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🎬人生の特等席 感想

※この感想には少しだけネタバレが含まれています。注意⚠️

メジャーリーグのベテランスカウトマンのガスは、避けることのできない老いとそれに伴う病気で球団からはスカウトとしてのキャリアの終わりを匂わされていた。
一人娘のミッキーは弁護士として昇進のかかった大切な仕事に携わっていたが、ガスを心配する球団の友人の頼みで地方にドラフト候補選手を見に行くガスの旅に同行することに。

親子だから素直になれない微妙な二人をとおして、親と子、仕事、そして人生で大切なものとは何かを極上のエンターテイメントで問いかける。

『許されざる者』からクリント・イーストウッドは人間の老いと時代の中で古びていく価値観の寂しさや誇りを自身の主演や監督作品で描くようになったが、『グラン・トリノ』の次に主演となったこの映画ではその傾向はより強くなっているように思った。

球団ではパソコンを使いこなし机上のデータで選手を分析するスカウトマンが幅を利かしていて、自分の目と耳だけを信じ選手の将来性までも見極めるガスはすでに前世代の遺物扱い。しかも目に障害が出始めたガスは、まともに選手の能力を見極めることもできなくなっている。
ミッキーは今は弁護士の道を歩んでいるが、子どもの頃はガスとスカウトのために全米をいっしょに旅した経験があり、ガスの目となり候補選手を見極めていく。

しかし二人はことあるごとにぶつかり、ケンカ別れを繰り返してしまう。
親にとって子はいつまでも子どもで、子ども自身はすでに自立しているのにいつまでも子ども扱いされることに素直になれないのは親子関係でよくあることで共感しかない。
お互いを何よりも大切に、そして誇りに思い合っているのに素直になれない親子のすれ違いが痛いほどわかるのは自分もそうだからかもしれない。
他球団のスカウトマンのジョニーがミッキーの恋人、そして二人のかすがいとして存在しているのは救われる。

ガスはその旅でスカウトマンとして候補選手の弱点をミッキーとともに見つけ、ドラフト指名を見送ることを球団に進言するのだが…
全てが裏目に出てしまいガスもミッキーも、ジョニーまでもが仕事を追われる危機的展開はすべてが絶望的に思えてしまう。
しかしミッキーの親に培われた経験値が、一気に危機をチャンスに逆転するラストは爽快の一言。

ヒューマンドラマのみに徹することなく、エンターテイメントとしてのおもしろさがこの映画の真骨頂なのだとばかりに、観ている側も最後にガツンとやられるラストは最高。
子どもが大人になったことを受け入れて祝福するガスの誇らしい背中は感動的過ぎる。

人の老いや親子のあり方を考えさせながら、それだけで終わらない映画のおもしろさを教えてくれる一級のエンターテイメント作品。

妻の墓石にビールをつぎながら静かに語りかけるイーストウッドの姿には涙。

途中のスカウトマン仲間とガスがかわす映画の小ネタは支離滅裂だがおもしろい。

弁護士事務所はざまあみろ!
そして最高のピーナッツボーイには大拍手!!
必見の快作です。

#映画感想文
#映画
#人生の特等席

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