見出し画像

獅子は蟹の領域に立ち入る

睦はテキトーに仕事をしている…

そもそも、自分の人生はもう終わっているんだ。
美月姉さんが行方不明になり、もう9年
あの震災に巻き込まれたのなら
おそらくは…

「ムーア、ちょっといいか」
代表のバースさんに呼ばれ卓を離れる。
「どうしたんですか」
「ちょっと7番卓についてくれないか?
初回客だが、アレ、風呂屋だ」
ソープ嬢か。イヤだな…
「すでに、メッセンジャーとジェフが
KOされた。頼むぞ!」

「失礼します…ムーアです」
腕にタトゥー、派手だな…
「ねぇ、誰が座っていいって許可した」
「あ、失礼」腰をおろしかけたが
即座に立ち上がった。そこに
「おい!頭がたかいぞ!跪けよ!」
なんだこの女…跪き、指示通りに動く…
「虎って店名に惹かれたけど、猫だな
猫カフェの方がマシだねぇ」
「猫科がお好きなんですか」
「そうだねぇ気まぐれで自由なオス猫の首根っこを捕まえて、去勢するのに一時期ハマってたねぇ」
「ドSなんですね」
「キミはM❓」
「そうですね。振りまわされる毎日です」
酒が頭にかかる…
「はやく着替えてこいよ。酒臭いから
あと掃除と代わりの酒な」

つくづくクソみたいな仕事だ。
女のご機嫌取りをして…
たぶん初回荒らしだろう。
バースさんもあんなの粉かけたって
しょうがないだろ。
あの調子じゃ、あと3回はぶっかけてくるな…
7番卓に戻ると、中継ぎのアッチソンが
泣き顔でこちらを見る…
「お待たせしました」
「ナンバー1連れてこいって言ったけど
キミ本物❓」
「ナンバー1のムーアですが、正直なところ
1人のおかしな女が勝手に金を入れているだけなので、実力の方はちょっとですかね」
「フーン、いいね👍正直な言葉には
好感が持てるよ。それでそのおかしな女は
今日、来てるの❓」
「これから来ます。それまでの間になりますが
…」
「来たら教えてよ。その女の目の前で酒かけて
帰るからさ」
「それまでは楽しくやりましょう♪」
「なんで楽しそうなワケ❓」
「嫌いなんです。ハッキリ言って悪質なストーカーと変わりません。どこへ逃げても追いかけてくる。気味の悪いカニですね」
「カニ?」
「蟹座なんです。あの女の家族は
自分だけみたいで」
「へぇ、私は蟹座の女は好きだよ。
お隣さんが蟹座の女でね。毎日が楽しそうだよ」
「お客様は❓」
「獅子座だよ。オスを谷底に落として
二度と這い上がれないようにするのが
ルーティンでね」
「いいですね。お名前をお聞きしてもよいですか?」
「ホスト風情が身の程を弁えろよ。
私の名前を知ろうなんて7回人生やり直してからにしろよ」
「では帝とお呼びしてよろしいですか?」
「姫じゃなくて?」
「お客様は帝が相応しいです」
「気に入ったよ。今日は帰るよ。
蟹座の女にはよろしく、月末にまた来るよ」
「送ります」
なんで気に入ってんだよ
めんどくせぇ…

ホントにありがとうございます😭 さらによい作品を作り還元していきたいと思います♪