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【映画評】ケヴィン・レイノルズ監督『ロビン・フッド』(Robin Hood: Prince of Thieves, 1991)。

 この度のノッティンガム代官はKKKめいた騎士団を率いて地方自治を私し、あまつさえリチャード獅子心王の従姉妹と結婚して、その息子をイングランド王として即位させようと画策する野心家だ。実は、この悪代官の背後には千里眼の「魔女」がいて…。
 と、本作は一方では狂信的なカトリックの危うさを仄めかす。他方、これに対するロビン・フッド(中道カトリック)はといえば、何とモーガン・フリーマン扮するムーア人ムスリムを参謀として従えている。『騎士道百科図鑑』はこの対立構造に第一次湾岸戦争の影を見ているが、それは兎も角、コスナー=ロビンはかかる「多様性」の中で右往左往するばかりなのだ。
 本作でタイトル・ロールを演じたケビン・コスナーに対する同時代評価はといえば、堂々のラジー賞受賞。しかし、このロビン・フッド映画の失敗は、コスナーただ一人の責任というよりは、映画史——剣劇ジャンルの衰退——がもたらした必然であろう。
 尚、本作は、最後の最後に『ロビンとマリアン』(1976)でロビン・フッドを演じたショーン・コネリーがリチャード王として登場しロビンとマリアンの結婚を寿ぐ(上図)。だが、『ロビンとマリアン』でロビンも獅子心も既に死んでいるのだから、ここでのコネリーは二重に幽霊的で、やはり往年の剣劇ジャンル復活の不可能性をこそ本作は告げていると言えよう。

〈引用文献〉コンスタンス・B・ブシャード『騎士道百科図鑑』堀越孝一監訳、悠書館、2011年。

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