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【当日編】外部生が東工大の院試をA日程で受けた話【情報理工学院】

2021年夏に「東京工業大学大学院 情報理工学院 情報工学系」を受験した際のメモ。院試は情報が極端に少ないため、この記事が将来受験を考えている方々の役に立てば幸いだ。

当日編では実際の試験の様子や面接で問われたことについて述べる。院試の概要や提出書類などについて知りたい方は準備編へどうぞ。

準備編にも書いたが、6月中旬の出願後、7月上旬に日程が開示される。A日程の場合開示から1週間ほどしか時間の猶予がない上、内部生向けだからか試験会場の案内も雑。「〇〇館の△△室集合」とか言われても全然わからん。まあ調べれば地図は出てくるが。

いざ出陣

2020年は某ウイルスの影響により試験はオンライン開催となったそうだが、2021年は普通にオフライン開催。平日朝9:30に大学キャンパスに集合するのはなかなか面倒。

とはいえ大岡山駅からは徒歩1分という神立地なので、炎天下の中長時間歩く心配はない。改札を出てすぐに見える悪の組織みたいな建物が東工大だ。

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大岡山に到着したのが8:50頃で、9時前には指定された建物に入れた……が、まだ受付開始前だったため控室へ。やはり内部生が多いのかお喋りしている人たちが何組かいた。

その後すぐ受付開始。240席くらいある講堂へ。席は自由だ。

9:30になって試験開始。……といっても面接の順番が回ってくるまでひたすら待機するのみ。通信機器は使えなくなるため、勉強に使える紙の資料とか持ってくるべきだった。もちろん私語も厳禁なので、仲の良い内部生同士を見て疎外感を感じる心配もなし。

試験会場の様子

着席率は4割程度だったため、だいたい80~100人くらいがA日程で受験しているのだろう。情報工学系の募集人数がAB共通で97名とのことなので、ここで全員合格していたらB日程の枠が消滅してしまう。つまり、そこそこの人数はA日程で落とされるということ。「A日程ならほぼ合格確定」という情報も転がっているが、系などによって違うだろうからあまり当てにならない。

服装はスーツ着用が4割~半分程度で、4~5人ほど私服の人もいた。残りはYシャツ+スラックスといった感じ。一応服装の指定はないものの、私服で行くのはなかなかの勇気。素直にフォーマルな格好が無難だろう
スーツの上着は鞄に忍ばせて涼しい部屋に入ってから着れば良い。私はそうしたし、同じ様にしている人が多かった。

面接開始!

面接は最初に10人ほど呼ばれて、その後1人ずつ呼ばれていく形だった。受験番号と面接の順番は関係ありそうだが、イマイチわからなかった。
1時間ほど経過した段階で私の番となる。だいたい半分くらいの順番だったため、最長だと2時間コースになるのだろう。ちなみに私の場合は別の建物で面接を行う関係で4人同時に呼ばれたのだが、なぜか1人失踪していた。遅刻者としても記録されておらず、謎現象である。面接会場まで外を経由していくが、なかなかの灼熱地獄で辛かった。

部屋に入ると、志望している研究室の指導教員と研究分野の近い教員合わせて5人が待機していた。部屋まで案内してくださった教員も同席したが、質問はされなかった。

最初の質問は卒論で行っている研究について5分で説明せよというもの。ホワイトボードを使って社会的意義や学術的背景、先行事例とそれらに対する新規性について説明した。ちなみにホワイトボードは下の画像のようなガラガラ転がせるタイプではなく、壁一面に張り付いている黒板タイプだった。

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卒論については絶対聞かれると思っていたため練習しておいたし、実際よく説明できたと思う(自画自賛)。説明後、追加の質問で具体的な手法について2つツッコミが入った。どちらも先行研究に触れながら複数の手法を比較検証するといった内容で、研究に関する説明を深堀りすることができた。ここもよくできたと思う(自画自賛)。
さらに研究の進め方について追加の質問。「その研究は自分で思いついてやった?それとも研究室の過去の研究を受け継いでる?」といった質問に対し「1人で考えました」と答えると、どのように先行研究をリサーチしたか聞かれた。Google Scholarや大学の図書館で検索し、ヒットしたものの中から引用・被引用関係を追っていったと素直に回答。

次は研究に関わる専門領域の知識について、第一志望の先生から質問が飛んできた。まず聞かれたのがKLダイバージェンスについて。「ある2つの分布がどれくらい似ているかを表す指標。小さいほど似ている距離のようなものだが、対象性がないため数学的に厳密な距離ではない。」ここまでは言えたのだが、肝心の式をど忘れしてしまった。アカン。「対数尤度比の期待値」を数式でちゃんと理解できていなかった。

次に最適化の手法について聞かれたため、基本的な勾配降下法について答えた。確率的勾配降下法の手法についても少し触れたほか、ニュートン法についても説明した(2階微分まで考えるから収束が速いけれど、ヘッセ行列の計算が大変だというお話)。反復回数に関する追加の質問が来たが、ニュートン法の方が2次収束するから反復回数が少ないと答えた。

次に第一志望以外の教員から、研究分野とはあまり関係ない情報科学の基礎知識に関する質問が来た。まずはOSの分野から、カーネルモードとユーザーモードについて聞かれたが、うまく答えられなかった。大失態その1。

さらにチューリングマシンの質問。これも答えられなかった。大失態その2。

最後に線形代数から、正定値行列と固有値の関係について問われた。すでにかなりテンパっており、正則行列と固有値、固有方程式及び対角化のお話をしていた。やばい。(・ω・;#)

知識に関する質問は終わり、次に研究に対する姿勢について質問された。基礎知識の質問で頭が真っ白になっており具体的な質問の内容は忘れてしまったが、「研究するにあたって重要なことは?」とかだったはず。「社会的意義と学術的背景の2つをよく考慮すること」と答え、それぞれ根拠と具体例を示すことができた……が、なんか質問と噛み合ってないような気もする。

次に、研究以外の実績について何かあるか聞かれた。就活とかでよく聞かれるガクチカみたいな感じ。ここでは自主学習支援人材として勤務している学校で開発した「LINEを利用したオンラインでの匿名質問受付システム」について紹介した。当時直面していた課題点と、解決手法について軽く述べた程度だったが、もっと踏み込んで詳しく説明するべきだったかもしれない。

次に大学の授業で一番印象に残っているものについて聞かれ、卒論を指導してくださっている先生が担当していた「ロボット工学」を紹介し、簡単に理由を説明した。

そして「最後になにか質問ありますか?」と逆質問が来た。院試の逆質問って何を質問すれば良いのだろう……何も思いつかなかったため「特にありません」でおしまい。

家に帰るまでが院試です

そんなこんなで面接終了。そのまま帰宅になるため、先に呼ばれた人の方が試験は短い時間で済むということだ。

ちなみに建物の正面出口ではなく裏のあたりに誘導されて解散という形だったが、案内の人に「そちらの階段を登っていただければ見慣れた景色が広がっていますので。お疲れ様でした。」と言われて解散した。いやいや……見慣れているどころか今日初めて見た景色だぞ。完全に内部生だと勘違いされてるわこれ。

考察

正直なところ、院試が終わった段階では「これは絶対落ちたわ」としわしわになってた。合格内定をいただいてからも、「筆記試験の対策していれば普通に答えられるはずの基礎知識の質問で詰まったのに、なんで受かったんだろう?」という疑問が湧き、いろいろと考えた結果理由として以下の2つが導き出された。

1.研究に関する部分の質問には答えられていた
2.A日程で研究室の枠を争う相手がいなかった

1については、学力よりも研究力を重視する場合「研究分野周辺の深い知識があればオーケー!」というのも成り立つことが考えられる。私がちゃんと答えられる質問を投げかけてくださった第一志望の先生には感謝してもしきれない。
ちなみに、私と同じ大学で東工大の院試をB日程で受けた友人も「筆記死んだ」とか言いつつちゃっかり受かってた。やはり面接で計られる研究に関する能力が重要なのではないか。

2については、これは単純に運が良かっただけの話。対戦相手のいない椅子取りゲームをしていたようなものだ。A日程の性質上ほとんどの内部生はB4で所属している研究室を受けるため、たまたま研究室のB4全員がB日程になると空席ができる。私が第一志望にしたところは比較的新しい研究室ということもあり、A日程の枠を争う内部生がいなかったのだと思われる。
この考えでいくと、内部生の比率が下がるすずかけ台キャンパスの研究室を受ける場合はA日程に振り分けられるとかなり有利かもしれない。

面接の質問まとめ

私のどうでもいい日記が長くなってしまったため、面接で問われた質問についてここでまとめておく。

1.卒論に関して
a ) 研究について5分で説明せよ
b ) 具体的な手法についてツッコミ
c ) 研究の進め方について
 c-1 ) 自分で思いついてやったか、研究室の過去の研究を受け継いだか?
 c-2 ) どのように先行研究をリサーチしたか

2.研究に関わる専門領域の知識について
a ) KLダイバージェンスの意味と式
b ) 最適化の手法について
 b-1 ) どのような手法があるか
 b-2 ) 勾配降下法とニュートン法のどちらが反復回数が少ないか

3.情報科学の基礎知識について
a ) OS(カーネルモードとユーザーモードについて)
b ) チューリングマシンについて
c ) 線形代数(正定値行列と固有値の関係)

4.研究に対する姿勢について

5.研究以外の実績について

6.大学の授業で一番印象に残っているものについて

7.逆質問

おわりに

そんなこんなで東工大院試A日程を受験した話だった。大学の授業や筆記試験対策で学んだ知識を説明できるようにしておき(私はできなかったが)、研究についてもしっかりリサーチを行っていればA日程の面接で困ることはないと思われる。

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……といったところで今回はここまで。

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