見出し画像

『水曜日のダウンタウン』とAIWAのラジカセの思い出

水曜日のダウンタウン『清春の新曲、全て書き起こせるまで脱出できない生活』とても面白かったです。

私も昔は、歌詞を知るためにカセットテープを何度も巻き戻してはノートに書くという作業をよくやっていたので、とても他人事とは思えませんでした。お2人がラジカセをようやく手に入れられた時には心底ホッとしましたが、本当の戦いがそこから始まる事も分かっていました。

昔は今のように歌詞が気軽に手に入らなかったので、同じような経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか(^^)

清春さんでなくとも、耳で聞いた歌詞を書くという作業は本当に大変で、
 当時は10代だったので、聞き取れないに加え、言葉自体を知らないために正解にたどり着けず、聞こえるまま歌い続け、後に正解を知り「そうだったのか!」と感動する事が度々ありました。

しかし、きしたかのさんと同じように、自分の手で歌詞を書きだした曲というものには、今でも格別の思い入れがあります。

その中でも最も記憶に残っているのは、
杏里さんの名曲『思いきりアメリカン』です。

1982年に発売された杏里さんの10枚目のシングル『思いきりアメリカン』
(作詞:竜真知子・杏里 作曲:小林武史)は、「リベーラ」というコロンのCMに使われた楽曲です。彼との別れを決め、新たな自分になるべく1人サンタモニカへやってきた女性の心を軽やかに爽やかに歌い上げた名曲。
大好きな曲です。

杏里さんのスタイリッシュな歌声に乗せた、ポップでオシャレで爽やかな曲を聴きながら、自分も大人になったら1人でサンタモニカに行って彼にエアメール送るんだ!!と思っていたものです。

好きな曲は歌いたい。

しかし、当時はネットもスマホもない時代。
歌詞に関してはCDレンタル時に入っていた歌詞カードをコピーしたり書き写したりしない限りは、自力で聞き取るのみとなります。
頼るはAIWAのラジカセと自分の耳のみ。

という事で、歌詞の聞き取り開始。

水曜日のダウンタウンのきしたかのさんのように、ラジカセとにらめっこ。
歌詞の聞き取りは順調に進みましたが、1カ所だけどうしても聞き取る事ができない部分がありました。

それは2番の冒頭に出てくるワンフレーズ。

「ゆ~れる 〇〇〇~」


恐らく英語である事は分かるのですが、流暢な発音のため中学生の私にはヒアリングができず、その言葉が何を意味するのかが分かりません。

何度聞いても、「パ~ントリ~ヒ~」と聞こえます。
直前の一言だけを探るため、「再生」と「巻き戻し」を同時に押して
キュルルルル~~!となる方の手段を用いて何度も聞きます。
放送でも流れていたあの懐かしい巻き戻し音。
テープを傷めるからやらない方がいい、という噂は耳にしていましたが、やむをえない状況でした。

当時はまだお小遣いが少なくてノーマルテープでしたので、できるだけダメージを少なくして聞き取りたかったのですが、何度聞いても「パントリヒ」。

耳で聞き取る事に限界を感じ始めた時は、
「歌詞の世界観」に目を向け始めます。
この曲の主人公にはどんなものが見えていて、何を感じているのか??
想像し、理解し、研ぎ澄まし、生み出す。
そうやって真剣にAIWAのラジカセと向き合いました。

なので、極限状態のきしたかのさんが、登場した清春さんに「曲の世界観」について質問した気持ちがものすごく分かりました。
とても鋭い質問をされたなぁと思い、応援にも力が入りました。

彼女は、自分を抱きしめている時も違う誰かを思っていた彼との別れを決めて、サンタモニカへやってきた。ホテルの窓を開ければ広がる海。
彼にエアメールを送ったら、マリンブルーのパーカーを羽織って街へ。
新しい自分になる。私は気ままな風。
そう決めた彼女がサンタモニカで見た「ゆれるもの」とは。


彼女がそこで見たものとは一体…⁉︎


それがどうしても分かりません。

結局、何度聞いても、家族に聞いても分からず、私は聴こえるままに
「ゆ~れるパ~ントリヒ~」と歌う事にしました。
きっと今の私には分からない英単語なんだろう。
いつか知る時が来るかもしれない。

私は彼女がサンタモニカで見た「ゆれる何か」を想像しながら、家族が留守の時間を狙っては、ノートに鉛筆で書いた歌詞を見ながら、1人で孫の手をマイクにして歌いました。
一度、出かけていると思っていた母が帰ってきてしまいその姿を見られ、
「あら、それ、マイク??」とだけ言い残してドアを閉められ無茶苦茶に恥ずかしい思いをした事もありました。

それでも歌える事がとても嬉しく、私はAIWAラジカセと共に歌い続けました。

そんな「パントリヒ」の謎が解ける事となったのは、社会人生活1年目の事。長年の相棒であったAIWAのラジカセが遂に寿命を迎え、新たにMDコンポを購入したのがきっかけでした。
 当時画期的な機器として登場したMDコンポ。
購入したのはMD/CD/カセットテープを再生できるものでした。

それまで聴いていたカセットテープも再生できましたが、AIWAラジカセのボタン再生感にすっかり慣れていたため、どうしても巻き戻しなどがうまくいきません。加えて、MDの画期的な便利さ。

私はカセットへの未練を断ち切れませんでしたが、曲をどうしても聴きたかったので、テープは大切に保管し、よく聞くアルバムを新たにレンタルしてMDにダビングする作業に明け暮れる事となりました。

そうして杏里さんのアルバムを再びレンタル。
歌詞カードが付いている事もしっかり確認。
稀に「こちらの商品には歌詞カードがついておりません。」
というCDが存在し、家に帰ってからうなだれる事があるので、その確認だけは怠ってはいけません。

家に帰り、レンタルバッグを開封。
ドキドキしながら『思いきりアメリカン』のページへ。
そして遂に、彼女がサンタモニカで見たゆれるものの答えを知る時が訪れました。

その頃には、歌詞を完璧に暗記していましたが、2番の冒頭には、初めて見る英単語が書かれていました。
そこに書かれていたのは…

ゆれる Palm tree


パ…パルム…ツリー?
読み方が、分かりません('Д')
が、彼女が見たものは何かの「木」である事がその時点で分かりました。
が、パルム?とは一体??
※単語の意味をご存じの方は下記の☆部分まで読み飛ばして下さい。

私は急いで英和辞典を引きました。
そしてやっと、彼女がサンタモニカで見たある「木」の正体にたどり着いたのです。ページにたどり着き、「パントリヒ」の意味を知った時、私は思わず天を仰ぎました。

それは、もっと想像力を膨らませればたどり着けたかもしれない答えで、
この曲の世界観にとっては極めて重要なワードでした。

サンタモニカは海の街。
街に降り立った彼女が見た「ゆれる」もの。
それは日本では限られた暖かな地域でしか見かける事ができないもの。
ましてや雪国育ちの私はそれまで一度も見た事がなかったもの。

見上げれれば、美しいサンタモニカの風にゆられているもの。

答えは、

パントリヒ🟰Palm tree

パームツリー🟰ヤシの木 


☆前向きに生きていくと決めた彼女が見たのは、サンタモニカの風に揺られるヤシの木でした。

彼女が見た景色にようやくたどり着けたあの日の事は今でも鮮明に覚えています。

今でも、歌うたびにその日の事、そしてAIWAのラジカセの事を思い出します。
今なお、「パ〜ントリヒ~」と歌ってしまいますが、杏里さんが歌われている美しい英語を正確に聞き取っていますので、
発音は完璧であると自負しています。

「パントリヒ」が「パームツリー」である事を知ってからは、より気持ちが入り、前向きに生きる彼女の幸せを願う気持ちが強くなりました。ヤシの木を見上げながら、太陽に手をかざす眩しさを思い出した彼女に新たな出会いがありますように。と、心を込めて歌っています。

『思いきりアメリカン』

最近になって知りましたが、このタイトルは杏里さんがとある場所で飲んだコーヒーがとても薄くて「思いきりアメリカンだね。」と言った事がきっかけで曲のタイトルになったそうです(^^♪

作詞を共作されている竜真知子さんは、『あずさ2号』などの作詞で知られる方で、作曲はMr.Childrenなど多数のプロデュースで知られる小林武史さん。とっても素敵な曲なので、みなさんにもぜひ聴いて頂きたいです。

今回の企画、非常に大変だったかとは思いますが、清春さんの曲の世界が1つ1つ紐解かれていく様子は非常にドラマチックで、改めて聴いてみたいと思いました。

清春さんの歌の世界観と必死に向き合い、正解にたどり着いたきしたかのさんには、心からお疲れ様でしたと、おめでとうございますを伝えたいと思います。

先週の予告が気になって今週も見てしまいましたが、思わぬオチに驚きました('Д')間違い探し、歌詞の聞き取りよりも難しそうですがチャレンジしてみたいと思います。

そんな青春の日に思いをはせた、まだまだ雪の残る春分の日の昼下がり。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?