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【短編】闇の中で見つけたもの

真っ暗な闇が、どこまでも広がっているのが見える
真っ暗な闇が、そこにあるだけで、なんの音も聞こえてこない
真っ暗な闇ではあるが、どこか暖かさを感じる闇だった
ある日、どこまでも真っ暗な闇の中で、かすかな音が聞こえた
何もない真っ暗な闇の中に小さな星が生まれたのが見えた
聞こえたかすかな音は、星が生まれた瞬間の音だった
小さな星は、かすかな光を真っ暗な闇の中で精一杯放っていた
小さな星が放つかすかな光は、生まれてきた喜びを小さな星が感じているあかしだった
小さな星が、生まれたことに気がついたものは宇宙中探しても誰もいなかった
だから、闇の中に小さな星が生まれたことを知らせる者もいなかった
小さな星が生まれて、何億年という年月が流れた
そんなある日、地球という星の片隅にある高い塔から望遠鏡を覗いてる一人の男があった
その男は、毎日飽きもせず天文台で一人で空を 覗いていた
家族や周りの者は、ただ真っ暗な闇を毎晩、眺め続けている男のことを変人扱いしたが、男は、周りが、どう感じていても構わなかった
男は、毎晩、朝日が登るまで闇を眺めるという日課を飽きもせずに何十年も続けていた
男にとっては、それが、何より幸せだったし、男は、闇を眺めている時間がなによりも楽しいと感じていた
だから誰の声も男には聞こえなかったし、たとえ 聞こえたとしても気にならなかった
男が、毎晩、望遠鏡で闇を見続けて、50年と7日たったその日、男は、見慣れた闇の中に一つの白い点を見つけた
最初は、望遠鏡のレンズに汚れがついているのかと思い、男は、何度も何度もレンズを布で拭いたりしてみた
しかし、望遠鏡から見える白い点は消えることはなかった
それからは、男は、毎晩、闇の中の白い点を見続けた
突然、男の目の前に現れた白い点は何なのだろう
と、男は、その事ばかりを考えて過ごした
しかし、いくら考えても答えは出なかった
ある日、男は、意を決して森に住む魔法使いのところにいってみる事にした
森の魔法使いは、村の人々から恐れられていた
そして、村人の中で森の魔法使いに会ったことのある者はいなかった
森にある魔法使いの館に近づく者は全て魔法によって捕らえられて殺されるという噂もあった
そして、男も子供の頃からその話を聞いて育った
だから、男も一度も森の奥へと行ったことはなかった
しかし、男は、毎晩見ている白い点が何であるのか、どうしても知りたいと感じていた
そして、その答えを知っているのは、森の魔法使い以外にいないと感じていた
そして、どうしても知りたいという思いは魔法使いへの恐怖や不安を超えていった
ある朝、男は森へと出かけた
誰も会ったことない森の魔法使いが、本当にいるのかすら、あやうい状況だったが、男は、知りたいという好奇心で暗い森の中を突き進んでいった
2時間ほど、あてもなく森の中を歩いていると、突然、男の目の前に大きな黒い館が現れた
男が、館の門の前に立つと 
ギーッ
と音を立てて館の門が開く音が聞こえた
誰もいないのに、そして、男がこの館に来たことをどこかで見ているかのように、勝手に門は開いた
男は、怖いようなワクワクするような不思議な感覚を感じた
そして、男は、意を決して門の中へと入っていった
しばらく歩くと、館の玄関の扉が見えてきた
そして、門と同じように男が扉に近づくと一人でに扉が 開いた
男は、今度は迷いを感じることはなく扉の中へと
入っていった
男が、扉を抜けると男の背後で
バタン
と扉が大きな音をたてて閉まるのが 聞こえた
真っ暗な館の廊下を歩いていくと廊下のランプが
まるで男を誘導するように男が 進むごとにともり
先を照らした
男は、そのランプの光りを頼りに館の中を歩いていった
しばらくすると、鉄でできたまっくろい頑丈な 扉が現れた
そして、男がその扉に近づくと、またしても一人でにその扉は、今度は音もなくスーッと開いた
男は、怖いと感じる暇もなく、その鉄の扉の奥へと入っていった
「お前は誰だ」
という甲高い声が聞こえた
その声がする方を見ると、真鍮の鳥籠の中に緑色のオウムがいた
声の主はそのオウムだった
「なんだ、オウムか」
と、男が少し安堵感を感じていると、奥の方から 低いしわがれた声が聞こえた
男が驚いて見ると、そこには幾何学模様のローブを来た老人が1人たっていた
「私は、お前が何をしにここにきたのか 
全てを知っている」
と、その老人は言った
男は、その老人が森の魔法使いであることを悟った
男は、森の魔法使いが、みんなが恐れような人ではないことを一瞬で感じた
そして、森の魔法使いは、男に 
お前が見つけたのは、星というものだと告げた
新しい誰も知らない生まれたての星をお前は、お前だけは発見したのだ
と教えてくれた
そして、森の魔法使いは、魔法使いの館の図書館に男を連れていき、天文学についての知識を余すことなく、男に教えてくれた
男は、魔法使いの話に夢中になった
そして、時間を忘れて魔法使いからたくさんの話を聞いた
男は、こんなに楽しいと感じたことがないぐらい
夢中で魔法使いから伝えられる知識を貪欲に吸収して行った
そして、男は、魔法使いの弟子になった
そして、男は見つけた小さな星に
踊り子
という名前をつけた
そして、それからも男は、毎晩、夜になると踊り子を見つめ続けた

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