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その日の鰻は

こないだ。土用の鰻の日でしたが
食べました?
はい、鰻。

私、予約したんです。
人生で初めて。鰻重。
ちょっと色々事情があって
予約をしなければいけない
ことになって、それが6月の話。

予約の手続きをしてくれた
サービスカウンターのハキハキした
明るい印象の年配の女性のかたが

「この日が土用の鰻の日ですよ」って
教えてくれて「あ、じゃあその日に
受け取りで」って控えをしっかり
財布に入れた6月。

我が家では鰻、食べられるの
私と息子だけなのでミニ鰻重を
2人分予約。

そしてあっという間にこないだ
土用の鰻の日を迎えたわけです。
ああ、今日は受け取りに行かないと。

まだ予約手続きの段階でシフトが
わからなかったから仕事の日で
あることも想定して
夕方の時刻に設定。

予約した鰻を、前日すでに
受け取ったパートさんが
「鰻、食べた?」と聞いてきた。

「今日受け取りなんです」
素直にそう答えると少しだけ
渋い表情を、見せる。

聞くと、ちょっといい値段の鰻を
そのパートさんは予約してた。
だが、味のほうは彼女の期待のハードルを
越えなかったらしい。

「あ、でも生臭くなかったよ」
意味のないフォローである。

え、その値段より下のミニ鰻重の
味はどうなのか。
受け取る楽しみ激減じゃないか。
(しょうがなく予約したとしても)

いやでも。正直、わたしはグルメ舌
ではないから、案外「おいしいね」
息子と笑顔でそう言い合えるのでは。

そして仕事が終わり、さあ受け取りに
いこうか。けれど次の日休みだった
私はある誘惑が頭によぎる。

「本屋にいこう」

最近覗いてなかった。
鰻重を手にしてブラブラ本屋をうろつく
わけにはいかない。

なあに、まだ夕方の時間帯。
ほんのちょっと。ほんの少し
覗くだけ。

けれど私は忘れてた。
本屋は時間軸を狂わせる場所であること。

あるテーマに沿った書籍を選ぶのに時間が
かかったのもひとつの原因であるが
そこから数珠繋ぎで

「そういえばあの本」「前、時間なくて見れなかった」「お、この表紙いいなあ」

なんて具合に誘われる、誘われる。
(はい、じぶんの意志の弱さです)

そのとき。スマホが震えだした。
予約したサービスカウンターの番号が
表示されている…。

私は慌てて時刻を確認した…。
えっ、もうこんな時間?

予約した時間よりだいぶ過ぎている…。

急いで通話ボタンを押して謝った。
「すみません、鰻ですよね?」
「そうなんですー。お預かりしていますが、あのいつごろー?」
「いま、いますぐに取りにいきます」

会計を素早く済ませ、急ぎ足でサービスカウンターに向かう。

無事にミニ鰻重を、受け取れた。
笑顔で対応してくれたスタッフに
ひたすら感謝…ほんとにすみませんでした。

私からこうもあっさり理性や時間概念を
奪うとは…本屋恐ろしい…。
(いや、自己管理能力の問題?)

それで、肝心のお味は…
まあまあ、美味しかったです。
それより驚いたのが、ごはんが
酢飯だったこと。

鰻重の王道は、酢飯なのか?
誰か教えてほしい。

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もしよろしければまた、お立ち寄りを。
真夜中のカフェ、でした…。

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