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🎬モリコーネ 映画が恋した音楽家 感想

あまりに多くの、しかも多彩な仕事をしてきた"マエストロ"エンニオ・モリコーネ。
絶対音楽から異端と揶揄されていた映画音楽の地平を切り開き、現代の映画そのものの在り方を作り上げた一人として絶賛の声は止むことはない。

2時間30分にも及ぶ本人と証言者たちが語るモリコーネ像とその仕事なのだが、証言者たちの豪華な顔ぶれを見ただけでどれほどの人たちがモリコーネに影響を受けたのか見当がつかなくなる。

知っている音楽は『荒野の用心棒』あたりからなのだが、ウェスタンを手がけるまでの音楽家としてのモリコーネの葛藤なども描かれている。

今では信じられないかもしれないが、70年代後半まで映画音楽は映画の付属物程度に認識されていて、絶対音楽家だけでなくロックやポップスからも下に見られていた。
しかしモリコーネは絶対音楽で育まれたその才能と素養を駆使して"映画音楽"という異端の道なき道を切り開いていく。

途中モリコーネがスタンリー・キューブリックからのオファーを断らざるを得なかったことを後悔しているエピソードが挟まれ、もし実現していたら『時計じかけのオレンジ』がどんな映画になっていただろうか?と観られないのが残念になる。

エピソードの中では特にウェスタンのイメージが強かったセルジオ・レオーネとモリコーネが再びタッグを組み、全く違う印象の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を作り上げたエピソードは興味深い。自分もこの映画にはかなり驚かされたので記憶も生々しい。
あの映画の音楽あたりからモリコーネの音楽の方向性も変わっていったように思うのだが、違うだろうか?

その他、予想もしなかったブライアン・デ・パルマ監督と組んだ『アンタッチャブル』はマイフェイバリットだし、おそらく世界で一番愛されている映画音楽かもしれない『ニュー・シネマ・パラダイス』が紹介されるのもうれしい。

証言者たちの敬愛は尽きないが、モリコーネ自身はいたって謙虚で、ラストに語った作曲の姿勢は常に初心を忘れていない人の言葉で、映画音楽だけでなく全ての創作に携わる人への道標となる言葉のように思えた。

そしてこの映画を見終わって、紹介された映画をあらためて観てみたいと思う気持ちが湧き起こるのは当然なのだが、それ以上に『音楽:エンニオ・モリコーネ』とタイトルされた新作映画をやはり観たかったと願う衝動が抑えられなくもなっていた。
残念です。

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