夏の露天風呂撮影
ポスターの撮影でした。1985年頃でした。
“別府に来てね”というようなポスターでした。
モデルが、温泉に入ってニッコリするあるある撮影です。
一応、モデルのプロモーション写真は見ていました。福岡からやってくるプロのモデルです。
駅には、私がお迎えしました。
いつも思うのですが、お迎えで、どの人かサッパリわかりません❗️
見ていた写真は、バッチリヘアメイクができていて、プロのカメラマンが、綺麗に写るライティングで撮影しているものですから、、、
すっぴんでやってくるモデルは、背が高く、大きな黒のスタイリストバッグを持っているか否かで
博打のように声をかけます。
その日も、博打でモデルを当てて車で撮影現場に連れて行きました。
場所は、別府の扇状地の裾にある海に近い露天風呂でした。
バックには、高崎山(大分で猿で有名な山)が見える景色の良いお風呂です。
メイク(大体プロのモデルは自分でします)を終え、大変身した後、水着に着替え、ベージュのタオルで作った胸から下を隠すブラジャーの様なものを付けて貰い、肩を出して、撮影に進みました。
お風呂の周りには、スポンサーの方(広報、たまに偉い方)、カメラマン、カメラマン助手
広告会社のデザイナーやプロデューサーなど
スチール撮影は、人数が少ない方ですが、10人程はいます。
撮影が始まり、何回かシャッターが切られ、当時はまだフィルムだったので、ポラロイドも撮り、スポンサーや広告会社の面々が、チェックします。
そこで、カメラマンが、私にコソッと
「この子、胸が無さすぎるので、谷間をどうにかして作って❗️」
「え❗️、、、、」
「ガムテでもなんでも良いから作って❗️」
辛い仕事です。
ポスターなのに、胸の谷間を求めるなんて!
現場にいる男性は、みんなそう思っているんだ
が、ちょっとムカつきながら、風呂から一旦上がって貰い、言いにくいセリフをモデルに言いました。
すると、慣れているのか、
「良いですよ。ガムテを胸に貼ります。」と、
なんというプロ根性❗️
更衣室では、ガムテを伸ばして切る音がしていました。
そうして再び登場したのですが、よっぽどだったのか、谷間はあまりできていませんでした💧
仕方なく撮影に戻り、カメラマンはより水面近くにカメラをセットし直して撮影を始めました。
ところが、今度はモデルの汗がダラダラと落ち出したのです。
ヘアメイクも私の仕事で、化粧直しをしたり、ヘアの崩れを直したりします。
別府の温泉は、山の上の方より、下の海近くの方が熱いのです。
脇からホースでお水を入れていたのですが、のぼせて、顔は赤くなり、ダラダラ流れる汗は滝の様になっていきました。
こういう撮影は、何枚も何枚も撮影します。
最低でも1時間以上は撮影します。
それで、何度も休憩を入れて、用意してもらっていた氷をビニールに詰めて与えていました。
ほとんど、私の仕事はボクシングの「セコンド」のような仕事になっていきました。
大体、温泉の撮影は冬します。
外気の温度が低いので、湯気が立って綺麗に映ります。
その代わり、スタッフは、寒い外の風呂場で、素足の為寒くてキンキンに冷えた床(露天風呂は石が多い!)はとても冷たくて辛いものになります。
でも、この時の夏の撮影は、モデルが可哀想なくらいでした。
文句も言わず、ひたすらカメラに向かって引き攣る笑顔を振りまいていました。
化粧直しも何度も行い、だんだん笑顔が無くなっていくのがわかり、撮影する方もこれはダメだと、早めに終わりました。
私はモデルを駅まで送り、仕事を終えました。
後に、カメラマンが、
「胸は無い❗️顔も良くない❗️そして一番は顔の汗、顔に汗をかくなんてプロとしては失格❗️」と怒っていました。
モデルを選ぶのはスポンサーなのでなんとも言えませんが、俳優やモデルは顔に汗をかかないように訓練をするのとか、、、
そう聞いて、プロってすごいなーっと感心しました。
到底モデルにはなれないと(最初っからムリなんだけど)改めて思った事でした。
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