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🎬サバカン SABAKAN 感想

売れない小説家の久田は、ゴーストライターまでして食いつないでいる。
そんな久田がサバの缶詰を見ると思い出す小学生時代、一人の友だちと過ごした夏。久田は思い切ってそのことを小説に書くことにする。

主人公ヒサちゃん(久田)と父を亡くし貧しく暮らすタケちゃんこと竹本。
まるっきりバカ男子丸出しのヒサちゃんが、少しニヒルなタケちゃんと二人で遠くの島にイルカを見に行くことをキッカケに仲良くなる。

題名はタケちゃんが自宅に招いた友だちのヒサちゃんに供するサバの缶詰で作った「サバカン寿司」から。

二人の別れの言葉、「またね」に象徴される友情はいつまでも続くのか?

少年二人の友情と冒険物語だが、途中の出来事などはすでにたくさん語られてきた感があり、正直なところ新鮮味には乏しく思った。
ただ出色なのは、子どもたちから見た大人たちの存在。
ヒサちゃんの父でいつもランニングにトランクス姿で股間をかいて下品なネタを繰り出す竹原ピストル、男まさりで父を完全に尻にひいている母の尾野真千子、みかん泥棒常習のタケちゃんの最大の敵みかん農家の岩松了が実にいい。
子どもの目から見た当時の大人たちの姿が、とにかく愛おしい。
特に竹原ピストルは名演で、少年のヒサちゃんを抱きしめる姿は印象的ですばらしい。
映画は少年の友情を描いているのだが、出来上がった作品はなんとなくそこには重点がなく、むしろあの頃の、不完全で、だらしなくて、下品だけど限りなく愛にあふれた大人を描くことに成功しているような気がする。そして作り手も終始あんな大人に今自分はなれているだろうか?と自問自答しているように思えてならなかった。
いきなり高揚感が加速するラストは必見。それだけのために観る価値がある1本でした。

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