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【覚書】アルフレッド・ヒッチコック監督『裏窓』(Rear Window, 1954)

 James Naremoreの『裏窓』論によれば、車椅子に縛られているJ・スチュワートは、殆ど身動きがとれず、それ故、専ら、当時の映画に支配的だった「リアクション・ショット」の中に収まっている。これに対し、対岸のアパートの窓に見え隠れする助演陣の演技はといえば、全身を使う、大げさな、ニッケルオディオン・スタイルに遡っている。前者をアップ、後者をロングで捉え、両者を交互に提示するカメラは、新旧の演技の構造上の相違を浮き彫りにし、銀幕上の修辞法の歴史的展開に言及するに至る。固より、幕の様に上がって映画の始まりを告げる裏窓のブラインド、オペラ・グラスの様なスチュワートの双眼鏡、それに舞台装置然とした対岸のアパートが、『裏窓』が「演劇」と「映画」の相克を生きる映画であることを告げていた。
 Naremoreは、畢竟、「役者」の演技の集大成として当作を見る。

出典:James Naremore, Acting in the Cinema, University of California Press, 1988, No. 3089-3339 (Kindle) 

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