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Pentagon_❸過去、となり今

1.忘却

なにもかも。私に味方する存在はいない。欲望も悲しみも。
もう全てが丸く収まった、外の事情とは違って見える。
二年前。もう二年も経ったのか。それはそうだ、と納得しきれない、湿ったため息をつく。

私はあなたを知らなかった。
あの日、あなたから向けられたその視線に、いつの間にか惹きつけられて、二年も時が経つ。

そして、私は一年前、あなたを知ろうとしなかった。何も起こらずに終わりは来た。私の初恋はとっくに終わっているようだ。

私は今、どうしたらいいのかわからない。もう恋愛なんて興味を持つかどうかの前に、私は恋愛をしてはいけない。
時間は私を食らう。恋愛など、きっと更に私を振り回すのだ。

去年一年間かけて、私は大きな人になった。
周りは、私ではなく、私の成績功績の味方になった。
誰もが紙上の私を見て、すごいと言った。
そして、私のことを話すときは、必ず最初に私の軌跡に触れるのだった。くすんだ私の記憶には、多忙な日々と家族との思い出、離れていった友の背中だけがぐるぐると巻かれている。



2.あのさ

目の前を歩く長い髪をした優等生。
生真面目にしばってある髪は、鋭く地面に向いている。

彼女は、海外に行くらしい。

堂々として、唯一無二の華。全校生徒がその名を知り、顔を知る。
しかし、彼女は美しくは見えない。むしろ、とても失礼だが、やつれて見える。口角が上がっているものの、目は深刻そうに見える。

「やっほー、俐樹。」
「あぁ」
「昨日のさ、聞いたか。」
「ん?」
「やっぱ、馬鹿なんだなお前。」
「は?どしたん急に」
「いや急じゃないだろ、だってお前さ。蓮…」
「あーーー。もう興味ないから。」

こいつもやつれている。
部活も辞めやがって。ずっと一緒にサッカーして来たのに、そのイツメンからも抜けて、もうよくわからない。(こうして俺がちょっかいかけてるような構図になってるし。)また、最近気になる人ができたとか。どうしたんだよ、なあ。

あのさ、間森、お前のこと好きだったってよ。ずっと。

馬鹿。お前のせいで、あの子がどれほど傷ついただろう。今はもう、二年前の原型、どこにも残っていやしないけど、二人とも。



3.伝聞

「間森 蓮那」
しばらく会っていない。が、二軒先に住んでて、幼馴染のはずだ。
最近、学校で話題になってるんだ、「海外大学からオファーが来た県内初の高校生」だって。知らない間に、どんどん距離が離れていく気がする。

…って
「「おはよう」」

何年振りだろう?でも、何も。何にも僕らは変わらない。
一緒に過ごした日々が長いから?
普通に1日が始まった…のではなかった。


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