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愛犬と向き合うこと

別に犬に限った話ではないのだが、生き物を飼うってものすごく大変だ。
でもただその時可愛いからとか気軽な気持ちで飼うのは絶対にやめたほうがいい。
昆虫、トカゲ、ウサギ、インコ、犬、それぞれ感じる命の重みは違うかも知れないがみんな同じ命だ。
安易な気持ちで飼って後で捨てるくらいなら飼わないことが彼らにとっても好都合だしむしろそれこそ彼らに対する愛情だ。

私は大学生独り暮らしで大型犬一頭と猫一頭で一軒家で暮らしている。
なぜこんな状況になったかというと母親が生き物関係の仕事についていて元々母親と姉と住んでいたのだが二人とも仕事関係の事情でで引っ越したからだ。
その大型犬は私自身が飼いたいと望んで飼った犬なので当然私が面倒を見ている。
猫は別の事情で母親に頼まれて一緒に面倒を見ているのだ。

私の犬はもうすぐ9歳になるオス犬だ。
大型犬なのでもう結構な年寄りである。
一般的な大型犬の寿命は10年〜13年と言われているためあと1年ちょっとで寿命を迎えてしまってもおかしくないことになる。
彼は元々皮膚が弱く以前から病院に通っていて薬を処方してもらったり、頻繁にシャンプーをして皮膚を清潔に保つことでなんとか症状を抑えていた。
どんな症状かというと皮膚が膿んでしまったり、体から出てくる体液で服が汚れてしまったり悪臭を放ったりそれらが固まったりしてしまうのである。
現在でも朝晩薬を飲ませ、週に一回以上シャンプーを行なっている。
今は習慣になっているからなんてことないが大型犬を洗って乾かすだけだってかなり大変だ。
幸い彼は毛が短いので特別な手入れは必要なく泡立ちが悪いが比較的短時間で洗えて乾かすことができる。
毛が長かったらと思うと少しゾッとする。

彼は年を取るにつれて軽い痙攣から発作のような症状が現れ始めた。
なのでかかりつけの動物病院でてんかんの薬を処方してもらって様子を見ていた。
ある時、彼のお腹が若干張っている気がした。
今まで犬と一緒に暮らしてきた経験からお腹にガスが溜まって亡くなってしまったことがあり、心配になったので写メを送って母親に電話で相談した。
それから徐々に症状は悪化しお腹がパンパンに膨れ、散歩に行っても途中で立ち止まってしまったりといつものように動くことができなくなってしまった。
さらに食欲もなく大好きだったドライのドックフードもほとんど食べることができなかった。
その時私は大学3年で特別忙しくはなかったが主に授業とアルバイトがあった。
そんな中、車の免許と軽自動車があったため彼をなんとか車に乗せていつもの動物病院へ運んだ。
お腹に腹水が溜まってしまっていると言われた。
お腹に水が溜まってしまう病気はあまり良くないらしく、深刻な病気が疑われた。
検査をしてもらったほうがいいとのことだ。
その動物病院はほとんど一人で病院を開業しており比較的小さな病院のため大型犬を検査をすることができなかったのだ。
お腹に水を溜めないようにするため利尿剤等の薬を処方してもらった。
利尿剤を飲ませた直後はほとんど自分で排尿をコントロールできない様子で部屋で漏らしてしまったりふとした時に尿が漏れてしまうようで彼に全く落ち度はないのだが多忙な時やバイト帰りなどはしんどい時があった。
恥ずかしながら犬に感情をぶつけてしまうこともしばしばあった。
しばらく薬を飲ませた様子を見てみたがほとんど改善は見られず、利尿剤の効き目も徐々に薄れていった。
母親との相談の下、やはり一回検査をしてもらったほうがいいという意見にまとまり検査をしてもらうことにした。
そこの動物病院では検査を行うことはできないが大きな病院を紹介できると告げられた。
そこでいくつかの病院を紹介してもらい近場で評価の高い動物病院を選ぶことにした。
そこは完全紹介制でかかりつけの獣医師の仲介でやっと行くことができる病院だ。
さらに予約制であるため、そこから病院につれて行くまでにおよそ2週間程度待たなくてはならなかった。
すでに正常に歩いたりフードを食べることができない状態だったのでその時はかなり大変な思いをした。
散歩もできる限り近所で済ませ、ご飯は母親に缶詰やパウチを送ってもらいなんとか食べさせることができた。
あるいは鶏肉やササミを茹でて与えることもあった。
より肉肉しいものが好ましいらしく完全にフードのみでは口をつけなくなってしまった。
いつも上がれていた段差を上がることができないこともあった。

なんとか病院に行くまでの期間をのりきり、やっと紹介してもらった病院に連れて行くことができた。
紹介してもらった動物病院は割高な病院だが評価も高くより高度な医療体制が整っており信頼性の高い病院であった。
最初に大型犬ということもあり検査をするだけでも10万はかかると言われた。
ある程度高額になるのを承知で来ていたが念の為母親に相談し、改めて検査をしてもらうことに決めた。
午前中に予約していたため来院後すぐに診てもらうことができたが身体が大きいため検査に苦戦し当初の終了時刻よりも大幅に延長し帰る頃には18時近くになっていたのを記憶している。
途中経過で呼ばれた際には抜き取ってもらった水を見せてもらいかなりの量だと思ったが完全には抜ききれずまだ多くの腹水が残っているようだ。
それは苦しいに決まっている。
検査の結果としては心臓の状態が悪いらしくうまくポンプの働きができないことから血液の循環がうまくできずに腹水が溜まったり発作が起こったりしてしまうという。
なので新たに心臓の動きをサポートしてもらう薬を出してもらった。
利尿剤は処置としては間違っていなかったのだが予想以上に体重が重く、途中で気効き目が薄くなったのは薬の量が足りなかったからのようだ。
結局、検査と薬代で20万近くかかることになった。
今でも薬を飲ませたりしながら経過をみている。

日々排尿の制御ができなかったり、食べる量が減ったりするのをみて衰えを感じている。
今は大学の単位もとり終わり就活もないため暇人だが。それでも予想外のことばかりで大変だ。
様子を見たりこまめに排尿させたりしなければならないため泊まりはもちろん、長時間の外出も控えなければならない。
今は皮膚の薬と心臓の薬、そして利尿剤の3種類飲ませているが、特に心臓の薬は命に関わるため確実に飲んだか確認しなければならない。
食欲がない時は薬もそのままなので時には喉に押し込んで飲ませることもある。
バイトなどで外出する前にそれらを行う必要がある。
暇人の私でさえこんなに大変な思いをしているのだ。
老犬の世話というのはそれだけ労力がいるのである。
自分の問題で悩んでいる時に犬のことまで考えなければならないこともかなりしんどいものでそんな時に予想外のことが起こるとイライラしたりどうしたらいいのかわからなくなる。
しかし犬は何も悪くないのでなんとか受け入れて世話を焼いてやるしかない。
犬を飼うとはそういうことなのだ。
だから独りで寂しいからと言って安易に飼うのは決してお勧めできない。
必ず困った時に助けてくれる家族や配偶者が必要だ。
そうでないと自分が体調の悪い時、死んだ時、誰がその犬を面倒を見るのか。
そうしてとり残された犬たちは新しい飼い手が見つからなければ殺処分されることも少なくない。
自分の生活や時間面、経済面の余裕、いざというときの世話の代役、これら全て揃った上で飼うことをお勧めする。
何も飼わなくても動物と触れ合うことはできる。
どうしても飼いたいのであれば必ずやってくる死に際のことまで考えなければならない。
病気になれば病院まで運ばなければならない。
先にも述べたように検査だけで何十万もかかることもある。
薬代だけだって無視できない。
ご飯の好みが変わればそれまでの金額では済まない。
可愛いだけでは犬を飼うことはできない。
余裕がないなら飼わないのが賢明な判断だ。

それでも犬は多くのことを教えてくれるし、時に笑わせてくれることもある。
飼うことになったのであれば短い時間なのだからたくさん可愛がってやるべきだ。
彼らの死から目を背ける人間は決して飼ってはならない。
自分が望んで飼った犬だ。
残りの時間、精一杯可愛がってやりたいと思う。
これまで感情的になってしまうこともあったがその分もっと可愛がってやりたいと思う。
これから彼と向き合いできるだけ多くの時間を注ぎたいと思う。
できたら死ぬ前にこの家に来て幸せだったと思ってもらいたい。
最近、そんなことを考えた。

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