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創作大賞❚使用禁止道具-匿名

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(12525文字)

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「おい!」僕は七海ななみに向かって叫んだ。
彼女はむしゃむしゃとおやつを食べていた。
そこまでは別にどうでもいい。だが、問題なのは彼女が僕のおやつを食べているということだ。
「何?」彼女は無実の顔で僕を見てきた。僕はため息をついておやつを奪い返そうとした。
「ちょ!私のおやつ!」だが、僕は言い返した。「これは俺のだ!」「いいや、私の!」
ちょうどそこへお母さんが現れた。起きたばっかりなのか、妖気を感じているのかはわからないが、彼女の髪はめちゃくちゃ立ちまくっていた。
「何なの?うるさいんだけど」僕たちは同時に叫んだ。「「こいつが私・僕のおやつを盗もうとしてる!」」すると、お母さんの眉毛が六ミリほど上がった。七ミリだったかもしれない。
「私は誰にもおやつを上げてないけど?」僕たちはお互いを見て今の状況を理解した。「今は逃げるよ!」僕たちはおやつを机に置くと慌てて靴を履き、鬼に追いかけられながら飛び出した。
まだお母さんには七海の道具は見つかっていないだろうが、もう気付いているかもしれない。お母さんの勘は結構鋭いからだ。
僕たちは透明マントで隠れると、ため息をついた。「七海のせいだ」「いいや、蓮田れんたが悪い」「「そっちが私・僕をチクったからだ!」」すると、目の前から声がしてきた。
「あれ~?どうしてここら辺から二人の声がしてくるのかな~?」もうこれはばれると思ったので、僕たちは『変身バッジ』(どんな人にも虫にも動物にも、生きているものなら何にでもなれるバッジ)を使って雀に変わるつもりで、ゆっくりと進み、七海が指を鳴らした時と、同時に僕たちは雀に変わって飛んでいった。
できるだけ遠くに行くと、体をゆすってバッジを外した。だが、そこがどこなのかを考えていなかった。
適当な家の屋根だ。僕たちは飛び降りないといけなかった。ここで道具を使えば誰かにばれる可能性がある。
もう雀が人間に変身したということで見つかってるかもしれないが。だが、運よく見つかったのは唯一この道具を知っているハアナだった。
「そんな屋根上で何してるの…」彼女は僕たちに気づくとあきれて上がってきた。彼女は人間並み以上の体力と身体能力を持っていて、この塀を軽々と昇って屋上まで上がってきた。
「それで、いつ降りるつもり?」僕と七海はお互いを見て下を見た。「えっと…そうだった…」僕たちは飛び降りると、立ち上がった。このぐらいなら簡単に飛び降りることができる。
運よくこの家は一階建てだったので足が痛むことはなかった。
「そして、一応訊くけどどうしてあんなところにいたの???」彼女はめちゃくちゃ興味がありそうだった。
僕たちは仕方なく吐くことにした。「えっとその…色々とあってね…」やっぱり吐くことはやめた。
「まあ、それはいいけど、まさか雀とかカラスになって飛んできたとかはないよね」どうやら彼女はすべてを見ていたわけではないようだ。
まあ、それが正真正銘、事実のできことだったのだが。僕たちは時間を見ると、学校に行かないといけない時間だということが分かった。
だが、帰ればお母さんが待っている。とことこと変えるわけにはいかなかった。「どうにか物を取り寄せれる方法はある?」僕たちは結構やばいことに入っていた。
彼女は考えてから頷いた。「でも何かと入れ替えるする必要があるんだよね」すると、ハアナがあるところを指さした。近くにあった自由に使っていい駐車場を指さした。
「あそこならたくさんあるよ、入れ替えれるものが」僕は慌てて止めた。「いやいやいや、車はやばいでしょ!僕たちの家が爆発するよ!」彼女は吹き出した。
「爆発って…なんで家に爆弾とかが仕掛けてあるんだよ…しかもそうじゃなくてその下にあるものだよ」僕たちは目を少し落としてみた。
そこには灰色の石ころがゴロゴロとおいてあった。僕は彼女の言いたいことが分かった。「あれを粉々に割って一粒一粒使うってことだね!」「いや、違うよ」ハアナと七海はまるで僕が馬鹿かのようなべで見てきた。「割らずに使うんだよ、普通にね。まあ、また下校後には誤ればいいでしょ、もうちょっと怒りが収まったときに」
僕は仕方なく石ころを拾うと彼女の取り出した一枚の板に乗せた。「それじゃあ…」彼女がボタンを押すと、石ころが消えて、その代わりに七海のランドセルが現れた。
少し空中に現れたので地面に落ちて、中に入っていた教科書がばさりと音を立てた。
その次には僕のランドセルを送ってくると一番問題になったのは水だ。多分お母さんは準備をしていないだろうし、帰るわけにはいかなかった。
すると、ハアナがいい考えを取り出してきた。「私が君たちのお母さんの気をそらせておけばいいんじゃない?」
僕たちは彼女にお願いして一緒に歩いていった。彼女が先に家へと入っていって、気をそらしてくれていた。
僕たちが中に入ると、水筒を用意し始めた。ちょうどそこへ、ベランダからノックの音が聞こえてきた。
僕がベランダのドアを開けてみると、そこには一枚の紙が置いてあった。
その紙を拾ってみたが、何も書かれていなかった。
その裏を見てみると、あるマークが書いてあった。黒い吹き出しに目が書いてあった。
僕からすればこれは悪党のマークにしか見えない。「これ、知ってる」彼女はつぶやいた。
彼女が指を鳴らすと、あの『スマホ』が現れた。「やっぱり」彼女がスマホをひっくり返すと、そこには同じマークが書かれていた。
「これはこの道具を作る、前行ったことがある所の紋章だ」僕は目を丸くした。
「ってことは何かが起こったか、招待状か何か?」僕は首をかしげた。
すると、空から何かがまた振ってきた。「何だ?これ」僕が広げてみると、パーカーだった。
黒くて、肩のところには目が書いてあった。多分黒い吹き出しは黒いパーカーで消えているのだろう。
僕はそれを拾うと、着てみた。「結構似合うじゃない」彼女は上機嫌な声で言った。
僕は腕の紋章を見てみた。結構いけているかもしれない。
すると、今度は後ろで バサッ という音が聞こえてきた。
後ろを見てみると、そこには白いパーカーが落ちていた。
七海がそれを着てみると、結構似合っていた。
だが、そっちの方には目じゃなく、よくわからないマークが書いてあった。
「とりあえず外に出ようか、することは全部したし」僕たちが普通にドアから出ようとしたとき、外から声が聞こえてきた。
お母さんの声だ。どうやらこっちからは逃げられないらしい。
なので、僕たちは変身バッジと透明マントでその場を去った。

「危なかった~、もう少しで話題が切れるところだったよ」彼女は僕たちを見るとほっとした。
どうやら僕たちが透明マントを彼女の近くで外すと、彼女は学校に行かないといけないっていう理由を使って別れた。
「ありがとう、でもちょっと違うところに行かないといけないみたいだよ」七海はハアナに落ちてきた紙を見せた。
「というかその服、どこでゲットしたの?私も欲しいのに…」彼女はマスクを着けていたからどんな表情をしているのかわからなかった。
いつ見てもマスクとジャケットについたフードをつけている。マスクもジャケットも黒く、フードには猫耳が付いていて、彼女は夜の間、誰にも見つからずに動きやすそうだ。
「それで、違うところってまさかあそこじゃないよね?」彼女が考えていることと僕たちが考えていることは同じだ。「もちろんそこだよ、招待状らしきものが贈られたからね」
彼女は止めるかと思ったが、喜んでついてきた。理由は簡単、面白そうだったから、らしい。
七海によると、時間を変えることができるので、学校の心配はないらしい。
僕たちは僕の家に戻るわけにはいかなかったのでハアナの家へと向かった。
彼女の家は普通の家と同じだった。違ったことといえば二回で、少しだけ大きかっただけだ。
中にそろそろと入ってみると、誰もいなかった。「私一人だよ」彼女はくるりと回って歩き出した。
彼女は一人暮らしのようだ。「まあ、その話はあとでしようか。とりあえず今は私の部屋に来て」
僕たちはあの袋を前にした。「よし、それじゃあ入るよ」僕たちが飛び降りると、またあの通路に現れた。
そのまま滑り台のように降りていくと、前と同じ地面で跳ねた。
「ついた…」すると、さっそく警備員に出会った。
「…」その場所は数秒、沈黙に飛び込んだ。
僕は確実に追い出されるかと思いきや、彼はそのまま歩いていった。「こちらです」
僕たちがついていくと、その先にはあの男がいた。前に見た男だ。
「お前たち…」僕たちが彼の前に立つと、小尾氏を震わせた。「なぜ、帰ってきたのだ」
「なんでって…」僕たちはお互いを見た。「これが届いたから」七海が指を鳴らすと、あの招待状らしきものを取り出した。
だが、彼はそれを受け取って、何かを考えていた。「こんなものを渡した覚えは私にない」彼は首を振った。
「そんな…」僕は自分の耳を疑った。「だって!…」だが、七海が僕を止めた。「そうでしたか…それではお騒がせして、すみませんでした」
彼女が僕たちを連れて出ていこうとしたとき、彼が止めた。「ちょっと待て」僕たちが彼を見ると、彼は招待状の裏を見ていた。
僕たちが見た時は何も書いていなかったほうだ。
だが、彼の目を見ると、何かが書かれていたようだ。
「いったい誰にこれを渡された」彼に訊かれ、七海がすぐに答えた。「落ちていました」彼は何かを考えていた。
「何か書いているのですか?」七海がすぐに訊いた。「それの話なのだが…」彼は短くと説明をした。
そこには確かに文字が書かれていた。だが、彼しか見えない文字らしい。彼は特殊な目薬を一度つけたことがあるらしく、一部の違うペンで書かれた文字が読めるようになったらしい。
彼が読み上げると、こう書いてあった。
『お前へ
これをあいつに渡せてほしい。
まあ、ただの真っ白な紙にしか見えにだろうが、
招待状のように細工しておいた。
あいつに見せてくれ。
俺達は貴様が憎い。
だから貴様を狙わせてもらう。
それではさらばだ。
これを貴様が読んでから一以内に仕掛ける。

お前を憎む、匿名より』
彼は腕に力が入りすぎて、その板は壊れそうになった。
だが、板はびくともしなかった。
どうやらこの板は結また聴いてきた
「よし、分かった」彼は一度目を閉じ、また訊いてきた。「それで、ここまでどうやってきた」
僕は思い出した。「そういえばここまで警備員が連れてきました。無表情で連れてきました」
だが、彼はもう周りにはいなかった。「逃げたか…」彼は椅子をたたいた。
「直ちに見つけ出せ!」そこにいた人たちに命じたが、すぐに止めた。
「やっぱりやめだ」彼は立ち上がり、一人の前に立ちはだかった。
彼はにやりと笑って彼の腕をつかんだ。「お前、番号は何だ」
「二四二四番です」僕がその時、ほんの少しだけ吹き出してしまった。
七海も同じことを考えていた。二四二四番とは、僕たちが前に使った偽の番号だ。
だが、彼はすぐに彼を捕まえた。
連行されていく人は、ワーワーと叫んでいた。
「俺は雇われただけだ!何も知らない!」
だが、そんなことは僕にとってどうでもよかった。
「どうしてわかったんですか?彼が黒幕だよ」僕は不思議だったので訊いた。
「ああ、あれか?ないよ、そんなもの」僕たちの背中に寒気が走った。
「t、というと?」彼はにやりと笑みを浮かばせて答えた。「番号何て存在しないということだよ」
僕と七海はお互いを見た。「ということはあの時僕たちに訊いたのは…」前ここに来た時のことを思い出した。
「ああ、あれは私だよ」僕たちは彼を見た。「そ、そうだったんだ…」僕は苦笑いをした。
「それと、もう一つ聞きたいことがあります。できたらお名前を教えていただけますか?」
彼は忘れていた、というように慌てて名乗った。「私の名前は雄星だ。よろしく頼む」
彼が僕の肩を見ると、目をしかめた。「お前、そのパーカーはどこで手に入れたんだ?」
僕は自分のパーカーを見て答えた。「このパーカーはあのカードが出てきたとに空から落ちてきました」
彼は少し何かを考えていたが、そこで話は終わった。
「とりあえずこっちに来てくれ」僕たちは彼についていくと、この建物を出た。
前は窓から飛び降りたが、今回はちゃんとした出入り口から出た。
「こっちに来てくれ」僕たちが彼についていき、建物の裏側から周りを見てみるとそこは無限に広がる原っぱだった。
滑らかな風が吹き、明るい光が空高くから降ってきた。
僕は遠くを見てみると、ところどころに建物が立っていた。
「この世界には約一億人が住んでいる。だからところどころの場所には人が住んでいるんだ。ここが一番多い人口で、千人だ。お前たちのところでは何十万人もいるだろうが、私たちのところでは少し人が少なすぎてな」
彼は少し困ったように言った。
「そして、この世界にある町の中で一つがこのカードを君たちに送ったとしか考えられない」
すると、後ろから声がしてきた。
「ソノトオリダ」僕たちがさっと後ろを見ると、そこには一人の生き物がいた。
そのの顔にはにやりと笑う仮面がはめ込まれていて、人間ではないことが確実だ。
彼の足には三本しか指がないが、その爪は鋭く、どんなものでも切り裂けそうだ。
尻尾は太く、先はとがっていた。「誰だ!」僕が叫ぶと、彼は笑い出した。
「フ、フ、フ、。ワタシガダレダ、トイウノハオモシロイシツモンデスネ」彼の仮面に書かれた笑みが増した気がする。
「貴様!五体実験体ごたいじっけんたいナンバー〇一番まるいちばんか!」雄星は〇一番を睨んだ。「マサシクモ、デスガ、ワタシノナマエハナンバー〇ニバンダ」
僕は雄星を見た。「五体実験体とは何ですか?」彼は〇二番をにらみながら答えた。「あるマッドサイエンティストが作り上げた世界で一番の最高傑作、記憶力も人間の五倍だ。この世界には五体しかいないこととして、五体実験体といわれていた。あのマッドサイエンテストが言うにはまだ実験作品だったようなので」
「ヨクソコマデシッテイマスネ」彼はそのままくるりと向きを変えると、歩いていった。
「追うぞ!」僕と七海は『体力倍増薬』を使ったが、ハアナはそんなものを必要としないようだ。
彼の歩く速さはまるで僕たちを待っているかのようにゆっくりだった。
「どこに連れて行く気だ」おいながらも雄星が訊いた。「マモナクワカリマス」
彼が止まったところは原っぱのど真ん中だった。「ソレデハ、シタデマッテイマス」
すると、彼の下が消えた。彼はそのままその中へと落ちていった。
「な!?」そこまで駆けていったが、もうその時には元の地面に戻っていた。
彼は逃げていったのだろうか。少しそういう風には見えなかった。
ハアナはあることが心に引っかかっていた。
彼が最後に行った言葉、「ソレデハ、シタデマッテイマス」
という言葉だ。ということはどうにか下に降りる方法があるはずだ。
彼女はゴキブリのように地面を猛スピードで地面を這った。
すると、彼女は落ちていった。
壊れた地面に落ちて。
そのことに気づいたのは少し後だった。
「あれ?」初めに気づいたのは七海だ。
「ハアナがいない」僕たちが周りを見てみると、遠くに穴が開いていた。
僕たちが立っていた場所から百メートルほど先だった。
彼女は短時間で結構遠くまで隈なく探したようだ。
そこの目の前に行ってみると、底なしの穴にしか見えなかった。
「とりあえず飛び込もう…と言いたいところなのだが…」彼は僕たちを見た。
「君たちは少し無理そうだな」僕は強くうなずいた。必ずつぶれて死ぬだろう。
彼は首飾りを渡してくれた。「これは『蘇生首輪』だ。一度は死んでもまあ、生き返るだろう」
それを聞いて僕たちの背筋が凍った。「いやいやいや、生き返るとしても死にたくないですよ」
彼はにやりと笑った。「まあ、そうか。すまないな、私はこういうときに必要ないからこれしか持っていないのだよ」
僕は首を振った。「大丈夫です」ちょうどその時、風が吹き始めた。
「これはどうだろうか」七海が一枚の羽を取り出してきた。
「これを使えば羽のようにゆっくりと降りれるよ」だが、雄星が首を振った。
「それを使えばさようならだ。ついさっき、風が吹き出した。これも奴らの計画通りだろう」
僕たちは仕方なく『蘇生首輪』を使うことになった。
「ッーッ!」僕は怖すぎて声も出なくなっていた。

「死んだ気分はどうだったか?」下に降りると目の前に雄星が立っていた。
「最低だったよ…」それを聞いて、笑っていたのは雄星じゃない。ハアナだ。
ずっと入り口の近くで待っていたらしい。
「とりあえず進もう」僕たちが歩き出すと、壁にあった松明が列に並んでともった。
最新のようなロボットとは少し相性が悪いものだ。とても古い感じにしか見えない。
そのたいまつはここから一キロ以上先までともっていて、ボケてみれば無限に続く通路にも見えそうだ。
「これはいつまで続くんだ…」雄星は少しだけめんどくさがり屋のようだ。
彼は壁を蹴り飛ばしてしまった。だが、その先には壁しかなかった。どうやらこの通路を通り終わらないといけないらしい。
七海が出してきたのは銃のようなものだった。「これはポータルガン、ある人から託されたもの。どこからでも打てる範囲にあれば瞬間移動が可能」
彼女が通路の反対がをねらって打つと、次には地面を打った。
すると、に穴ができて、その中にも部屋が見えてきた。
「これは向こうから見えるもの、入るよ」彼女が指を鳴らすと、飛び込んでいった。
僕も一緒に飛び込むと、急に重力が変わって地面に倒れこんだ。
「いててて…」僕がお子いあがると、遠くには地面を眺めているハアナと雄星が見えた。
本当に瞬間移動したようだ。「まあ、これはただ単にこの二つの間にあった道を消しただけ、だから瞬間移動というかただ単に空間ができたからそこをスキップしたって感じ」
彼女の説明が全く読み取れなかった。
「ようこそ、歓迎する。」
低い声が響いてきた。
とても長いこと生きている何かの声だ。
だが、その迫力はすごい。体がしびれるほどだ。
「お前は誰だ」壁がきしむ音を立てながら開くと、その中からは年老いたロボットが現れた。
長いこと放置されていたのか、苔が生えていて、動けないのか、空中に浮かんでいる。
「もう一度聞く、お前は誰だ」雄星がロボットをにらんだ。「我が名はナンバーぜろ、この世を制覇する者」
それを聞いて彼は驚いた。「なぜ六体目が存在する、五体しか存在しない外れはないのか」
零番は頷いた。「我は作られたのだ、奴らにな。この夜を征服するために」
「だが…」零番は後ろを振り返った。そこにはさっき見た〇二番と同じ姿をしたロボットが五体いた。
その中にはあの〇二番がいるのだろう。
「お前二人が邪魔だった」零番はそこにあったボタンを押した。
すると、七海の服が動かなくなり、零番の前へと飛んでいった。「それをつけるなど、愚か者が。普通なら常ないだろ…」彼は何かに気づいたのか、歯を食いしばった。
「なぜおまえのは動く、誰かが入れ替えたのか…」彼が違うボタンを押すと、壁から腕が現れ、雄星とハアナを捕まえた。
その腕は壁の中に消えていき、二人も一緒に連れていかれた。
「これでいらない者は捕まえた。さてと、お前たちを始末する」
彼がまた違うボタンを押すと、腕が二本壁から現れた。
一本は僕を一瞬でつかみ、もう一本は手に拳銃を盛っていた。
「蓮田!」七海は僕のほうに駆け出して来ようとしたが、それを零番は見逃さなかった。
「おっと、近づけば彼の頭には穴ができる。それでいいのか?」僕は口だけを動かした。
来るな。、と。
七海は歯を食いしばったが、止まった。
「よし、それでいい。お前らガキ共は弱弱しく黙っているのがお似合いだ」
零番は全くロボットとは思えなかった。普通の人間だ。普通の悪人だ。
「僕を使ってどうするつもりだ」僕は怖かった。
横からは拳銃を突き付けられている。どうにもできない。
だが、今できることといえば冷静にいることだ。
彼は僕たちが苦しむのを楽しんでいる。
僕が冷静でいれば、暇になって捨てられるという可能性もある。
それを狙う以外に方法は何もない。
「お前、ナナミのことは充分調べた。指を鳴らせばバン、だ」
彼女は歯を食いしばるだけで何もできなかった。
「それと、だな」彼は何かを操作すると、てんじょうからテレビが出てきた。
その画面にはハアナと雄星がいた。
だが、あれらは完全にこの腕でつかまれて、その下には溶岩がブクブクと波を立てていた。
「このまま手を放せばあいつらはあの世行きだ」僕たちは完全にはめられた。
このままだとやばい。「「私たちのことはかまうな!」」二人は同時に言っていた。
だが、見捨てるわけにはいかなかった。見捨てるわけには…
その時、頭の中に声が聞こえた。

見捨てろ。

僕は首を振った。
そんなことできるわけがない。

彼らを信じろ。見捨てろ。私が付いている。

僕はハッとした。
彼らを信じる…見捨てる…私が付いている…
その言葉を聞くと、僕は笑みを浮かべた。悪の笑みだ。
「落とせば?」零番は少し反応した。
「落とせと言っているんだよ!」
僕は彼ら二人を信用する。
だから、落とさせる。彼らの自由のために。
「やってやろうではないか」彼がボタンを押すと、ハアナと雄星を支えていた手が開き、二人は落ちた。
「はまったな」その言葉だけが最後に残り、テレビが壊れた。「はまった、ね」僕は恐怖を忘れた。
拳銃を頭に突き付けられた、恐怖を。「クッ!捕まえてもってこい!お前たち!」彼を作った一番、二番、三番、四番と五番に向かって叫んだ。
五体はすぐに分かれ、壁をドリルのように突き抜けて探索し始めた。
そこは結構深い地面の中だ。さすがにあの二人でも地面から掘りあがるのは少し大変だろう。まだ地中のどこかに隠れているはずだ。
「まあ、それはあいつらに任せるとしようか」零番は不気味な笑い声を出すと、動き始めた。
僕は抜け出そうとしたが、やはり力が弱すぎる。
零番は七海の前に立ちはだかった。
彼女は慌てて指を鳴らそうとした。
その時、僕はなぜかわかった。
未来が。
「やめろー!」

もう遅い

「この世界はそんなに甘くはないのだよ」
シュッ
今…なんにが起こった? 「ㇰッ…!」ナナミは腕をつかんでうなり声を上げた。
今…何が…
何か鈍い物が地面に落ちる音。
怒り、悲しみ、苦しみ、呪いたい気持ち、殺したい気持ち。

それは、力へと変わった。

「ウウウウ…」
そこで、意識が途切れた。

つかむ力に負けるのであれば、かみ砕け。
限界を超えろ。
自分の限界以上の力を出してみろ!

バキ 蓮田の方向から奇妙な音が聞こえてきた。
「何だ…あいつは」零番は茫然と蓮田の方向を眺めてしまった。
七海もそうだ。一瞬、彼女から痛みが過ぎ去り、驚きの感情が湧き出てきた。
「ウ~-…」蓮田がかみ砕いていた。金属の腕を。

大丈夫だ。
私が付いている。
敵を倒せ。
彼女を助けるのだ。
悪を倒し、正義を助けろ。
私はいつでもお前の味方だ。

すると、蓮田の後ろに何かが浮き出てきた。
男性のようだ。蓮田に覆いかぶさるように、彼は体制をとっていた。

お前は強い。
彼には負けない。

ついに指を全てかみちぎり、残ったのはボロボロになった手だけだった。
「な…何が起きているのだ…なぜ彼が…彼があいつの見方を…」零番は後ろに下がった。
「ウー…」もう一本の腕が持っていた拳銃を彼の顔面に突き付けたが、ひるみもしない。
彼は拳銃をかむと、軽々と真っ二つに割った。
「な、なぜだ…なぜおまえがその紋章を持っている…」蓮田の肩を見てみると、そこには目があった。
その目は金色に光っていて、それが彼の口をあそこまで強くしたのだろう。
「なぜおまえが…浩紀の紋章を持っているのだ…」その言葉を聞いて、七海は何かを思い出した。
腕が痛むので少し考えずらかったが、その名前は誰かから聞いたことがある。
この道具を作った、初代作成者だと。そして、この世界を作り上げた人間だと。
だが、浩紀は何年も前に死んだはずだ。「まさか…」七海が声として出す前に腕が痛み、止められた。
蓮田は零番にとびかかり、頭をつかんだ。
このままでは死ぬ。頑張ってもがいたが、もう遅かった。
零番は完全につかまれてしまい、身動きが取れなくなっていた。
彼が腕を回そうとしたとき、声が聞こえてきた。「やめて!」その声を聴き、蓮田は動きを止めた。
「へへへ、人生楽に生きてきたガキ共が」零番は隙を見つけて蓮田の手から逃げ出した。
「確かに平和だったかもしれないわね。でもわかる気がするのよ、あなたの悔やみが」七海は腕を紐で力強く結び、出血は止めていた。
それは零番の怒りを買ってしまったようだ。「何がわかるってんだ!のこのこと暮らしてきたクソ人間に俺たちの人生が、苦しみが!」彼はどこかに隠し持っていた小型ナイフをを取り出し、椅子から立ち上がると七海に飛びつこうとした。
「そうはさせん!」壁が急に壊れ、その中から一番から五番まですべてが飛び出してきた。
全ては動くのを停止していて、ちょうど零番に突っ込んだ。
「お、お、俺の、なに…何が分か…かるってい、い、いうんだ、だだ…」突撃のダメージで零番も停止知って、再起動し始めた。
「わかるよ、私も毎日のように親に殴られ、けられ、怒鳴られる生活をしていたんだから…」零番から目を放して蓮田を見ると、地面に倒れていた。
「蓮田!」彼女は慌てて駆け寄ると、蓮田の反対側には浩紀が座っていた。彼は優しい目で地面で寝込んでいる蓮田を眺めていた。

…我が息子よ

一番最後のところしか七海には聞こえなかったが、確かに息子といったのだけは聞こえる。
「ありがとうございます」七海も蓮田の横に座ってお礼を言った。

私は何も知れいないのだが、これはすべて、彼の力だ。
私は少し彼の手助けをしたのみ。お礼は彼に行ってくれ。

彼は七海を見た。
彼の虹色に光る眼はいろいろと複雑な感情を描いていた。

これを受け取ってほしい。

彼は一つのフルーツを渡してきた。
今までで見たことのないフルーツだ。
七海はそれを見ると、浩紀を見た。
だが、そこにはもう誰もいなかった。
残っていたとすれば一枚のカードだけだった。
そのカードには、目が書かれていた。
「やはりな」後ろから雄星の声がしてきた。
後ろを見てみると、そこには山になっている五体実験体が倒れていた。
そして、その一番下には零番がいた。
「前にあの紋章を見た時、気になっていただ。これは浩紀の紋章だ。私たちのところとは少し異なる紋章だった」
そのカードをひっくり返してみると、短い文章が書いてあった。
『七海さんへ
蓮田を大切にしてくれて、ありがとう。
これは本のお礼だが、受け取ってほしい。
これを食べるとどんなひどい傷でも治る。
これは僕がともに最期を迎えた最高傑作だ。
これを受け取ってほしい。
君たちをずっと見守っている、浩紀より』
それを読むと、彼は何かを考え始めたが教えてはくれなかった。

蓮田が気づいたのは数十分後だった。
僕が起き上がると、周りには七海、ハアナと雄星がいた。
「何が起こったんだ…?」僕は何も覚えていない。
覚えているとすれば…
僕は慌てて七海の腕をつかみ上げてみた。
「あれ?」その反応を聞いて、七海は吹き出した。
「ある人に回復してもらったんだ」彼女はいくら蓮田がねだってもそれが誰なのか教えてくれなかった。
「でもありがとう」彼女がにっこりとして言った。「何の話?」僕はきょとんとした。
「なんでもない」彼女は上機嫌で外に出ていった。僕はいったい何が何なのかわからなかったが、いろいろと解決したみたいなのでよかったと思った。
僕はとりあえずベッドに寝込んだまま空を眺めていた。覚えていることとすればあの頭の中に直接響いてくる声だった。
何と言っていたかもどんな声だったのかもわからない。だが、響いていたということだけは知っていた。

「ねえ」七海は五人の警備と一緒にある部屋へと入った。
そこには電気でつながれているロボットが六体いた。
五体は結構攻撃を食らったのか、まだ再起動中だったが、その中で一体だけはもう起きていた。
彼の名は零番、体はもう完全に壊れていたので、代わりのもっときれいな体へと移し替えられていた。
その体は光のように白く、怠け者のように暴れていなかった。
彼は逃げる気もないのだろうか。
「来たか…」彼はゆったりとした声で言った。
七海は頷き、彼の前に行った。
「前に言ってきたね。そんな気持ち、わかるわけないって」
彼は何も言わなかった。
「私にはわかるよ、その苦しい気持ち」
彼はハッと反応して、七海を見上げた。
「私も昔は毎日のように殴られ、怒鳴られ、けられ、ひどい生活だったよ」
彼女は耳の前に垂れ下がっている髪の毛をめくりあげた。
そこにはあざが残っていた。「これは二千百十三年、二月の四日にたたかれた後」
彼は少しうつむいた。「そうだったのか…」
すると、空中から声がしてきた。

お前には失望したよ

七海は周りを見たが、誰もいなかった。
そして前を見てみると、零番、一番、二番、三番、四番、五番が消えていた。
「いったいどこに行ったんだ!探し出せ!」警備員はすぐに探索をしたが、誰一人見つからなかった。
「それはあのマッドサイエンティストだろうな…今は行方不明だが、生きてる可能性はある。とりあえず君たちは帰ってくれ。これからは私たちが処理する」
七海は頭を下げると、ハアナたちのところへ戻っていった。

「帰るよ」七海は僕たちの手を引いて、すたすたと歩き始めた。
僕は彼女に質問しようとしたが、やめた。今はどう考えても質問しないほうがいいようだ。
彼女の額には涙が見えたのだから。

「ありがとうございました」七海は顔を見せずに頭を下げると、僕たちの手を取って穴の中へと飛び込んだ。
「どうしたんだよ」僕が元の場所に戻ると、訊いてみた。
「消えたんだ…あの六体が…」彼女は歯を食いしばった。「私の目の前で」
「そうだったんだ…」僕は少し悲しい気がした。
零番に人生はあっただろうに。
「それじゃあまたね」僕たちは自分の家に戻ると、お母さんに謝り、時間を戻し、学校へと向かった。
忘れるつもりで。
だが、そう簡単には忘れ去ることなどできなかった。
七海は時々話していると、空を見上げていた。
核心はできないが、多分あの六体のことを思い出しているのだろう。

だがある日、その心はやむのだった。
僕たちが下校していると、目の前にポータルらしきものが現れた。
青紫色で、渦を巻いている。
「本当にここで会っているのか?」その中から出てきたのは零番だった。
少しぼろくなっていたが、普通に元気だった。「お、本気でここだった。ちょっとあいつに追い出されてな…」
零番の画面に苦笑いが現れた。
「生きてたんだ」七海は外装につぶやいた。「いや、勝手に人を殺さないで!人じゃないけど…」零番も結構いい奴だった。
これからは彼らの面倒まで見ないといけなくなったのは少しめんどくさかったが、まあ、これでも平和といえるだろう。


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