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7 倒産しないことが最大の弱点 ~つぶれないことの功罪~

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 何度も言いますが、これは、フィクションです。

 「1 地方公務員は、覚悟がいる ~会費とサービスの関係~」でも書きましたが、地方公務員の本質は、みんながやりたくない仕事を、税という会費をもらって行う雑用係です。
 みんなのやりたくない仕事だけど、必要な仕事です。だから、やり手がいなかったり、やるためのお金がなかったら、困ります。
 ですから、地方公共団体は、倒産という概念がありません。「財政再建団体」という概念はありますが、これも、税などの自前の財源を当てて行う単独事業ができなくなったり、事業をやるために新たな借金ができなかったり、職員の給料も下がったりしますが、団体自体が潰れて解散するとか、全員解雇されるとか、そういうことはなく、国の管理下で、必要な仕事を粛々とやる団体になります。そうした意味では、倒産とは少し違う概念です。
 倒産しないことは、知事や職員にとってみれば、とってもいいことです。しかも、職員は身分保障もあつい。信じられないくらいあついです。これについては、また、別の機会に。
 倒産しないメリットを一番享受するのは知事かもしれません。例えば、社長である知事がどんなにめちゃくちゃな政策を実施しても、倒産することはありません。通常は、予算を組みますが、歳入歳出のバランスが取れないと組めません。どんなに野放図な経営をしたくても、できない仕組みになっているのです。そして、地方公共団体は、国のように、赤字だからその分を借金して埋める、つまり赤字国債のような借金ができない仕組みになっています。その制約のもとで、歳出で何に力を入れて実施していくのかは、少し裁量があります。
 七側県では、”桃色”知事が、「未事故の改善」を掲げて、あらゆる分野で、「未事故」という概念を取り入れることになりました。女性の未事故、子どもの未事故、企業の未事故など、考えうるあらゆる分野で「未事故の改善」を施策に入れ込め!って大号令がかかり、(交通安全対策とは、何が違うんだろうと思いつつも)計画という計画に、「未事故の改善」という概念を盛り込みました。
 また、「未事故の改善」を進めるための事業にも、一定の予算をつけて、「トラフィクセイフティー・ニューフロンティア」なる、得体の知れない施策にも多額の予算を注ぎ込んでいます。やっている人間も何をやっているのかわからないのではないかと思います。
 こんなめちゃくちゃなことをして、県民の理解が全く得られなくて、議会からも苦言を呈されても、倒産しません
 厳密に言うと、知事は、選挙で落選する可能性があります。知事は、この落選のリスクにどう対処するかという問題も残りますが、都道府県の場合は、そもそも住民が、都道府県の行政に全く関心がないため、相当なチョンボをしないと、落選ということにはなりません。(”桃色”知事は、過去にしていた不倫を週刊誌にすっぱ抜かれ、えげつないエロなメールも暴露されましたが、辞職もしていません。ツラの皮が厚いというのもありますが、住民の関心もないんですよ。)
 少し話はずれましたが、知事の野放図な行政運営は、団体の財政的な危機感とは、全く無縁だということです。
 民間の会社はどうでしょう。度を過ぎて、儲からない事業に投資をし続けたら、間違いなく倒産します。つまり、会社の運営状況は、株主や監査などからチェックを受けるととともに、最悪の場合は、資金がショートして、倒産し、会社自体が消滅するのです。多くの社員が路頭に迷うということになります。
 民間には当然ある倒産という危機が、地方公共団体にはないメリット(?)は、行政運営のあり方に、直結してきます。つまり、「コスト」という概念が生じてこないのです。企業であれば、利潤を最大化するために、コストの徹底的なカットを行います。ですから、経済的な効率よく仕事をするというのが、大命題になります。
 しかし、行政には、利潤という概念もなく、そして、それを最大化するためのコストの縮減という命題も出てこない。
 要は、コストという概念もないし、利益という数値目標としてのわかりやすいベンチマークもないので、その事業が本当に効果的なのか、判断もできない。そんな甘ちょろいことを都道府県はやっているのです。
 話があちこち行って恐縮ですが、総務省が地方公共団体に義務付けている事務に、公会計制度があります。民間企業であれば損益計算書、バランスシートなどの財務諸表があり、株主、投資家、取引先などから、財務の健全性がわかるように公開が義務付けられています。これに倣って、地方公共団体も、同じようなものを作りなさいと、複式簿記形式に倣っていろいろやっているのですが、そもそも、支出に制約もあって好き勝手に借金も出来ず、また、利益に相当するものが概念的にないのに、何を目指してこんな作業をしているのか、全く、不可解です。これこそ、総務省も含めて、コスト意識が全くない証拠です。予算の執行に関わる全職員がこの事務作業に従事をしているのに、その人件費等に見合う効果はない。こんな無駄な経費の垂れ流しはやめた方が良い。民間の経営に倣って、合理的に行政運営をしようということすら、全く、合理的でない。こんな、矛盾に満ちた、ダブルスタンダードな世界が、地方公共団体の世界です。
 したがって、職員にも、合理的とか、効率的とかを追求する機運は、全く芽生えてこない。上から言われたことをただひたすら愚直に実行する、これが大命題になるのです。
 倒産しないことは、地方公務員にとっては、とってもウェルカムですが、仕事の効率とか、費用の最小化とか、そう言った観点からは、全くそのベクトルが働かないので、住民の皆様にとっては、デメリットの方が大きいのではないでしょうか

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