ミス・サイゴン Let Me See His Western Nose

作:アラン・ブーブリル クロード=ミッシェル・シェーンベルク
日本語訳詞:岩谷時子 

キムがトゥイを撃った直後、エンジニアに助けを求めるシーンで歌われる曲。日本語訳がないので、英語の歌詞のみ見て気づいたことを。

この歌、元々はジジ (キムと同じバーで働くバーガール)が歌う、Movie In My Mind (我が心の夢)のメロディーが一部、リプライズとして使われています。「自分には手に入らない幸せを夢見て」歌う歌。
ちなみにレ・ミゼラブルの「夢やぶれて」と雰囲気も内容も似ています。

You're telling me this half-breed brat
Is born the son of a marine?
Let me see his western nose
This bastard is... the most beautiful sight I've ever seen!

A passport in my hand
My new life can begin
Your brat's American
So they must let use in!

half-breed 混血の
brat 子ども、ちび、ガキ
bastard 非嫡出子

トゥイの部下たちが追ってくるから追い出そうとしていたのに、タムがクリスの子だと知ったとたんエンジニアの態度が一変。
The most beautiful sight I've ever seen! などと言い出します。

この曲、ベースは「我が心の夢」で最初は短調(暗い曲調)で始まるのですが、A passport in my hand から So they must let us in! の数小節だけ、長調(明るい曲調)に転調してるんです!

タムがいればアメリカに入国できる!と気づいた瞬間、アメリカ行きが「かなわぬ夢」ではなく現実味を帯びてきた。このエンジニアのテンションが上がった様子が転調という手段で表現されているのでは?と気づいた時は「おおー」となりました。

In!
The playground of mankind!
The movie in my mind!

I'm dear brother from now on
And all our family is gone
Boy, kiss your brand-new uncle Tran
This kid is OK

He is our entree
To the U.S.A

entree 入場権

自分はキムの兄ということにして、タムに「さあ、新しいトランおじさんにキスして」と言う(エンジニアの本名は「トランヴァンディン」だそうです)。私が観た回は伊礼エンジニアだったのですが、タムがエンジニアにキスした後、袖で口を拭いてて笑いを誘っていました。

あと、This kid is OK というとこ、なんか笑ってしまう。何がOKなんじゃとツッコミたくなります。邪魔者扱いしてたのに…。(笑)
伊礼エンジニアは子煩悩っぽい一面も見えたのですが、ここでタムに対して使っている basterd や brat という言葉は軽蔑的な意味をもつ言葉らしいので、あくまでアメリカに入国するための手段 (entree 入場権)として利用してるんでしょう。

マイナーな曲だけどお調子者でしたたかなエンジニアの人間味がわかる曲だと思いました。


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