レター教室を読んで

三島由紀夫のレター教室という小説を読んだので、その感想を残しておく。思えば読書感想文なんて高校以来かもしれない。

元々、この作品は声優の坂本真綾さんがどこかで読んで面白かったと言ってた作品でずっと気になっていたのだが、中々書店で出会う事ができずにいた。ネットで頼めばいいのだけど、本に関しては、本屋で買いたくなるのは何故なんだろう。
しかし、先日ついに購入する事ができた。

これが非常に面白い本だった。
文章を書くことが好きな人にはぜひ一読して頂きたい作品である。
本作品は三島由紀夫作品の中でも異色とされている作品らしく、年代性別バラバラの5人の登場人物が互いに手紙を出し合い、その手紙を読者が読むという形を取る。
同じような作品で森見登美彦の恋文の技術という作品があるが、これも非常に面白かったのでおすすめ。もしかしたら、森見先生もレター教室を読んでお書きになったのかもしれない。

5人の人間像が手紙を通して、段々と明らかになっていくのが面白い。

僕がとりわけ好きだったのが、山トビ夫(45歳)が空ミツ子(20歳)に宛てて書いた恋文である。これが恐ろしく気持ち悪いのである。昔、阪神の和田豊監督が浮気相手に送ったメールが週刊誌にリークされた事があったけど、あのメールの表現を何倍も上品に仕上げたような手紙だった。
オジサンが若い子に入れ上げるのはやはり普遍的な文化なのかもしれない。そこまではふーんと読み進めていたのだが、衝撃であったのは受け取った空ミツ子の心情である。空ミツ子は表面上は気持ち悪がってるけど、満更ではないのである。なぜ満更ではないのか、その理由も空ミツ子から空ミツ子宛への手紙としてありありと書いてある。

このような感じで5人の人間関係が手紙を読み進めると変わっていくので、続きが気になって一気に読んでしまった。終わり方も爽やかであった。

最後の三島由紀夫の後書きも感心した。
三島由紀夫が考える手紙の極意が簡潔に述べられているので、あとがきだけ読んでも勉強になるかもしれない。

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