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遺された財産、国が管理:相続不動産国庫帰属制度の解説

みなさん、こんにちは。
行政書士の黒澤正人です。
本日は、2023年から制度化されている相続不動産の国庫帰属制度について解説をしてまいります。

相続が発生した際に不動産などの財産をどのように扱うかは、遺族にとって重要な問題です。しかし、相続人が不明である場合や、相続人が財産の相続を放棄した場合、その不動産はどのように扱われるのでしょうか? ここで重要な役割を果たすのが「相続不動産国庫帰属制度」です。この制度について、その背景、意義、そして具体的な手続きの流れについて解説します。


背景と意義

不動産国庫帰属制度は、相続人がいない、または相続人全員が相続を放棄した場合に、その不動産が国に帰属するというものです。この制度の主な目的は、放置された不動産による社会的な問題や、行政の混乱を防ぐことにあります。不動産が適切に管理されず、荒廃することで地域社会に悪影響を及ぼすことを避けるため、国が責任を持ってこれらの不動産を管理するわけです。もしご自身のふるさとにて、不要な土地を相続する場合には利用も検討できますがデメリットもいくつかありますので注意する必要があります。

手続きの流れ

  1. 申立者の確認:まず、申立人の資格を確認します。国庫帰属を希望する土地を相続か遺贈にて相続人(申立人)が入手していること、そして単独で所有していることが必要です。共有している場合は、全員で申立することで申請可能ですが、遠方に住んでいたり考えがわからなかったりすると申請作業を行うのが大変です。複数相続人がいる場合は、あらかじめ意思確認をしておくとよいでしょう。

  2. 土地の確認:そもそも申請できない土地があります。たとえば、建物が建っていたり、墓地やため池に供されていたりする場合です。また、他人の権利主体となっている場合も行うことができませんので、まずは土地の調査をしてみましょう。

  3. 国庫帰属申立て:単独で相続している場合に一人で申立てる場合と、共有者全員で申立てる場合のほかに、相続人が1人もいない場合または全員が相続を放棄した場合には、市町村が不動産の国庫帰属を申し立てます。申立て先は各地域の法務局となります。

  4. 法務大臣(法務局)の審査:法務局が申立てを審査し、不動産が国の管理下に入るか否かを決定します。この際に、事務員が実際に現地調査も行い土地の現況を確認します。以下のような土地では、申立てが却下されてしまう可能性があります。たとえば、がけがあったり車や大きな石が放置されていて処理に多額の費用がかかってしまう場合です。

  5. 負担金の納付:無事に申立てが認められたら、最後に申立人が10年分の土地管理費を納めます。原則として20万円と定められていますが、土地の用途が異なっていたり広さに応じて詳細な金額が定められておりますので確認が必要です。100万円を超えるケースもあるようです。

社会的意義

国庫帰属が決定された不動産は、国または指定された地方公共団体が管理し、公共の利益のために利用されることが多いです。この制度により、放置されることなく、不動産が公共の利益に活用される機会が増えます。また、税収の確保や、地域の活性化にも寄与する可能性があります。不動産の有効活用は、地域社会全体の資産としての価値を高めることにも繋がります。

まとめ

相続不動産国庫帰属制度は、相続人が不在または放棄した場合に、その不動産を国が責任を持って管理し、公共の利益のために活用するための重要な制度です。
ただ、負担金を納付する必要があることや、そもそも要件が厳しすぎるためにまだ浸透しているとは言えない制度です。昨年から始まり令和6年3月31日時点での申立て件数は1905件で、帰属が認められているのは248件です。審査を待っているという土地もあるでしょうが、引き続き状況は見守る必要がありそうです。
所持し続けることで、固定資産税がかかりますし国に引き取ってもらう場合にもメリットだけでなくデメリットも存在していると言えます。
所持している、あるいは所持することになるであろう土地について、今後どうしていくのがベターなのか、ぜひご家族で話し合ってみましょう。

身近な相談から複雑な手続きまで、くろさわ行政書士法務事務所までお問合せください。

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