授は結婚の誓いをする新郎のように上気した表情で宣誓した。

「本裁判官はパク・キヨン教授の厳粛な宣誓を受け入れ、パク教授が本件の臨時裁判官になったことを宣言します」

裁判官は続いて取材陣を退出させた。

「これより、これ以上の撮影を認めません。傍聴席の皆様も個人的にカメラや携帯、録音機を所持している場合は、すべて法廷の外に置いていただくようお願いします。資料画面が必要であれば、この後裁判所が提供する画面を利用することができます」

取材陣が席を離れるために法廷内部がしばらくざわついだが、やがて再び静けさを取り戻した。

「只今より、本格的に裁判を進行します。まず、事務局長は韓国側の暫定措置裁判申請趣旨の朗読をお願いします」

裁判長の指示に従い、裁判官席の一番端に座っていたICJ事務局長が申請趣旨を朗読した。

申請趣旨とは、訴訟を申請した側が裁判を通して得ることを希望する判決の主文のことを意味する。

「大韓民国が申請した請求趣旨は、『日本は直ちに独島または竹島を包囲している自国の軍隊を撤収せねばならない』というも のです」

裁判長が進行を続けた。

「それでは、これから本格的な弁論手続きに移ります。まず、暫定措置を申請した韓国側から弁論をお願いします」

【28】へつづく

【画像】Cor Gaasbeekさま【Pixabay】

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