ジンるいし:昼間
ある小さな島の上で、男たちが万歳をしている。
しかし、その中には女もいるようである。皆、裸であった。
万歳、万歳の声が鳴り響く。女の多くはこれを嘆き、また、男の中にも、泣き崩れる者がいる。
彼らは、美しく死ぬことを選んだ。自分たちにとって美しいと思うものを選んだ。
島は沈んでいく。なおも、男たちは万歳をしている。
このままでは、島は永遠に海の藻屑となるだろう。右を見れば、民主主義の実現を目指している。左を見れば、文化の発展を目指している。
今の世で、強い国は、学問が盛んな国である。芸術が隆盛な国である。なぜなら、学問芸術は、豊かでなければできないのだ。貧しい国は、学問芸術よりも、もっと命に関わる問題に当たらなければならない。
豊かな国は、金がある国。金がある国は、人がいる国。人がいる国は、子供が多く生まれる国。子供が多く生まれる国は、女が子供を産める国。
気づかないのだ。考えようともしないのだ。それよりも、彼らにとって美しいものを選んだのだ。
万歳の声は地を震わせ、それを最後に、島はもはや目に見えない。
芸術は沈んだ。学問も沈んだ。脳も沈んだ。人も沈んだ。あるのは、馬鹿みたいな美しさだけ。変な美しさだけ。誰も美しいと思わない、土くれだけ。
僕は、万歳が正しいとは思わない。そもそも、美しい死などは、ないのである。生きるに勝る死など存在しないのである。美しく死ぬ、と当人が思っていても、大半は、皆それをくだらなく思っているのだから、どうしても生を選ぶべきなのだ。
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