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元祖平壌冷麺屋note(53)

教員時代、とてもお世話になったアバイ(おっちゃんを敬意と親しみを込めた呼んだ愛称)が、友人とご来店。

アバイは、私が小中時代を過ごした母校で元教員を務め(時期は重なっていない、干支がみつまわり上だから)、それから数十年を経て、私が教員になった学校で、バスの運転手として戻って来られた。

自分が担当していた吹奏楽部の備品が壊れたときには、直してくれたり、担任をしていたクラスのドアが壊れたときも直してくれたり、それだけでなく、数え切れないほどのためになる話を聞かせてくださった。

「桃李成蹊って知っとるか?」
「角を矯めて牛を殺す、ちう言葉があってな」
「美しいものを美しいと感じる、その心を大事にせなあかん」
「良禽択木」

学校の最寄りの同胞のお店で、閉店まで飲みながら、時にはアバイ亭と呼ばれるアバイのアパートで朝まで、語り明かした。

教員の有志で集まりアバイ特製の出汁で煮込んだ鍋をつつく会を、年に数回、お正月や教員の休暇(ほとんどないけど)に催したりもした。

顔を真っ赤にしながら、涙を浮かべながら、説教をするアバイの姿に、情熱というものを学んだ。

開店待ちをして焼肉と冷麺を完食されたアバイとご友人に、そば湯を渡しながらご挨拶をしたら、アバイの説教を久しぶりに浴びることになった。

「お前らなあ、現役の時は、尊敬してますとか言っておきながら、学校を出て行ったらワシに会いにも来ず、連絡もせず、この薄情者が!いつになったら同窓会をするんや」

春日野商店街でばったり遭遇し、ランチを一緒にしようと、定食屋とカフェをハシゴしてアバイの小言を4時間近く聞いたのは、3年前だったか。

当時の教員オールスターズで集まって、アバイを囲んで、昔の話とこれからの話をする。楽しいだろうなあ。

と夢想しながら、少し寂しそうなアバイの顔を想いながら、終日、冷麺を練っていた。

年に一度、アバイからは難読語の問い合わせが来る。(現役時代は、アバイの読む本の難読語を解説するのが日課でもあった)

毎回、調べては返信していたのだけど、「読み方」や「用例」ではなく、

「近々、一緒に食事でもしませんか」

が、正しい答えだったのかも知れない、と気づいたのだった。




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