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【バーナム 人心操作の修辞学】1836年3月2日新聞

<再び、例のジョイス・ヘスのほら話>
手紙の開封、放火、窃盗から公道での強盗に至るさまざまな犯罪で、犯人が裁判所で審理され、有罪判決が下され、収監されるまでの進行の中で、良心ある人々にあっては自分が犯してしまった横暴な違法行為に対して呵責の念に苛まれるのはごく自然なことである。
最近ハーレムで亡くなった黒人老女のネリーおばさんをジョイス・ヘスと称して展示して市民を欺いたペテンを我々が暴露した。このことに対して『サン』紙の編集者がわれわれに浴びせた下品で非紳士的な言葉は、この種の不幸なる感情によるものである。我々は彼らの発言には口出しはしない。
『ニューヨーク・サン』の方々は自らを刑務所行きとなるように行動しているものであり、そのような良識の欠如は、その住処には十分である。我々はただ、我々が主張したことの信憑性を以下のように証明することで満足しており、それ以上は市民の方々のご意見に委ねたい。
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ハーレム、一八三六年二月二十九日。
ベネット殿
ジョイス・ヘスの解剖についてあなたの説明を拝読しました。まったくおかしな話です。ジョイス・ヘスと偽っていた女性は、尊敬できる黒人老女でこの近くの家に一人で住んでおり、最近亡くなったことを私は存じております。彼女は街に連れて行かれ医者に引き渡されて見世物にされました。もし、詳しいことがお知りになりたければ、近々その地域に行きますので詳細をお話します。敬具。
ジョン・P・トンプソン
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編集長殿
『ニューヨーク・サン』はひどいデマを流しました。そうでないすれば、医師たちが『ニューヨーク・サン』を騙したのです。加えて、コウモリ男のロック氏は別のデマで市民を欺きました。
ロジャーズ医師が解剖した黒人老女はハーレムに住むネリーおばさんという貧しい女性であったことを私は知っています。私は外にでて彼女をよく見かけました。彼女を全米に連れまわし、春が来たらすぐに引き戻すつもりだった男のことも私は知っています。彼女はあまりに早く死んでしまったのですが。
本件について何かあればご返信します。敬具。ピーター・マッカーテイ
J.G.ベネット殿。二月二十七日、サリバン・ストリート
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『ニューヨーク・ヘラルド』一八三六年三月二日号

Newyork Herald Mar.2 1836

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