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だから俳句を…|俳句修行日記

「ひとつひとつの言葉には、歴史に刻み込まれた物語がある」という、師匠の決まり文句にあくび。師匠カッとなって、「カツ!」とカミナリ。
 よく考えてみれば、日本語は変な言語だ。同音異義語であふれかえっているのに、言いたいことは単語で足りる。
 この背景には、『情』が司る社会があるのだと師匠は見ている。つまり、共感が情報交換の主役になっているがゆえの離れ業。

「共感を忘れ去った場所ではこうもいくまい。言葉は証文となって作為を呼び込み、他者を攻撃する武器へと変わる。このような世界における単語の位置付けは、個人の主張を構成する部品でしかない。」

 聞けば、本来の言葉には命が宿るのだという。感動という動力源をもとに、人と人との間を行き交い、物語を生み出していくものなのだと。ひとはそれを拾い集めて、情に報いる社会を運営していく。怠れば、言葉は破滅へ導く呪いとなる。

 師匠のたまう。「多くの言葉が行き交う現代でこそ、じっくりと言葉を噛みしめ、言葉を咀嚼する努力が必要なんぞ。」
「どのようにして?」と尋ねると、「俳句を詠んだらええんじゃよ」と一言。(つづく)