第25話 サンタの雪はバニラの香り
「この不自然な雪景色。そしてこの雪の結晶の形」
「サンタの聖なる雪の世界か」
「だね」
「だから私は何度も、ネネちゃんがいるんだって言ってるよね」
ヴィクセンがルドルフに尋ね、そこにプランサーが割り込みました。
これでここにサンタが訪れていたことは、ほぼ確定的です。
プランサーが聞いたと言うジングルベルの音は、この場所で鳴らされたものでした。
ただしサンタ家に連なる者は、そこそこ人数がいたりします。
いったいどのサンタが来ていたのかまでは、わかりません。
なぜかプランサーは、それは「ネネ」だと決めつけているようですが。
ここで雪を観察していたヴィクセンが、気付いたことを話し出します。
それは、どのサンタなのかを特定するための重要なヒントでした。
「この雪が、甘い香りの正体だね。バニラみたいな香りがする」
「お菓子に使うあのバニラか?」
「うん。でもこんな雪を降らせるサンタって、いったい誰かしら?」
「心当たりが全くないよな」
サンタの降らせる聖なる雪の結晶は、普通の雪とは異なる形をしています。
拡大して見ることさえ出来れば、判別は容易いことのようです。
そして雪の結晶は、それぞれ異なる特徴を持っています。
雪を降らせたサンタ本人の特性を、色濃く反映しているのです。
つまり誰の雪なのかを判別するための重要な要素になるわけです。
この雪の結晶の特徴は「バニラの淡い香り」でした。
ルドルフはもう一度サンタ全員の特徴を思い返してみますが、バニラに通じるサンタなんて思い当たりません。
すると先頭を歩いていたプランサーが振り返って、いきなり答えをぶち込んできました。
「ネネちゃんの大好物ってさ、バニラアイスだよね。毎日食べてたし」
そう言われて、ルドルフは昔のことを思い出しました。
確かにネネは「バニラアイスは、幸せの味がするから好き」と言っていたことがあります。
「いや、でもなプランサー、ネネがバニラアイスが好きだから、降らせる雪もバニラの香りになるって発想は、さすがにちょっと」
「ネネちゃん絶対ここにいるもん! だから探しに来たんだもん!」
「駄々っ子かよ」
「さぁ、急ぐよ! れっつらごー!」
プランサーは、ルドルフとヴィクセンの背中を押しながら、森の奥へと進んでいきます。
しばらく進むと、少し開けた場所に出ました。
そしてそこで、また信じられないものを発見することになります。
「おい、ちょっとマジか」
「何で、これがここにあるわけ?」
「わーーー きれい」
全員が一斉に見上げるそれは、巨大なサンタ・ツリーでした。
200年ほど前に全て消失してしまったはずの木が、目の前にあります。
誰かが天上界から新しいツリーの苗木を、わざわざこちらに持ち込んだとしか考えられません。
朝日に照らされたサンタ・ツリーの神秘的な輝きは美しく、しばらくトナカイの3名は我を忘れて見とれてしまうことになります。
さて、そろそろ夜が明け、朝がやって来る時間になりました。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
実はネネは、トナカイ達のすぐ近くにいるのですが・・・
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
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