🎬タワーリング・インフェルノ 感想
「午前十時の映画祭」で観てきました。
今回は今までDVDやBlu-rayで何度も観てきた映画なので、思い出も含めていつもとは違う感じの感想を書いてみます。
すごく長いですが、よろしければお付き合いください。
この映画と私の出会い
『タワーリング・インフェルノ』と私の出会いはもう50年近くも前になります。
それまでは『東映まんがまつり』(これも大好きで楽しみでした!)にワクワクしていた私でしたが、『タワーリング・インフェルノ』でハリウッド映画の初洗礼を受けました。
正確にはその前に『燃えよドラゴン』を観てはいるのですが、あれは"ブルース・リーの映画"なので、自分にとってのニュアンスは少し違っていて、ハリウッドらしい映画は今作が初めてと言っていいと思います。
鑑賞後の感想は「うわーー!アメリカって映画にこんなにお金をかけるんだ!」というものでした。
それまでに日本の特撮もたくさん観てきてすごいとは思っていましたが、とにかくスケールの大きさではそれを超えていました。
スタジオではなく野外に巨大な「グラスタワー」のミニチュアを建てて本当に火をつけてしまう。初めて観たときは、本物のビルに火をつけてるんじゃないか?と疑うほどの迫力でした。
私とこの映画との出会いから50年近くが経過し、初めは田舎でも上映してくれるメジャーなハリウッド映画からはじまり、世界各国のミニシアター系映画などにも幅を広げたり、日本映画にも戻ったりしながら、ミーハーな感性の自分なりにたくさんの映画と出会うことができました。
少年時代の私に映画への入り口を作ってくれた『タワーリング・インフェルノ』が、私の「シニア割引」で初めて観た映画になった巡り合わせもある意味不思議で、感慨深い気持ちになりました。
オープニングの秀逸さ
オープニングは、まずヘリコプターのメインローターの大写し。
高層ビルとは無関係なショットにアレ?と思っていると海岸線を飛行するヘリコプターに並走する撮影に控えめな感じでジョン・ウィリアムズのメイン・テーマが被ってきます。
そして有名なスティーブ・マックイーンとポール・ニューマン二人のクレジットが現れます。
どちらを先にするかで作り手を悩ませたことは有名ですが、このクレジットだけで「マックイーンとニューマンが共演なんだ」と胸踊ります。
正直なところ、初めて観たときはこの二人の共演がそこまで大変なことだったとは知りませんでしたから、そこまでドキドキはしなかったんですが、その後あらためて知って観るとこのクレジットだけで圧倒される思いがしてきます。
そして印象的な映画のタイトルが登場します。
いよいよ始まるというワクワク感をメインテーマがさらに盛り上げます。
雲間から現れるゴールデン・ゲート・ブリッジから、それを凌駕するグラスタワーの全貌へと移動するカメラワークはすばらしいです。
グラスタワーがサンフランシスコで、すでにゴールデン・ゲート・ブリッジすら超えた存在であることを否応なく観るものに印象付けます。
二度と実現しない豪華なキャスティング
この映画のすごさはスケールの大きなデザスター描写なのは間違いないのですが、もう一つやはり忘れてはいけないのが豪華すぎるキャスティングではないでしょうか?
初見のときはわからなくて後で知ったんですが、俳優一人ひとりが主役級の人だらけ。
フェイ・ダナウェイ、ウィリアム・ホールデン、フレッド・アステア、ジェニファー・ジョーンズなどなど、そうそうたる俳優が次々に登場します。
ロバート・ヴォーンは『ナポレオン・ソロ』で日本のお茶の間でも有名でしたし、嫌味で身勝手なロジャー・シモンズ役のリチャード・チェンバレンだって演劇界では主役級の俳優さんです。チェンバレンは後に「将軍 SHŌGUN」の主役をして日本のファンを大いに喜ばせてくれました。
アステアはパーティーのシーンで少しだけステップを踏んでファンを喜ばせるサービスカットを見せてくれました。
この映画の製作費のほとんどがギャラだったのではないか?と思いたくなるほどの贅沢ですが、そこがたくさんの人が一同に会す当時のパニック大作映画の醍醐味だったと思います。
50年の時を越えてあらためて観ると
あらためて今大スクリーンで観てみると、ストーリー展開のスピードや演出などは今の映画にくらべるとやや緩慢だったり、ドギツいくらいにしたかっただろう描写も控えめに見えて刺激は少ないように思います。
確かに今の映画の迫力にはすさまじいものがあります。
例えば『プライベート・ライアン』のオマハ・ビーチの戦闘シーンなど、いまだに他の追随を許さないほどの迫力があります。
しかし、この映画の捨て身の火だるまファイヤースタントや本物のセット爆破など、今だとCGで一見派手だけど奥行きのない陳腐な表現にになってしまうことを全て実際にやって見せていることの凄さにはやはり驚いてしまいます。
いろいろなカットから、この頃の映画人がいかに工夫と努力を重ねて映画を作っていたのかに思いを馳せないわけにはいきませんでした。
大惨事の犯人は?そして英雄は?
映画の内容に戻りますが、この大惨事を引き起こしたのはいったい誰だったのでしょうか?
ダグ(ニューマン)の設計に従わず工事費をピンハネし最後まで嫌な人だったロジャー・シモンズが主犯格なのは間違いないのですが、ダンカン社長(ホールデン)が工事費を浮かせることを指示していたことも証言されています。
また、工事の監督を放り出して砂漠でバカンスを楽しんでいたダグも、無責任という意味では犯人の一人と言われても仕方ないかもしれません。
それらダンカン社に絡む人々とは対照的に、マックイーン演じるオハラハン隊長ら消防士の背景は何も語られることなく、ただ黙々と火災に対峙していきます。
ラストに殉職した何人もの消防士たちの亡骸に悲しげな視線を送り、ダグに皮肉にも聞こえる一言とこれからの希望を語り去っていくオハラハンはやはりこの映画のヒーローだと思います。
そして無名の消防士たちも。
この映画はスティーブ・マックイーン主演のフィルモグラフィの中では決して飛び抜けてすばらしい演技をした作品とは言えないと思いますが、マックイーンという存在感がキラ星のごとく集まった俳優の中でひときわ輝いた映画なのは間違いないと思います。
【まとめ】やはり超ド級の大作映画
当時絶対にあり得なかったワーナーとフォックスという二大映画会社が原作が被ったためという奇跡の理由で手を組み、マックイーンとニューマンががっぷり四つに組んでダブル主演を果たした今作の贅沢さはやはり映画史に残るものだと思います。
そして当時映画界を席巻した「パニック大作映画」ブームという空気感を知る上でも、一度は観ておく必要のある映画だと思います。
この映画を約50年の時を超えて大スクリーンで観れる幸せを、たくさんの人に味わってもらいたいと思いました。
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