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ぼくのお地蔵さま


あるところに

ちいさなちいさなお地蔵さまがいました

このお地蔵さまは不思議なことに

自由に動き回れるのです

でも、お地蔵さまの存在を知る人も

動く姿を見た人もいません

だって

お地蔵さまはみんなが寝静まった頃

動き出すのですから

とても小さいので 暗い夜道では

気づかれることはありません

どれくらい小さいのかですって?

手の平にちょこんと乗るほどです

ね、分からないでしょ?

ある夜のこと

いつものようにお地蔵さまが歩いていると

お地蔵さまと同じ大きさのボールが転がって来ました

「はて?このボールは誰のかの?」

お地蔵さまは 転がってきたボールを

体全体でしっかり受け止めると

辺りを見渡しました

すると

「あの、、、、」

そこには小学生の男の子が

「おや?君はわたしが見えるのかい?」

「う、うん、、、小さなお地蔵さま」

「ほほう それはそれは、それよりこんな時間に何をしておる?1人じゃ危ないぞ」

「あ、、うん、、僕はいつも1人だから平気」

「なんと? 家には誰もおらぬのか?」

「お母さんと弟がいるけど、お母さんは仕事で疲れてるし弟はまだ小さいから」

「お父さんは?」

「死んじゃったんだ事故で」

「それは大変であったのぅ 1人でこんな時間にボールで遊んでおるのか?友達は?」

「いるよ、でも、、みんな習い事とか忙しいから学校以外で遊ぶことはないんだ。お父さんが生きてた頃はいつもお父さんが一緒にキャッチボールしてくれてたんだけど、、、」

「ほれ!」

「うわ!!!お地蔵さま!いきなり危ないよ」

「ハッハッハ!すまぬ、すまぬ」

「お地蔵さま、その小さな体でよくボールを勢いよく投げれるね」

「なぁに、こんなもの朝飯前じゃ!ほれ!」

バン!!!

「よーし、いくよ!お地蔵さま!」

「ほい!ほれほれまだまだいくぞよ!」

どのくらいの時間が経ったでしょうか

「おお、そろそろ帰らねばの 私も動けなくなる時間じゃ」

「お地蔵さま、僕の手の平に乗って!」

「なんと?」

「遊んでくれたお礼 僕が送るよ」

「ほほう!これはよきかな」

「またね!お地蔵さま」

男の子が小さな祠にそっと置くと

お地蔵さまはみるみるうちに硬く冷たいお地蔵さまに変わりました

それから来る日も来る日も

男の子とお地蔵さまはキャチボールをして遊びました

ある日、男の子が

「お地蔵さま、僕ね野球チームに入ったんだ」

「ほう!それは良かったではないか」

「うん!だからね、お地蔵さま、これから僕は毎日野球の練習で忙しくなるんだ、、だから、、」

「分かっておる それでいいんじゃ 君は君が1番好きな事、得意なことを、どんどん伸ばして行くがよい 私はずっと応援しておるぞ」

「ありがとう!お地蔵さま」

「おや!いかん、いかん、今日はいつもより長い時間遊んでしまったようじゃ さて、そろそろ帰ろう 日が昇ると 私は動けなくなってしまう」

男の子はいつものように、お地蔵さまを手の平に乗せて祠へ向かいました

辺りは徐々に明るくなってきました

祠についた男の子は 驚きました

そこにあるはずの祠が見当たりません

「お地蔵さま?」

手の平に乗っていたお地蔵さまの姿もありません

その時

男の子にしか分からない温もりを感じました

そして男の子は

「頑張るよ!見ててね!」

そう言ってボールをしっかりと握り、空に向かって持ち上げました

        おしまい



最後までお付き合い下さりありがとうございます😌
久しぶりにnoteを始めた頃のように、私の独特(下手)な絵は無しで、お話しだけ書きました😆

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