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『倒錯のロンド 完成版』折原一 レビュー

”原作者”と”盗作者”の緊迫する駆け引きに息を呑む。受賞間違いなし、と自信を持って推理小説新人賞に応募しようとした作品が、何者かに盗まれてしまった! そして同タイトルの作品が受賞作に。時代の寵児になったのは、白鳥翔。山本安雄がいくら盗作を主張しても誰も信じてくれない。原作者は執念で盗作者を追いつめる。巧緻極まる仕掛けが全編に張り巡らされ、その謎が解き明かされていく衝撃、そして連続する衝撃! 叙述トリックの名手・折原一の”原点”に位置づけられる名作、32年越しの改訂が加わった新装完成版。 

講談社BOOK倶楽部ホームページより


https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000348122

<紹介>

倒錯シリーズの第2作目。
1989年初版が刊行され、92年に文庫化された『倒錯のロンド』に加筆・修正を加えた作品。2021年刊行。

<登場人物>

山本安雄(主人公)

33歳。身長165cm。3人兄弟の末っ子。独身。小柄の醜男。
東十条3丁目のボロアパート「平和荘」2階201号室に住んでいる。バスなし共同トイレ。薄汚れた狭い四畳半一間の部屋で家賃は2万3千円。
二流の私立大学を卒業、従業員数わずか8名の零細出版社に勤めたが5年で退社。その後はアルバイトで生計を立てている。
推理小説作家を志し、月刊推理新人賞の受賞を目標としている。
スロースターター。

城戸明

 安雄の高校時代の同級生で親友。33歳。独身。長身。長髪。
 東京にある美術関係の大学に進んだ。
 大学卒業後デザイナーの事務所に勤めたが、昨年独立して豊島区南大塚1丁目の5階建てマンション『ジュエル・マンション』の303号室に「城戸デザイン事務所」を構えている。 
 楽天的。推理小説はおろか、本なんてめったに読まない。

永島一郎

 もうすぐ32歳。10年務めた印刷会社を辞めた後9か月経ったが希望する職が見つからず、現在は退職金と失業保険でなんとか食いつないでいる。
 赤羽の団地住まい。築20年ほどの5階建て。小家族用の2DK。5年前に妻と一緒に入ったが、2年前に離婚。
 人嫌い。粗暴で怒りっぽい。

大家のおばあさん

 2階建てボロアパート「平和荘」の大家さん。
 向かいの平屋に住んでいる。年は70歳すぎぐらい。
 安雄のことを勉強熱心な学生だと思っている。

ミキ

 18歳。都内の高校を中退して男と同棲していたが、つい先日別れたばかり。男性経験は多い。

立花広美

 小柄。23歳。フリーライター。健康的な美人。
 笹塚駅近くのマンションで一人暮らしをしている。

藤井茂夫

 「月刊推理」の副編集長。
 30代後半。痩せすぎで不健康そうな顔色の男。

安雄の母

 福島県在住。70歳。
 安雄に農業を継いでほしいと思っている。

荒井

 巣鴨署の警部補。ゴマ塩頭の年輩の男。

<地名>

東京の大塚を中心として概ね半径5km県内で起きている出来事なんやけど、東京に住んだことのない者にとっては馴染みのない駅名や路線名が出てきて難度が高い。逐一地図を見ながら登場人物の足取りを辿る必要あり。
https://www.google.com/maps/d/u/1/edit?mid=10gSic_hHVZDVTOc2soksxp24hjZVW0w&usp=sharing

<レビュー>

 受話器/ファクシミリ/ワープロ/切手の自動販売機…などが登場するので、現代のスマホ世代には理解しづらいとオモ。1970年代以前に生まれた人向けの作品。

 文章自体は読みやすい。けど2回読み返しても永島一郎が殺意を抱き続ける理由が分からんかった。「そのとき倒錯状態に陥っていたから~」では安易すぎるし。
 あと、"親友の死"に対する描写が淡白な気がした。「自分の小説が盗作されたことに対して怒り狂ってたから気が回りませんでした~」…になるんやろか?(-ω-;)ウーン

 ただ、作中に名作小説や実話が何作か登場するから、そのあたりの作品も併せて読んだらちゃんと理解できるかもしれん。
 ウイリアム・アイリッシュのサスペンス小説『幻の女』
 スティーブン・キングの恐怖小説『シャイニング』
 イギリスの有名な実話「浴槽の花嫁事件」
 F・R・ストックトン『女か虎か』
 スタンリー・エリン『決断の時』
 高橋克彦『写楽殺人事件』
 B・S・バリンジャー『消された時間』『歯と爪』



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