Fly me to the moon

2024.07.20
評価:4.0

本作はアポロ11号の月面着陸を題材に描いた作品である。
アポロ11号の話になると、デイミアンチャゼル監督のファーストマンのようにアームストロング船長が主役になりがちだけれど、本作はそうではなくNASAの広報を主役にした映画だ。アームストロング船長が月面を歩き、アメリカ国旗を立てる映像は有名だ。しかしあれは実は、アメリカの力を喧伝する為に政府が作ったフェイク映像だという話もあり、これをコメディチックに描いた映画である。結局嘘だったのか、本当だったのかは分からない。劇中のセリフでもあったように、嘘だといくら信じていても真実であるものは真実だし、いくら本当だと信じても嘘なものは嘘だ。やっていない事を証明するのは、やった事を証明するよりはるかに大変なのである。
しかし、ベトナム戦争や冷戦が続いたあの暗い時代に人類が月面にたどり着いたのは、非常に明るいニュースであり、映像が嘘だったとしても、宇宙開発の目覚しい発展を遂げたのは事実なのだ。実際、科学の現場って凄い地味だし、世間から関心を得る為には幾らかの嘘があってもしかたなかったのかもしれない。

しかし、この映画はコメディが軸ではありつつ、ヒューマン映画としても良かったな。
器用だけど嘘だらけの人生を送ってきたケリーと不器用だけど誠実を貫いてきたコールの対比がありつつ、そんな2人が紆余曲折ありながら協力してアポロ計画を成功に導くのは面白かった。やっぱりロケットが飛び立つ姿は美しい。。いつか実際に生でみたいものだ。

あと、役者さんたちも良かった。
ケリー役のスカーレットヨハンソンは言わずもがなだが、政府側の謎の人物モーを演じたウッディハレルソンが非常に良かった。なんだろう、あのどこか怪しいけど、バリバリ重要人物であるような絶妙な雰囲気は。彼が出てくると話の展開がガラッと変わるのでまさにキーパーソンなのだが、結局お前は何者なんだっていう不思議さ。最後の困ったら、大声で呼んでくれ。多分聞いているからっていうセリフが痺れたねぇ。嘘だろと思いつつ、マジで聞いてそうっていう。いいキャラしてた。

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