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【短編】太陽の憂鬱

太陽は、自分が太陽でいることに飽き飽きしていた
自分が、発する熱で自分自身が熱いし、朝早く起きないといけないことも苦痛に感じていた
ああ、なんで、私は、太陽に生まれてきたんだろう
と、太陽は思った
太陽の大きなため息が聞こえる
太陽が、大きなため息をつくたびに、ぼうっと太陽の火力がますのが見える
憂鬱な気分を感じてため息をつくたびに、自分の体が更に熱くなるのも太陽は、うっとおしいと感じていた
ああ、月に生まれていたら、どんなによかっただろう
と、太陽は、ため息をつきながら、自分が月になった姿を想像した
ひんやりとした空気とムードのある暗い空を空想の世界にみて、太陽は、憧れのため息をもらした
しかし、いくら太陽が、月になりたいと思っても
太陽は、毎朝、世界の誰よりも早く起きて、東の空から空にのぼるという本能に抗うことはできずに特に望んではいない毎日のルーティンを飽き飽きしながら、そして、飽きもせずに繰り返していた
生まれた時から、ずっと、同じことを繰り返している
よくもこんなに同じことを続けられるものだと太陽は思った
太陽は、太陽自身が発する熱で、いつでもものすごく熱かった
だから、太陽のそばに近づけるものはいなかった
だから、太陽は、生まれてこのかた、自分以外の声を聞いたこともなかった
そんなことも太陽が、自分自身を好きになれない
と感じる一つの要因になっていた
太陽は、自分の真っ赤に発光する体を見ては恨めしいと感じていた
そして、それを思うたびに太陽は、孤独感を感じた
そんなある日のこと、太陽に今まで経験したことない事態が起こった
太陽は、その日、今まで一度も聞いたことのない音を聞いた
その音は、本当にかすかな音だったが、太陽は その音を聞き逃さなかった
なんの音だろう
と太陽は、不安な気持ちを感じながらも、どこかでワクワクする気持ちも感じていた
しばらくすると、太陽の目に一台のロケットが見えた
そんなことは初めてだった
ロケットが、太陽の周りをゆっくり、回るのが見える
太陽は、ジッとそのロケットに全神経を集中していた
しばらくすると、そのロケットの中から声が聞こえてきた
やっと、この目で、太陽を見ることができた
僕たちが、生きていけるのは太陽のおかげなんだ
太陽が、なければ、僕たちは、生まれてくることもなかったし、生き続けることもできない
僕たちの大切なものを、こんな近くで見れるなんて、なんて、幸せだろう
聞こえるかい?
この轟々と燃える音を
なんて、明るく赤く燃えているんだろう
そして、なんて、神々しいんだろう
と、ロケットの中の人たちは、太陽をこれ以上ないぐらいに称える言葉を次々に口にした
それを聴きながら、太陽は、今まで感じたことのない感情を感じていた
その日からも、太陽の生活は一ミリも変化はなかった
でも、太陽は、その日から、ため息をつくことは
なくなった

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