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【ドイツ語】分離動詞の意味の重心は「前つづり」にあり?!

こんにちは!
今回は、ドイツ語の「分離動詞」の話をしていこうと思います。

「分離動詞」と言うのは、例えば「aufmachen」(開ける)という動詞が、文の中で「machen….auf」というように、前つづりと本動詞の2つに分かれるもののことです。

これ、「分離」しているというかは、むしろ逆で、不定詞や過去分詞などで「くっつけて」書いていると考えた方が学習上良いと思うのですが(分離動詞ならぬ「結合動詞」ですかね)、その話はまた今度。

今日は、「分離動詞、意味の重心は『前つづり』にあるのでは?」です。

もちろん、分離動詞全てにこれが当てはまるわけではないのですが、
前つづりが離れる「分離動詞」と、離れない「非分離動詞」の違いは、

分離動詞の方は、動詞本体よりも前つづりの方に重点が置かれていることです。
少なくとも、私たち日本語母語話者にとってはその方が分かりやすいと思います。

では、動詞本体(本動詞)と前つづりの役割分担はどうかというと、
動詞本体は「プロセス(過程)」、前つづりは「結果」を表しています。

例を挙げます。
日本語の「開ける」に該当するドイツ語の動詞は、実はたくさんあります。

aufmachenもあれば、
aufschließen 
aufdrehen
aufschlagen
aufstoßen
aufziehen
aufhalten
auflassen
aufreissen
aufblühen

…等々と、色々です。ネイティブは場合によって使い分けています。

これを、通常は、動詞本体が同じものを集めて覚えたりすると思うのですが、
実はこれらに共通しているのは、どれも日本語で「開ける」「開く」と訳せるということなんです。

そして、この「開ける」に相当する意味を担っているのは、動詞本体ではなく、前つづりの「auf」の方なんですね。

なので、日本語の「開ける」の訳は「auf」さえあれば事足りるわけです。

では、動詞本体は何をしているのかと言うと、「開ける」までに至る過程を表しています。

そして、この「過程」をわざわざ動詞を使って表現しているということは、ドイツ語の分離動詞では、「過程」や「どのように開けるのか」ということの方が大事ということですね。
(「開く」という方が大事であれば、「開く」を意味する言葉が動詞になっているはず)

aufmachenは「する(machen)」ですが、
他の分離動詞の動詞本体に注目してみると

aufschließen 鍵をかける(schließen)➡鍵を回して開ける
aufdrehen 回す(drehen)➡(瓶の蓋などを)回して開ける
aufschlagen 打つ(schlagen)➡打って(=勢いよく)開ける
aufstoßen 突く(stoßen)➡突いて(=勢いよく)開ける
aufziehen 引っ張る(ziehen)➡ 引き開ける
aufhalten 押さえる(halten)➡ 押さえて開ける(開けておく)
auflassen そのままにする(halten)➡ そのまま開ける(開けておく)
aufreißen  裂く(reißen)➡ 裂いて(=カッと、パッと)開ける
aufblühen 咲く(blühen)➡ 咲いて(花を)開ける

というように、「どのように開くのか」という意味を動詞が表していることが分かります。

こう考えると、日本語脳では「開ける」という言葉しか浮かんでいないときに、ドイツ語ではもっと動作の細部まで考えを巡らせる必要があることが分かります。

これが日本語母語話者にとってのドイツ語の難しさの1つだと思います。
ドイツ語に限らず、母語にない概念や、母語ではあまり注意を向けていない違いや細部に考えを巡らせるのは、どの外国語でも難しいです。

ここでは「auf」を取り上げましたが、同じことは別の分離前つづりでも言えます。

例えば、定番(?)の「einsteigen」「aussteigen」「umsteigen」を見てみましょう。

「steigen」という動詞は、「上がる」と「下がる」の両方を意味する、私にとっては複雑怪奇極まりない動詞なのですが、

この動詞の核となる意味は、「高さが異なる(段差がある)二つの場所を移動する」です。

だから、話者の視点によって「上がる」にも「下がる」にもなるわけです。

これを踏まえて先ほどの3つの動詞を見てみると、

einsteigen は、「中に入る」+「段差を移動する」➡ 乗りこむ
aussteigen は、「外に出る」+「段差を移動する」➡ 降りる
umsteigen は 「替える」 +「段差を移動する」➡ 乗り換える

となります。
見て頂くと一目瞭然ですが、この3つの動詞とも、意味の重心は前つづりに置かれています。

それと、日本語の間隔からすると、ein-steigenという順番よりも、steigen-einという順番の方がしっくり来るのではないでしょうか。

だって、段差(プラットフォームと車両)を移動するのは、電車に乗った後ではなく、乗る前ですよね?

実はドイツ語でも、文章の中では「steigen….ein」のロジックの順番で分離動詞が登場するのですが、

単語としては「einsteigen」の順番で覚えてしまっているので、どうしても頭の中でロジックがひっくり返って混乱してしまうのです。

ですので、分離動詞を勉強するときは、

1.「動詞本体」ではなく「前つづり」にこそ魂が宿っている。
(もちろん、日本語母語話者としてドイツ語を理解するなら、です)
2.分離動詞は、「前つづり+本動詞」の順番よりも、「本動詞+前つづり」の順番で覚えた方が理解しやすい。

この2つを念頭に置くと良いと思います。

ただ、初級の方がこれをしてしまうと、頭が混乱してしまうので、ある程度分離動詞に慣れてきたときに、理解の補助線として参考にしていただければと思います。

なぜ、「日本語母語話者としてドイツ語を理解するなら」という但し書きをしたかと言うと、

日本語の複合動詞(取り組む、とか、受け入れる、など)は、「動詞本体(取る、受ける)+補助動詞(組む、入れる)」という順番で並んでいるのですが、

ドイツ語では、むしろ「補助動詞(厳密には副詞)+動詞本体」と、日本語母語話者の間隔からすると順番が真逆になって見えているからです。

しかも、日本語の複合動詞では活用するのは補助動詞の方ですが、ドイツ語では動詞本体の方が活用するので、ここでも真逆になっています。

ただ、この「逆の順番」というのも、ドイツ語の正書法上そう見えるだけで、実際はドイツ語の分離動詞も日本語の複合動詞と同じ順番の作りです。

「本動詞+前つづり」という順番は、英語の「get up」などの句動詞と同じ順番ですよね。

考えてみれば、「get up」も、あの「get」には「~の状態になる」くらいの意味しかなく、意味の重心(魂)は「up」の方にあることが分かります。

長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました!!

(画像)motointermediaさま(Pixabay)

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