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『爆烈刑事 鋼鉄の相棒編』第3話

人物表(第3話)

高木健吾(27)麻薬課の熱血刑事。昔気質のアナログ人間。
ロイ(製造5年)麻薬課に試験的に配属になったアンドロイド刑事。高木の新しい相棒。有能だが堅物。
パンチ(10)麻薬課のチンパンジー刑事。高木の元相棒。人として育てられた天才チンパンジー。人間の女好き。
山田(46)麻薬課の課長。動物嫌いでハイテク好き。嫌味たらしい。
ドクター中村(67)天才遺伝子学者。新型麻薬HGを開発した。多趣味。
ジャガー(28)〈ブラックファントム〉の女殺し屋。 
本田(25)科学班の研究員。チャラい。          


本文

〇八曲警察署・食堂
高木、昼食を食べている。
スマホの着信音が鳴り、電話に出る。
高木「ドクター中村の意識がもどった?」
 
〇警察病院・中村の個室(4F)・中
ベッドには、目を覚ましている中村が横になっている。
ドアを開けて、看護師に化けたジャガーが入ってくる。
ジャガー「ご気分はいかがですか?」
中村「まだ少しボーっとするな」
ジャガー「ではもう一度、お休みになったほうがよろしいですね」
次の瞬間、殺し屋の顔に豹変し、中村の首にグッと両手をかける。
 
〇同・4Fの廊下
高木とロイ、歩いている。
看護師に化けたジャガーとすれ違うが、特に気にせずに病室へむかう。
 
〇同・中村の個室(4F)・中
ドアを開けて、高木とロイが入ってくる。
ベッドの中村、目と口を見開いてすごい形相のまま微動だにしない。死んでいるようにしか見えない。
高木「すごい寝顔だな」
ロイ、中村の首に手を当て、
ロイ「息をしてません」
高木「(驚いて)口封じか!」
ハッと思い出して、
高木「さっきの看護婦!」
 
〇同・非常階段
高木とロイ、駆け下りている。
高木「さっきの今だ。まだ近くにいる!」
 
〇同・駐車場
高木とロイ、走りながら周囲を探っている。
高木「いた!」
少し先に、看護師姿のまま歩いているジャガーを見つける。
ジャガーも高木たちに気づき、あわてて駆け出す。
自分の乗用車のドアを開けて中からサブマシンガンを取り出し、高木たちにむかって容赦なく連射する。
高木、素早く車の陰に身を伏せる。
ロイもそばで身を伏せているが、様子がおかしい。
 *
──ロイのフラッシュバック
荒野のような土地で激しい戦闘が行われている。
上半身が人型、下半身が四輪車タイプのロボット兵士の小隊がマシンガンを連射しながら無感情に進撃している。(ターミネーター風)
そのうちの一体が、かつてのロイである。現在とは比較にならないほどの好戦的なデザインだが、顔立ちに面影が残っている。
ロイのそばにいた同じ部隊のロボット、被弾して火花を散らし、活動停止する。
ロイ、仲間の戦士に一瞬だけ動揺するも、進撃を止めることはない。
 *
ロイ、ハッと正気に戻る。
高木、懸命に拳銃で反撃している。
高木「なに、ボーっとしてんだ! ロボットのくせにビビってるのか?」
ロイ、右腕をショックガンに変形させてジャガーに狙いを定める。
だがそれより先に、ジャガーはドアを閉めて乗用車を発進させる。
ロイ「射程外です」
乗用車は猛スピードで走り去ってしまう。
 
〇八曲警察署・科学室(夕)
高木、科学班の研究員の本田(25)と話している。
本田「それでドクター中村は死んでないんすか?」
高木「ああ、首を絞められたと同時に仮死状態になって難を逃れたらしい」
本田「よくそんなことできたっすね」
高木「あいつ、古代インドヨガも趣味らしい。意識が戻るまでに少し時間がかかるらしいがな」
ロイの〈小屋〉のほうに目をむける。
大きさは簡易トイレほど。囲っているのが金網であるため、中が丸見えになっている。ロイは便器に似た形の充電器に腰かけ、スリープ状態になっている。
高木「今日、ドンパチの最中に様子がおかしかった。ロボットがビビるなんてことあるのか?」
本田「彼、元は軍事用ロボで、部隊が全滅して自分も捕虜になったんすよ。酷い拷問を受けて破壊されて。その頃に受けた心の傷が原因じゃないっすかねえ」
高木「そんな記憶、さっさと消せよ」
本田「戦後、メーカーに部品を回収されて、刑事ロボットにリサイクルされたわけっすけど、何度やっても戦場での記憶だけは完全に消去できないらしいんすよ。AIが高度にできすぎてる弊害すよね」

○マンション・高木の部屋・中(夜)
高木、ちゃぶ台でビールを飲みながらテレビを見ている。
高木「今日も一日、よく働いたなあ」
番組はいつもの報道バラエティである。
 *
女子アナ「動物園の人気者に何があったのでしょう」
画面がスタジオから、はりま動物園のチンパンジーの檻の前に切り替わる。だがそこにパンチの姿はない。
テレビのN「今日のお昼ごろ、踊るチンパンジーとして人気だったパンチ、オスの十歳が、飼育員の女性を襲いました。専門家によりますと、状況から見て明らかに交尾目的の凶行であるということです」
 *
高木、呆れ顔。
 
〇八曲警察署・課長室
高木、デスクの山田に懇願してる。
高木「悪気はないんです。彼なりの求愛行動をしただけで。今回も未遂ですし。慣れない動物園でストレスも溜まっていたんでしょう。殺処分だけは・・」
山田、最新のモバイルパソコンをいじりながら、
山田「また奴を引き取りたいという奇特な施設があってな。まったく運がいい。大温情だ」
高木「良かった。どういうとこですか?」
山田「実験動物として使われるんだよ。人類の役に立つんだから奴も本望だろう」
高木「あいつは天才チンパンジーだから、知能テストとかですよね?」
山田「違うみたいだぞ。ここがその施設だ」
モバイルパソコンの画面を高木のほうに見せる。
 *
電子版の週刊誌の告発記事。〝悲惨な動物実験の数々! 動物愛護団体からの猛抗議も、施設側は完全無視〟という見出し。脳を剥き出しにされて装置につながれている猿の無惨な写真がデカデカと掲載されている。
 *
高木「(ショック)!」
 
〇同・受付
後藤(40)と山下(23)が、受付の警官に何やら訴えている。二人とも地味な職人風。
受付の警官「わかりました。すぐに担当の者を呼びます」
 
〇同・麻薬捜査課・刑事室
高木と後藤が椅子に座って話している。
そばにロイと山下が立っている。
高木「HGの製造工場の場所を知ってる? ほんとですか?」
HG(鮮明な青色の錠剤)を写した記録写真を見せてみる。
高木「これでしたか?」
後藤「ええ、確かです」
山下「ニュースでも見たことあるし」
後藤「こいつと二人で工場の屋根の修理をしてたんですが、たまたま隙間から中の様子が見えたんですよ」
山下「人が大勢いて、大量にこれを作ってました。ええ、絶対に間違いありません!」
 
〇田園風景
田んぼの中に工場が立っている。  
 
〇謎の工場・全景
看板も窓もない殺風景な建物。
 
○同・前の道路
高木の他、大勢の制服警官が邸宅を取り囲んでいる。
高木「今度こそ、絶対に押さえてやる!」
ロイ、人差し指が変形して鍵の形になっている。出入口ドアの錠に差し込み、カチッと解錠する。
ロイ「開きました」
高木「よし、突入だ!」
高木とロイを先頭に、銃を構えた大勢の警官が突入する。
 
○同・中
勢いよく突入してきた高木とロイと銃を構えた大勢の警官たち、キョトンとしている。
中はガランとしていて人の姿もなく静まり返っているのだ。
高木「撤収した後か?」
ロイの聴覚センサーが、カチ…カチ…という秒針の音をキャッチする。
ロイ「罠です! みんな急いで外へ!」
高木「!」
次の瞬間、工場内が大爆発する。
煙が晴れると、全員が死ぬか重傷を負って床に倒れている惨状が現れる。
高木も意識はあるものの、ケガを負って動けない。額に血が滲んでいる。
何とかスマホを取り出し、
高木「全滅した。すぐに応援を・・」
入り口のドアから、後藤と山下が入ってくる。
惨状を見わたして、
後藤「大成功だな」
山下「ざまあみろ、サツども!」
裏社会の人間の凶悪な本性を露にする。〈ブラックファントム〉のメンバーだったのだ。
後藤「これでたっぷりボスから報酬をもらえるぞ」
ロイは無傷だが、うつ伏せの状態のまま固まっている。
その顔は恐怖に怯えている。
 *
──ロイのフラッシュバック。
荒野のような土地で激しい戦闘が行われている。
すごい威力の地雷で同じ部隊の仲間たちが吹き飛び、ロイも故障して倒れて動けなくなる。
 *
後藤、うつぶせの状態で固まっているロイを見つけて、
後藤「ん? なんだ、こいつは?」
山下「噂のロボット刑事デカじゃないですか?」
後藤「故障して動けないみたいだな。よし、ほんとに機械か確かめてやろう」
山下、ロイの上着とシャツを破り、上半身をはだけさせる。
後藤、大ぶりなサバイバルナイフを取り出し、ロイの胸を水平に切り裂いていく。
人工の肌が裂け、銀色の金属の表面が露出する。
山下「金属だ! やっぱりこいつ、ロボットですよ!」
 *
──ロイのフラッシュ。
汚い小屋の中。
捕虜にされているロイ、両手足を背後のロボット用ドックのようなものに拘束されている。
敵軍の人型ロボットが二体いる。そのうちの一体の右腕の先がバーナーになっており、ロイはそれで胸を焼き切られる拷問を受けている。
 *
ロイ、PTSDを発症し、正気とは思えない叫び声をあげる。
バッと立ち上がると、あっというまに後藤と山下を殴り倒す。
高木、起き上がれないまま、
高木「ロイ、落ち着け!」
だが耳には入らず、ロイはそのまま狂ったように外へ駆け出す。
 
〇同・前の道路
ロイが工場の出入口ドアから狂ったように駆け出してくる。
そのとたん、応援に駆けつけてきた警察の装甲車に跳ね飛ばされる。
ロイの身体はバラバラになり、部品が路上に散らばる。
高木、ヨロヨロと駆けつける。
高木「ロイ!」
ひざまずき、落ちているロイの頭部を抱き上げる。
高木「しっかりしろ! 傷は浅いぞ!」
ロイ「任務を・・まっとうできず、申し訳ございません」
機能停止しかけていて虫の息である。
高木「おい、死ぬな! いや、死ぬのか? よくわからん」
ロイ「次に生まれ変わるときは・・争いのない静かな生活を・・・」
目を閉じてガクッとなり、機能が停止する。
高木「(絶叫して)ローーイ!」


4話~結末までの展開

中村博士の意識が戻り、〈ブラックファントム〉のアジトが日本海の孤島にあると判明する。しかし政界の有力者の私有地となっており、上の判断で逮捕状が出ない。一方、技術者の本田の尽力で、再起不能だと思われたロイが魔改造されて復活する。
 熱い友情で結ばれた高木とロイは二人だけで孤島に乗り込み、謎のボスであった〝タナカ〟と対峙する。タナカの正体は、組織間の抗争で死亡した元マフィア幹部が、恐妻の意向でアンドロイドとして復活したものだった。激闘の末に二人はタナカを倒し、ついに〈ブラックファントム〉を壊滅に追いやるのだった。
 
 


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