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🎬信虎 感想

武田信玄により国から追放された武田信虎の最晩年から勝頼の死による武田家の滅亡を描く。

武田信虎は追放されるところまではいろいろな作品で描かれているのだが、その後のことはほとんど知らなかったのでそこは新鮮。
それにしても、信虎が歳を取っても信玄亡き後の武田家の当主に返り咲こうとする執着ぶりはもはや悪あがき。勝頼との初対面での評定を紛糾させてしまうくだりは滑稽さもあり、もはやお笑いムード。
しかし意外と信虎の判断のほうが正しく、長坂や跡部といったあまり表舞台で描かれたことのなかった奸臣がちゃんと出てくるのは『甲陽軍鑑』のエピソードをしっかり再現しているからか。

滅亡の危機に瀕した武田家を春日弾正忠が敵である織田・徳川と組み存続させることを提案し信虎がそれを支持するくだりにはリアリティがある。
武田家の危機にありながら織田徳川連合軍との合戦を主張する勝頼が超弩級のボンクラ扱いされているのは、勝頼ファンには痛々しくて見ていられないかもしれない。

映画としては『平成ガメラ』シリーズ、『大怪獣総攻撃』の金子修介監督がリアルな歴史劇をどう料理しているかが最大の焦点となる。合戦、ロケや道具類まで本物にこだわって作っていて、そこが魅力ではあるのだが副作用として見慣れて期待した迫力には欠けてしまい全体的には凡庸なムード。
ただ前述した『甲陽軍鑑』に書かれた武田家の最後の詳細には興味があったので、信虎目線とはいえ個人的には思った以上に楽しめた。

途中信虎が秘術を使うシーンは記録として残っているのかはわからないが、もはやオカルトの世界で爆笑するしかなかったが、それが柳沢吉保で回収されるオチは意外とおもしろく、うまく練られている気がした。
あと虎屋の羊羹まで信虎に絡める作り手のサービス精神には潔さすら感じた。

寺田農主演で、寺田ご本人はあまり好きではないらしいが、ムスカ大佐オマージュがあるのはラピュタファンにはうれしいはず。

大真面目に作られた歴史劇でありながら、妙な滑稽さで笑ってしまうヘンテコな雰囲気が終始漂うのは実際の歴史というものがそんなヘンテコだらけなものだという証明なのかもしれない。
見方によっては近年稀に見るトンデモ怪作であり、しかし不思議な魅力にあふれた快作。
"新"戦国時代劇の惹句は伊達ではなかった。

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