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田中芳樹「 銀河英雄伝説 」に歴史の真理を教わる【 本の紹介 】


「 銀河英雄伝説1 黎明篇 」田中芳樹

僕が生まれた翌年(つまり38年以上前)には、この壮大な宇宙叙事詩が生まれていたのか。今更ながら手にしたが、申し分なく面白い。そして、まったく古さが感じられません。

序章の「 銀河系史概略 」からして圧巻ですね。

「 西暦2801年、太陽系第三惑星からアルデバラン系第二惑星テオリアに政治的統一の中枢を遷し、銀河連邦の成立を宣言した人類は、同年を宇宙歴1年と改元し、銀河系の深奥部と辺境部にむかってあくなき膨張を開始した 」。

やがて銀河系に一大王朝を築き上げた銀河帝国と、民主主義を掲げる自由惑星同盟との闘争の中で、二人の「 天才 」が現れます。

交差する戦いと平和への想い、そしてぶつかり合う戦略。人類の長い歴史が下敷きとなっていて、はるか未来の話のはずなのに、いま現在の世界の趨勢が浮かぶのでした。

僕と同年齢の物語にあいさつ。遅ればせながら、どうぞよろしく。


「 銀河英雄伝説2 野望篇 」

外柔内剛。盛者必衰。銀河帝国。自由惑星。休戦状態。悪徳商人。腐敗貴族。侃々諤々。大河浪漫。益々面白!


「 銀河英雄伝説3 雌伏篇 」

銀河帝国の若者L 「 体制にたいする民衆の信頼をえるには、ふたつのものがあればよい。公平な裁判と、同じく公平な税制度。ただそれだけだ 」

自由惑星の若者Y 「 人間は国家がなくても生きられますが、人間なくして国家は存在しえません 」

何処ぞの誰かさんに聞かせてやりたい。


「 銀河英雄伝説4 策謀篇 」

どうしても続きを読みたくて、銀英伝→グイン→その他→銀英伝......のループを破ってしまいました。読書の利点には、好きな本を、好きな時間に、好きな場所で、好きなだけ読める(物理的な障害や制限がない場合において)というのがあるから、良しとしましょう。

初めはSFと思って読んでいましたが、いまは歴史小説として楽しんでいます。遠い未来の(しかし現在にも通ずる)、リアリティーあふれるシュミレーションとしての。


「 銀河英雄伝説5 風雲篇 」田中芳樹

銀英伝も折り返し地点に。バーミリオン星域会戦の始まりと終わり。ひとつの時代の終わりと始まり。

38年経ってなお語り継がれる伝説。そして、色あせない面白さ。


「 銀河英雄伝説6 飛翔篇 」

仕事が繁忙期で13連勤の最中でも、宇宙旅行は簡単に行ける。扉を開くだけ。

若き皇帝と、ある年金生活者の肖像。平和に慣れない歴史は、さらなる戦乱を呼ぶか。


「 銀河英雄伝説7 怒濤篇 」

頁を開き、銀河へ飛び立つ。

歴史という滝は、英雄たちを、ほとばしる激流の中に呑み込みました。

怒濤の流れを経て、燦々と輝く大海原へ辿り着いたとき、彼らは、僕らは、どのような光景を目にするのでしょうか。


「 銀河英雄伝説8 乱離篇 」

ある英雄の言葉を胸に刻みます。

「 生きるということは、他人の死を見ることだ。」

「 戦争やテロリズムはなによりも、いい人間を無益に死なせるからこそ否定されねばならない。」


「 銀河英雄伝説9 回天篇 」

「 歴史とは、人類全体が共有する記憶のことだと思うんだよ。思いだすのもいやなことがあるだろうけど、無視したり忘れたりしては、いけないのじゃないかな。」(ヤン・ウェンリー)


「 銀河英雄伝説10  落日篇 」

英雄たちの叙事詩、完結。

彼らに、少しばかりの想像力と正しい歴史認識のための努力、そして、それをもとにした、一人ひとりの主体的な行動こそが、歴史を正しい方向へと動かすのだと教わりました。

「 人類は、その愚かしさを失ったとき、進化をとげることができるのだろうか。」

(完)

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