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第12回:匿名組合員の地位譲渡が禁止されている理由【日本型オペレーティングリース】

こんにちは、JOLアドバイザーです。

日本型オペレーティングリース事業(以下:リース事業)の出資契約書では、匿名組合員の地位を第三者へ譲渡する事が禁じられています。

しかし、冷静に考えるとこれっておかしいですよね。

何故ならリース事業に投資家が出資する際は、リース会社のSPCが代行出資した匿名組合員の地位を譲り受け当該リース事業に出資しているからです。

なぜ投資家だけが第三者への譲渡を禁じられなくてはいけないのでしょうか。

リース事業に出資したものの、将来事情が変わり早期に出資金を換価する必要が生じ、その為に匿名組合員の地位を第三者に売却したいと考える事があるかもしれません。

その場合も、本当に解約は不可能なのでしょうか。

そこで今回は、譲渡禁止されている理由と、匿名組合員の地位譲渡は本当に不可能なのかについてお話します。

※私について知りたい方は、下記の自己紹介をご覧ください。


1.譲渡が禁止されている理由

匿名組合契約書に譲渡禁止文言が含まれる理由を結論から申し上げると、脱税を防止する為です。

どうゆう事でしょうか。


仮に同一人物がオーナーのA社とB社が存在するとします。

A社は事業が成功しており毎期多額の当期利益を計上しているとします。

一方、B社は事業がうまくいかず、毎期当期損失を計上しています。

そこで、オーナーはA社でリース事業に出資する事にしました。

リース事業に出資した場合、一般的には出資の1年目と2年目に税務上の損金計上が可能となる為、A社は出資の1年目と2年目に損金を計上し、法人税を削減する事ができました。

そして、航空機や船舶がリース物件の場合、一般的には出資後9年目から10年目に投資家の出資金が償還され税務上の益金が計上されますが、このタイミングでオーナーがA社の有する匿名組合員の地位をB社に譲渡するとします。

するとリース事業で計上される益金はB社の赤字と相殺されます。

この様に黒字企業でリース事業に匿名組合出資を行い、資金の償還時に赤字企業に譲渡する事で、本来はリース事業の出資金償還時に課せられる法人税の約40%を吐き出さずに留保する事ができるのです。

このスキームが税務署から直接的に指摘されたケースを私が耳にした事はありませんが、このスキームによる譲渡事例見つかれば、明らかな脱税として投資家が指摘される可能性は極めて高いです。

リース会社としては、日本型オーペレーティングリースという商品をこの様な脱税手法に利用される事を防ぎ、商品としての健全性を保つ為にあえて匿名組合員の地位譲渡条件を投資家との契約に含めているのです。


2.倒産しそうな場合も換価できないのか

リース事業に出資した投資家の業績が悪化し、早急に資金が必要となった場合を想定します。

この様な事態に陥った場合、匿名組合の地位を第三者に売却し、早急に換価したいと考えるのが当然ですよね。

この様な場合においても譲渡ができないのかと言うと、リース会社に申し入れを行い、その事情を説明した上で、リース会社が匿名組合の地位譲渡もやむを得ないと判断した場合は譲渡可能です。

実際に、私も投資家からの申し出を受け、その理由を慎重に勘案した上で、譲渡の申し入れを受けた事があります。


3.匿名組合員の地位を譲渡する場合に得られる対価はいくらか

では、匿名組合員の地位を譲渡する場合、どの位の金額でその地位を譲渡する事が可能なのでしょうか。

もちろん、それは売り手と買い手のその時々の判断で変わる為、一概には言えないのですが、結論から申し上げると、出資時の金額から大幅にディスカウントした価格での売却となる事が一般的です。

その理由は、日本型オペレーティングリースというスキーム上、投資家出資金部分の償還は購入選択権が行使される、又は中古市場での物件売買がなされなくてはできない為、出資金回収の不確実性が残る為です。

買い手は、匿名組合員の地位を買い取ったとしても、税務上の損金メリットを享受できない事から、純粋なキャピタルゲイン狙いの投資としてその地位の購入可否を判断します。

その結果、出資金から大幅にディスカウントされた金額となってしまう事が一般的であり、肌感覚ではありますが、出資金の掛け目50%位の金額が平均ではないかと思われます。

4.譲渡先の探し方

譲渡先の探し方は①投資家が自ら探す、②リース会社に探してもらう、の2パターンが多いです。

一般的には②リース会社に探してもらう方法により譲渡先を見つけるケースが多いです。

この場合、投資家が自ら探すよりも、早期に譲渡先が見つかる可能性が高い反面、譲渡先は日本型オペレーティングリースの熟練投資家である可能性が高く、その買取額は足元を見られる可能性が高いです。


以上、今回は日本型オペレーティングリース事業における、匿名組合員の地位譲渡の可否についてのお話でした。


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