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【映画評】ジョルジオ・フェローニ監督『炎の戦士ロビン・フッド』(L’Arciere di Fuoco, 1970)

 ジョルジオ・フェローニ監督とジュリアーノ・ジェンマの『荒野の1ドル銀貨』(1965)コンビによる、これは「マカロニ・ロビン・フッド映画」である。とはいえロビン・フッド物語の基本設定には忠実だし、役者陣は皆英語を話す――製作国は伊/仏/西だが、英語圏にも売ろうとしたということか(あれ、IMDbではイタリア語となっているな、言語、再確認しておきます)。
 ジュリアーノ・ジェンマのロビン・フッドは確かに運動神経抜群でバク転すらこなすのだが、彼がモデルとしているはずのダグラス・フェアバンクスやエロール・フリンが得意としていた「壁よじ登り」は遂に見せず。してみるとロビン映画における垂直方向の運動は、戦前期ハリウッドのスタジオ・システム下でこそ十全に展開されたものなのかもしれない。
 ここで特筆すべきはマリアンだ。彼女はサクソン王の末裔として登場する。ロビン映画多しといえども、ノルマン対サクソンの弓競技大会に「女だてら」に参加したのは本作のマリアン(シルヴィア・ディオニシオ)だけだろう。彼女と好対照をなすのが王弟ジョン侯で、母から習った刺繍を趣味とする優男である。
 つまり、為政者による「圧制」という主題は本作では後退している。むしろ、ジェンマ=ロビンの方が、ドイツに捕われているリチャード獅子心王の身代金を払うべく集金作業に奔走する(集めた金は貧しい民にはビタ一文払われず)。ロビンとマリアンは帰還した王に結婚を承諾してもらい、めでたしめでたし(って、おいおい)。

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