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ひとりで散歩に出るたび
人知れず立ち寄る場所がある
それは路傍の小さなお寺

通りかかるような順路を選んだり
迂回して寄り道したりする
ひそかな祈りを捧げるために

コロナによって隔てられた年月
それが永遠の別れを意味したことを
だれが予見し得ただろう

2021年6月29日
その人は幽冥を隔てる深い河をわたり
向こう岸に至ってしまった
手のとどかぬところへ
病のすえに たったひとりで

いま小さな寺だけが
その人とつながる唯一の場所
少なくとも私にとって・・・
私にとって、の意味しかなくても

これからも
想いが込み上げるたび
想い出が募るたび
逢いに行くだろう
偲びに行くだろう

祈りが通じて 深き河がついには干上がり
徒渉がかなうその日が来るまで

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Deep river, my home is over Jordan,
Deep river, Lord,
I want to cross over into campground.

深い河 わがふるさとはヨルダン川の彼方
深い河 ああ主よ
われ河をわたり 集いの地へ赴かん


Oh don't you want to go to that gospel feast,
That promis'd land where all is peace?
Oh deep river, Lord,
I want to cross over into campground.

いざ旅立たん あの福音の宴へ
安息に満ちた約束の場所へ
深い河 ああ主よ
われ河をわたり 集いの地へ赴かん

 
    (黒人霊歌「深き河」、筆者改訳)

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