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【覚書】L・フィッツハマン/C・M・ヘップワース監督『ローヴァーによる救出』(Rescued by Rover, 1905)

 コリー犬が主役のイギリス製短編レスキュー・フィルム(チェイス・フィルムのヴァリエーション)である。映画のなかの犬(あるいは馬、イルカ)はジョナサン・バートも指摘するように、「家族の喪失」を「全知の立場」から癒す存在だ。無論、本作は、犬、いや動物を主人公とした「物語映画」の嚆矢としても重要である。この後、動物映画は、映画史において主要な位置を占め続けるわけだ。バートはまた以下の様に言う。

 映画はモダニティーの中で動物が占める位置をテクノロジーがどのように動物を扱うかという問題の中で示す。動物は数多くの異なるショットに収められるが故に、これらを物語映画としてまとめ、成立させるためにはモンタージュ作業が非常に重要な意味を持ってくる。しかも動物には様々なサイズのものがおり、動きや動く速さも異なれば接近方法だって変わってくるのであり、その都度、技術の側は変化を強いられる。勢い、ストック映像が異なるプロットの映画において再利用される機会も増える。つまりは、同じ映像が様々な物語フィクション、とりわけ人間中心的なそれ、あるいは反物語に利用され、操作されるということだ(Burt 87)。

出典:Jonathan Burt, Animals in Film, Reaktion Books, 2002. 

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