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アオアシを真面目に批評してみる

漫画に親しんでいる人ならば昨年はブルーイヤーだったことは薄々勘づいているでしょう。BLUE GIANT、アオアシ、ブルーピリオド 、ブルーロック、青のフラッグなどなど青い作品が脚光を浴びました。その中で今回は、アオアシを真面目に批評してみます。
最初に注意書きをしておくと、アオアシはおもしろい作品です。これは読んだ方がいいと思います。しかし、サッカー自体全然わからんという人にはおすすめできません。私自身はすごく好きな作品です。ただアオアシいいよねでは広がりがないので、批評してみます。批判と批評は別です。そこはググってください。

アオアシでは、Jユースという限られたレベルの高い環境をテーマにしています。ユース経験者は世間的に少なく、漫画の題材としても珍しい方です。閉鎖された現実世界にもある状況の中にフィクションを成立させているのが、この漫画のよくできたポイントです。人間知らないことは知りたいもので、興味がある人はどんどん引き込まれます。舞台設定としてのJユースはサッカー漫画としていい目の付け所だと思います。

さらに、プロ予備軍の中にひよっこのような葦人(主人公)を加えることで、漫画の王道である強く成長していく主人公をうまく演出しています。サッカー経験者以外は、葦人と同程度のサッカー理解度であり、葦人の成長を通して自分もサッカー脳が育ち、漫画としてだけでなくサッカーそのものについていつの間にか学習して考えるようになっているでしょう。このように主人公と同じペースで物語を読めるというのは、感情移入をしたり視線を同じくするという意味で効果的な手法であると言えます。

この作品のテーマは私が思うに考える葦です。そうなると気になるのが、タイトルが先か主人公が先かということです。
アオアシはまだ青い葦ともとれるし、青井葦人という主人公の名前ともリンクしています。アシ→脚→サッカーと連想できるし、アオ→青→侍ジャパンカラーというふうにも連想できます。言い得て妙なタイトルであることは間違いありません。うまい名付け方です。直接主人公の名前とタイトルをリンクさせるのは、主人公が誰であるかをはっきりさせる効果があります。タイトルの付け方は、大体その話のメインとなるゴールやその話を総称してつけたり、主人公の名前を絡めたりの3種類くらいだと思います。(ONE PIECEはゴールを、東京喰種は話を総称して、左ききのエレンは主人公の名前からなどなど)

しっかり主人公に俯瞰という能力を付してるところが漫画の大事な要素を満たしています。主人公意外にも突出したものがあるように描く方がもっとわかりやすいかと思います。しかし、能力ものではないので得意なポジションを読者に意識付けるくらいでもスポーツ漫画は十分です。あの選手は何がすごいのか、AとBでどう違うのか、高校とユースではメンタル意外にどう特徴があるのか、チームの戦術のカラーは何かなどをもう少し細かく描くともっと良くなると思います。

意外と下手だと感じたのがオノマトペです。
ワアアアという歓声の声がよく目立ちますが、単調かつ配置が極端で、台詞にするまでもないけど無音は寂しいとかここに空きスペースがあるから置いておこうという使い方が多いように思います。フォントを変えたり、独特の効果音をつけたりするともっと良くなると思います。
スポーツ漫画ですし、心情を描く部分が多いので必要あるなしが極端に別れているというのもそう見える原因かもしれません。

地味にこれいるか?と思うのが恋愛要素です。高校生なんだし当たり前っちゃ当たり前ですが、どっちのヒロインも主人公もどうしたいのかよくわからん状態が続いているので、話に緩急をつける意味ではいいですが、そこがダレるポイントになってはもったいないです。深堀りするのはヒロインの方じゃなくて、チームメイトの話を入れて話に緩急をつけた方が伏線も張りやすいような気もします。

セリフの吹き出しがいい味を出しています。単に直線で丸を書くのではなく、力がこもっているセリフは必ず太く囲われています。決意や説得力がすごく現れていて、この漫画の特徴とも言えるでしょう。

個人的に好きなキャラは望コーチです。目の前に1番がいる中で、自分なりにできうることをやっているというのがツボです。プレイヤーで好きなキャラは冨樫です。あの性格でDFというのがたまりません。高いプライドを捨てるべきところで捨てられる貪欲さを持っているのが好きです。

以上アオアシの個人的な批評でした。
こんなとこ見てるんやとかここ見直してみようと思ってくれたら幸いです。

道が交わればまたどこかで。


大体コーヒーか漫画に使います。もし万が一この若造にコーヒーや酒の1杯おごってやってもいいと思う方がいらっしゃるのなら嬉しい限りです。