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27.君の名は

前回はこちらから↓

話が少し前後するが、小学二年生のある日、クラスメイトの女の子たちがヒソヒソ話しているのが聞こえた。
「ねぇ聞いた?
朝子ちゃんまた男子を殴って泣かせたらしいよ・・・」
「うわ、怖いね・・・
まぁあの子本当に凶暴だからね、ゴリラだから近付かない方がいいよ」
私はたまたま聞こえてしまっただけなのだが、内容が強烈だっただけにこの噂は記憶に残った。
でもクラスに馴染む事ができていない私にとっては他人事だしな、と思っていたのだけど。

ある冬の日の体育の授業は、持久走だった。
マラソン大会の練習だ。
運動音痴な私にとってはとても辛い時間だった。
私は頑張っているつもりだけど、順位は58人中55位とビリみたいなもんだったし。
走り終えてゼェゼェと座りこんでいる私に、仁王立ちて話かけてきた女子は言った。
「へぇ、あんな遅いのに辛いんだ?
喋りながら走れば楽しくてもっと早く走れるかもよ?」

なんだこいつ。
っていうか誰だっけ?
いやでもちょっと今苦しくてそれどころじゃないんだわ。
「ははは・・・」
と笑ってごまかしてその場を立ち去った。

次の体育の授業もまた持久走だった。
最悪だ。
気が重くて足も重い・・・とノロノロ移動している私に、走って近付いてきたのは、前回失礼な事を言ってきた女子だった。
「一緒に走ろうって言ったよね?行こう!」
と手を繋いできた。
いや何を言ってるんだ。
っていうか君の名は。
そう思ってる間に「よーい、スタート!」とマラソンの火蓋は切られてしまった。

名も知れぬ女子は私の手を握って走った。
走ったっていうか、引っ張っていた。
遠くで先生が怒っている声が聞こえたけれど、私は彼女に引っ張られて意図せずどんどん進んでいく。
止まりたいけれど、止まったら危なそうで止まれなかったし、振りほどこうにもすごい力だったので振りほどけなかった。
私が混乱している間にも女子はスピードを上げながら話しかけてくる。
「去年も同じクラスだったよねー?
初めて話すね!
って聞こえてる?
あ、返事できないかw」
と勝手に喋って勝手に笑っていた。

そして最終コーナーに差し掛かった途端、
「ん~やっぱちょっと先にゴールしといていい?
ゴールで待ってるね!」
と、突然私の手を放した。
私はどんどん他の子にも抜かされたけれど、ゴールしたのは20位だった。
自分でも驚いた。

私の手を引っ張って走ってきた女子は
「11位だった~まぁ今日はいっか!次は二人で10位以内狙おうね!」
と笑いながら戻ってきた。
え、私もしかしてちょっと責められてる?
っていうか今度こそ聞く!!!
君の名は・・・?
「え、知らないで手繋いでたの?変な子~(笑)
私は朝子だよ!よろしくね」

終わった。
ゴリラって言われてたのコイツじゃん・・・
なぜだか私はゴリラ・・・いや、朝子ちゃんに目をつけられてしまったのである。


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