「銭ゲバ」コンプレックスを埋めるために生きるのはつらいよって話
銭ゲバ、読んだことありますか?
先日お亡くなりになったジョージ秋山先生の漫画で、Kindle unlimitedで読めるようになっていたので先々月くらいに読みました。
今も読み放題みたいです。
全4巻なんですがすごく濃いストーリーで、深いストーリーでした。
かなりの名作で、自分の人生の漫画の中でもかなり上位にキテます。
今日はそんな「銭ゲバ」の話でも。
ネタバレはしないように頑張ります。
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銭がなかったから
主人公の蒲郡風太郎(がまおごりふうたろう)は、片方の目が生まれつき潰れてしまっている顔を持っています。
また後で書きますが、直接的には顔のことについて書かれていませんが結構重要な事だったりします。
風太郎の子供時代から始まるのですが、とにかく貧乏です。
病気の母親がいるのですが、ツケが溜まりすぎて、医者にも見てもらえなくなり、母親は死んでしまいます。
唯一良くしてくれた近所の兄ちゃんに風太郎は、「銭さえあれば母ちゃんは死ななかったズラ」と言います。
その後、置き引きをするのですが、兄ちゃんに見られてしまい、「そんなことをしてはいけない」と諭す兄ちゃんを殺してしまいます。
風太郎はそこで、「銭の為に生きねば」という業を背負ってしまいます。
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本当は人を信じたかった風太郎
(ここから少しネタバレあります)
そこからあの手この手、外道の限りを尽くして超大企業の社長に登りつめます。
金の為に罪に罪を塗り重ねていく風太郎。
周りには敵と恨みを持つものと金によってくるものしかいなくなってしまいます。
誰にも譲らず、どんどん成り上がってくる風太郎ですが、ずっと満たされず哀愁がただよってるのがなんだかグッときてしまいます。
誰も信じず、剛腕で大富豪になる風太郎ですが、その反面、本当に信じれる人を探していたんだと思います。
純朴そうな女子高生を好きになるシーンがあります。
「お金じゃない本当の愛があったんだ」とだんだん穏やかになっていくのですが、ある時、「お金が欲しいの・・・」と言って風太郎の前で服を脱ぎ始めます。
風太郎は「そんな、君までもが・・・!」と言って大ショックを受けます。
結局、風太郎は「金がなかったからお母さんが死んだ」「金の為に慕っていた兄ちゃんを殺した」という強烈な呪いにとらわれていて、信じられるもんなら人を信じて生きたかった。
その葛藤というか業というか、重みみたいなものが「人間」という感じがしていいなあと思うのです。
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本当の自分
個人的にこの漫画でさらに印象的なのは、風太郎のつぶれた目です。
母親は優しかったのですが父親はかなり酷い人で、生まれた時から父親に「気持ちわるい」と言われてしまいます。
全編通して、顔の傷にはそこまで踏み込まないのですが、要所要所でつぶれた顔の半分だけが写るコマがあります。
文字では書いていませんが、「本当の自分」がそこにいて、みじめな気持ちになったり悲しくなったりすると浮き出てきているんだと思います。
本当は人を信じて人を愛して生きたい自分がいて、自分でかけた「銭ゲバの呪い」によって突き進んでいく仮面の自分を憐れんでいるように見えます。
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コンプレックスを埋めるために生きるのは虚しい
風太郎は女好きで、基本的に美女ばかりと付き合います。
でもほとんどお金目当て。
唯一自分を愛そうとしてくれた人がいたのに、顔に傷があり障害を持っていて、ひどい扱いをしてしまいます。
風太郎は「俺は美しいものが好きズラ」といいます。
結局のところ、自分のコンプレックスを埋めようと金も美女も追い求めているんです。
でも結局満たされないんですね。風太郎には理解者がいないんです。
最後のシーンが好きなのですが、富も名声も欲しいものは全部手にした風太郎が、新聞社の依頼で「人間の幸福」について書くことになります。
言葉では「金ズラ!」と言うのですが、ふと想像します。
普通のサラリーマンで、知り合いとボーナスの愚痴を軽く言い合い、お昼を同僚と一緒に食べ、奥さんにお願いして車を買い、休日には奥さんと子供でピクニックに出かける。
山道で転びそうになる奥さんを支えて、子供に「ヒュー!」なんて囃し立てられ、「コラー!」と笑いながら追いかける。
「こんな未来もあったんじゃないか」と走馬灯のようによぎるその情景に泣けてきます。
コンプレックスを埋めようと生きるのは虚しいんだなあと、まざまざと思わされます。
コンプレックスとは別のところに価値を見出して生きることが一番幸せだったんじゃないかと、風太郎も思ったんじゃないでしょうか。
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ちょこちょこネタバレしてしまいましたが、銭ゲバの深さはこんなものではないので、ぜひ読んでもらえたらなと思います。
4巻までなので結構サクサク読めちゃうのでおススメです。
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