【映画評】シドニー・ポラック監督『トッツィー Tootsie 』(1982)
シドニー・ポラックはハリウッド的な映画作りから距離を取る「ニューヨーク派」の映画監督の一人である。これまでシドニー・ポワチエを主演に据えた『いのちの紐』(65)で黒人問題を、バーブラ・ストライサンドを起用した『追憶』(73)で赤狩り問題を扱ったことなどから「社会派」とも称される。だが、アカデミー賞を初めとする映画賞をいくつも受賞しているわりには、ポラックの「作家」としての評価は高いとはいえない。実際、彼が2008年に死亡した際、『キネマ旬報』(2008年8月上旬号)の組んだ