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23.同級生を通して知っていく"普通の生活"

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母もAV女優だった事を知って、ものすごくショックだった。
でも父がAV男優だった事は知っていたけど、「なんか嫌だな」くらいの感想で、その差が何故なのかは今でもわからない。
正直、母の事は嫌いで、父の事は好きだった。
その気持ちのせいかもしれないし、全く別の原因があるのかもしれない。
大人になった今でもわからない。

そんな事、誰にも言えずに私は今まで通りの生活を送っていた。
誰かに話をしたかったけれど、こんな話は誰にもできなかった。

両親は私に友達を作るようにしつこく言ったけれど、何を話せばいいのかわからなかったし、面倒だった。
でも、家が500mほど離れている近所のユキちゃんは
「一緒に登下校しよう」
と言ってくれた。
放課後も遊びに誘ってくれて、ユキちゃんの家には度々お邪魔した。
ユキちゃんにはお兄さんと妹がいて、悪態をつきながらも仲良しなのが伝わってきて淋しかった。
ユキちゃんのお母さんは、近所だしうちの話を知らないはずはない。
でも、家の事や両親の事は一度も聞いてこなかった。
そんな優しさが、逆に私をいたたまれなくさせた。

ユキちゃんは兄妹もいて、お友達も多かった。
近所の他の友達を誘って遊んだり、一緒に過ごすのは疎外感があった。
私だけが”新入り”で、小学校一年生にして周りは幼なじみのような関係だったから。

ユキちゃんは学校では恥ずかしがり屋で、すぐ真っ赤になってしまうのだけど、いつも私の手を引いてくれた。
”お姉ちゃん”でもあるから面倒見が良かったのかもしれないし、「近所だから」という理由で誰かに世話を焼くよう頼まれていたのかもしれない。

いつも挙動不審だったり、どうしていいのかわからない私に、きっとユキちゃんもさぞ困った事だろう。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

どんなに一緒にいても、楽しくても、いつも誰かの顔色を窺ってしまうので誰かと過ごすのはとても疲れた。
”話していい事”と”話してはいけない事”の線引きも難しかったし、それを間違えば怒られるのは私だし。

例えば
「従姉妹さんも一緒に住んでるの?どうして?」
という素朴な質問も、叔母が自殺だったため”話してはいけない事”だ。
「叔母は病死した」という事になっているし、
「なっちゃんのママは仕事でいないの?」
という質問は
「出張でいない事も多いの、自営業だから忙しいみたいで」
という設定を作っていた。
これに関しては、父に聞かれると怒られてしまう。
父はアダルト業界に誇りを持っているからだ。
「隠すような事はしていない、恥ずかしい事はない」
と、何度も私に詰め寄った。

だから、きっと近所の人たちに私の嘘はバレていただろう。
それも当時からわかっていたけど、嘘をつきたかった。
「裸で踊る仕事なの」なんて言ったところで理解されないだろうし、仕事の詳細について聞かれても困る。。
子供の頃は「自営業って?どんな業種なの?」とか聞かれなかった事は不幸中の幸いだった。

こんな嘘ばかりの生活で、普通の友人関係なんて作れるわけがないのだけど。
ユキちゃんを始め、近所の女の子は親切にしてくれたし、私に”普通の生活”を教えてくれたので感謝している。
マリオカートやケイドロ、リカちゃん人形やシルバニアファミリー。
ジェニーちゃんは私の家にもあったけれど、どうやって遊んでいいのか知らなかった。
誰かと遊ぶ事は、発見の連続だった。

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